マイクロソフトが「セガなどのゲーム会社買収を本格的に検討していた」との報道。米FTCとの審理で明らかに

 

マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収計画に関して、米国FTC(Federal Trade Commission・連邦取引委員会)が仮差し止め命令を求めて訴訟を起こしており、米国時間6月22日よりカリフォルニア州北部地区連邦裁判所にて審理がおこなわれている。

今回、審理にてマイクロソフトの社内文書が新たに公開。そのなかでは同社が、セガやBungieなどの買収を本格的に検討していたことが示されている。海外メディアThe Vergeが伝えている。

『ソニックフロンティア』


マイクロソフトは2022年1月、Activision Blizzardを総額687億ドル(約9兆8700億円・現在のレート)で買収する方針を発表。その後、反トラスト法(独占禁止法)違反の恐れがないかなどについて各国・地域の規制当局による審査がおこなわれており、日本を含むいくつかの当局ではすでに承認済みだ。一方でイギリスでは審査結果が報告され、同国競争・市場庁(CMA)は同買収を承認しないと結論付けた(関連記事)。これに対しマイクロソフトは控訴の構えを見せ、控訴審は現地時間7月24日からおこなわれる予定。

また米国でもまだ審査が続いており、マイクロソフトがその結果を待たずに買収を完了させることを防ぐべく、FTCが仮差し止め命令を求めて訴えている状況にある。仮差し止め命令の是非を巡る審理のなかでは、かつての各社間における駆け引きなどが明かされてきた(関連記事1関連記事2)。そしてThe Vergeによると、審理において新たに公開されたマイクロソフトの社内文書は、過去に同社内でセガやBungieといった企業の買収が検討されていたことを示しているという。

公開された社内文書のなかには、マイクロソフトのゲーム部門CEOでXbox事業を率いるPhil Spencer氏が送信したとされる社内メールも含まれている。メールはマイクロソフトのCEO・Satya Nadella氏、およびCFO・Amy Hood氏に宛てられたもの。Spencer氏は両氏に対し、セガは各ジャンルにバランスよく世界的にアピール力をもつIPを構築しているとして、PC/コンソールの両方のXbox Game Passの加入者を双方で加速させてくれるだろうと述べている。また同氏は、セガはアジアではモバイルでも存在感を放っているといい、次の買収ターゲットとしてもっとも魅力的であると説明。Nadella氏およびHood氏に対して、セガサミーホールディングスと、セガの買収交渉を開始するための承認を求めている。

Image Credit: The Verge


Spencer氏の提案によりマイクロソフトによるセガの買収交渉がおこなわれたかどうか、またそもそもNadella氏らがこの提案を承認したかどうかは定かではない。一方でThe Vergeによれば、2021年4月の社内文書でも、セガは依然として主要な買収検討先にリストアップされていたとのこと。

また2021年4月のものとされるマイクロソフト社内文書ではセガのほか、BungieやIO Interactive、Zyngaなどの買収も本格的に検討されていたという。文書内ではBungieについて、人気IP『Destiny』およびそのコミュニティのほか、ライブサービス型ゲームの運営・開発ノウハウをもっている点が評価されていたそうだ。またThe Vergeは、「Xbox Game Studios向け買収候補先の最終ウォッチリスト」とされる別のマイクロソフトの社内文書を公開している。同誌によればこのリストも2021年の文書だという。同リストではBungie、IO Interactive、Zyngaに加えて、Thunderful Games、Supergiant Games、Nianticといった企業が並んでいる。特にモバイル向けゲームの開発元として知られるNianticやZyngaが名を連ねている点からは、マイクロソフトがモバイル向け展開も積極的であったことがうかがえる。

Image Credit: The Verge


なおBungieはソニー・インタラクティブエンタテインメントにより買収されることが2022年2月に発表され、同年7月に買収が完了(関連記事1関連記事2)。またZyngaは、Take Two-Interactiveにより買収されることが2022年1月に発表され、5月に買収が完了している。両スタジオがマイクロソフトとも買収交渉をおこなっていたのかは不明。またマイクロソフトの文書内で買収が検討されていたそのほかの企業も本稿執筆時点では買収に至っておらず、交渉がおこなわれているのかどうかも不明である。

今回、マイクロソフトの社内メールや文書によりセガなど複数の企業の買収が検討されていたことが示されたかたち。セガのほか、マイクロソフトのライバルであるSIEに買収されたBungieも買収候補先となっていた点は興味深い。各企業は、現時点ではマイクロソフトによる買収がおこなわれておらず、今後マイクロソフトがどのように買収戦略を進めていくのかは気になるところ。英国では“足止め”を食らい、米国でもFTCによる仮差し止め命令を巡って争われているActivision Blizzardの買収の行方も注目されるところだろう。また、仮差し止め命令を巡る争いのなかでは、今後もこうした情報が飛び出す可能性もありそうだ。