『The Last of Us Part I』PC版発売も、最適化不足で不評うずまく。延期しながらも課題を残すスタートに

 

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは3月29日、『The Last of Us Part I』PC版を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)。PC版ではシェーダー構築に長時間を要する点や最適化不足について指摘されており、Steamユーザーレビューは「やや不評」ステータスでのスタートとなっている。


『The Last of Us』は三人称視点のサバイバルアクションゲームだ。舞台となるのは、寄生菌により人々が凶暴化し社会が崩壊したアメリカ。主人公のジョエルは、ふとしたことで出会った少女エリーと共に、過酷な旅へおもむくことになる。本作はもともと2013年にPS3向けに発売。翌年の2014年にはPS4向けのリマスター版が発売された。終末世界を舞台に、ジョエルとエリーの信頼や人間のエゴなどを描く重厚な物語が高く評価されている。

昨年2022年9月には、PS5向けにリメイク版となる『The Last of Us Part I』が発売された。オリジナルの体験を残しつつ、ゼロから再構築。最新のグラフィックに刷新されたほか、ゲームプレイ面では敵AIなどが進化。さらに操作性も向上し、アクセシビリティオプションも拡充された。


今回3月28日に発売されたのは、リメイク版のPC移植となる。Steamでは発売後すぐさま同時接続プレイヤー数が3万6496人に達し、大きな盛り上がりを見せた(SteamDB)。しかしSteamユーザーレビューでは、多数の不評が投じられる状況に。本稿執筆時点で約5300件中、好評率が32%の「やや不評」ステータスとなっている。

不評の原因となっている理由のひとつがシェーダー構築だ。本作PC版は起動時にシェーダーのコンパイルがおこなわれる。この処理にかなりの時間を要するうえ、PCへの負荷も大きくこの間にクラッシュしてしまうケースも報告されている。またシェーダー構築終了後にも、環境によって動作が不安定であるとの指摘もある。

さらに本作PC版に向けては、グラフィックボードのVRAM使用量が大きい点も課題点として挙げられている。グラフィック設定を下げても、現状ではかなりのVRAM容量を要する。PC版に移植されたPS4/PS5タイトルはほかにもあるものの、それらと比べて最適化不足の目立つ状態といえる。

こうした状況を受けて、Naughty DogはPC版プレイヤーたちが報告している複数の問題の調査を進めているとのこと。今後のパッチで問題に対処されると伝えられている。またNaughty Dog公式サポートページでは、プレイヤーたちからの報告が募られている現時点では、シェーダーの読み込みに想定以上に時間がかかる問題や、メモリリークの可能性など、複数の問題への調査が進められているとのことだ。

PS5は統合されたカスタムI/O(Input/Output・入出力)により、SSDからのデータの読み出しが非常に高速になっている(公式サイト)。つまりPS5はストレージ込みで最適化されており、専用タイトルではそうした機能も活用されているだろう。一方PCでは、環境によってストレージ読み込み速度もまちまち。PS5タイトルはPC版移植にあたって、最適化に苦心している側面はありそうだ。

なお『The Last of Us Part I』PC版は当初日本時間3月4日発売とされていたものの、3月29日に延期していた(関連記事)。Naughty Dog はPC版発売を最高の形で実現したいとしていたものの、最適化不足という課題を残しての発売となった。今後のアップデートでの対応が待たれるところだろう。