『アーマード・コア6』がSteamでほんのり「恋愛ゲーム」扱いされる。ユーザータグの様子が“また”おかしい

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フロム・ソフトウェアは12月9日、『アーマード・コア』シリーズ最新作『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(以下、アーマード・コア6)』を発表。あわせて同作PC版のSteamストアページも公開された。しかし、本作は現在Steamユーザータグ機能により「かわいい恋愛シミュレーション」といったタグ付けを受けており、販売側による対策も実施されているようだ。実をいえば、過去には同スタジオ作品『エルデンリング』でも同様の事態が起きていた。

『アーマード・コア6』は、メカカスタマイズアクションゲーム『アーマード・コア』シリーズの最新作だ。第1作目は1997年に初代PlayStation向けに発売。シリーズを通じて、パーツを自由に組み替え(アセンブル)しての搭乗メカ構築と、そのメカを操りミッションを遂行するアクションが基本ゲームプレイとなる。直近の最新作としては『アーマード・コア ヴァーディクトデイ』が2013年にリリース。それから約9年を経た先日、新作として満を持して『アーマード・コア6』が発表された。シリーズファンは熱狂し、同シリーズに触れたことがないユーザーからも大いに注目されることとなった。

そんな本作に現在、Steamストアページで謎の要素タグが付与されている。本稿執筆時点では「リラックス」「かわいい」「恋愛シミュレーション」といったタグが本作に定義されているのだ。殺伐とした世界観で争いが繰り広げられる『アーマード・コア』シリーズには、不釣り合いなタグに思える。またこのタグのため、現在Steamの「恋愛シミュレーション」ジャンルページに『アーマード・コア6』が登場してしまう有様だ。

こうしたタグは、開発・販売側であるフロム・ソフトウェアやバンダイナムコエンターテインメントが設定したわけではないと思われる。というのも、これはSteamのタグ機能の仕組みに由来する、ユーザーのイタズラめいたタグと考えられるのだ。


Steamには、ストアページを管理する開発・販売側とユーザーコミュニティによって定義される「Steamタグ」機能がある。この機能では、開発・販売側やユーザーが作品にふさわしい要素タグを定義・重み付けしていく。まずタイトルリリースにあたって開発・販売側は、5つのユーザータグの定義が求められる(Steamworks)。『アーマード・コア6』の場合は「アクション」「未来的」「マルチプレイヤー」「シングルプレイヤー」「サードパーソン」の5つのタグがストアページ公開時点で定義されており、これが開発・販売側が設定した本作の要素ということになるだろう。

そしてこのタグは、ユーザーらが各タイトルに対して自由に設定・追加することも可能だ。とはいえ、ユーザー設定タグはいきなりストアページに反映されるわけではない。ユーザーらのタグ付け数などに応じて、“重み”のあるタグの上位20個がストアページに反映。Steamのタグ別ページでの表示などにも影響することになる。つまり、『アーマード・コア6』につけられた「リラックス」「かわいい」「恋愛シミュレーション」といったSteamタグは、それなりの数のユーザーによって設定されたイタズラタグと考えられる。


そして同作Steamストアページは、公開からしばらくこうしたイタズラタグへの対応にも追われているようだ。同ページの変更履歴を閲覧してみると、「性的表現(Sexual Content)」や「精神的恐怖(Psychological Horror)」といったユーザータグが定義され、無関係タグとして削除対応されたと思しき痕跡がある(SteamDB)。また、「リラックス」「かわいい」「恋愛シミュレーション」といったタグについても、過去に削除されていたようだ。つまり、本稿執筆現在そうしたタグが見られるのは、削除後もタグ投稿が止まず復活したと見られる。

こうしたイタズラタグとの戦いが繰り広げられていたのは、フロム・ソフトウェア過去作でも同様だ。特に『エルデンリング』では、Steamストアページ公開後にユーザー定義タグTOP3が「恋愛シミュレーション」「かわいい」「カジュアル」というラインナップに。作品発売前から、予想されるゲーム内容からかけ離れたタグが定義されてしまったのだ(関連記事)。同作ストアページではその後に対策がされた様子で、本稿執筆時点では20位の「家族向け」を除いて適切と見られるタグが並んでいる。

*タグの様子がおかしかった当時の『エルデンリング』Steamストアページ


なぜ、『エルデンリング』や『アーマード・コア6』を恋愛シミュレーションにしたがるユーザーが多いのか。それは、一部ファンの心理が原因かもしれない。『ダークソウル』シリーズや『エルデンリング』などのファンコミュニティでは、作中のNPCたちに強い愛着をもつ者も多い。魅力的なNPCに対しての恋愛感情を語るような者も国内外で散見される。そうした素地もあり、「フロム・ソフトウェア作品は恋愛ゲーム」という半ばネットミーム的な認識は、一部ユーザーのなかに浸透しているのだ。本気か面白半分かは定かではないものの、そうしたユーザーたちが「恋愛シミュレーション」タグを投じていると考えられるだろう。

またフロム・ソフトウェア作品としては、『KING’S FIELD』や『SHADOW TOWER』といった比較的初期のARPG作品でも、「どのNPCが好きか」といった話題はファンの間でもしばしば語られていた。さらに、人間の姿がほぼ登場しない『アーマード・コア』シリーズ作品でも、登場キャラクターたちの人気は高い。同作キャラたちは基本的には“声”のみの出演となるものの、初代『アーマード・コア』から三石琴乃氏や田村ゆかり氏といった声優陣が参加。続くシリーズ作品でも、豪華な声優陣の出演は慣例となり、上質な演技はファンたちの心を掴んでいた。特にプレイヤーの相棒となるオペレーターや、それに類するキャラクターに熱烈な愛着を示す者も散見された。キャラの魅力にやられて一部プレイヤーの様子がおかしくなるのは、一種の伝統でもあるのだ。

『アーマード・コア フォーアンサー』


しかし、Steamのタグ機能は、ユーザーたちのゲーム検索などにも利用される大切な機能である。ストアページにおける作品の内容に沿わないタグの設定は、検索ノイズや販売上の支障に繋がる可能性もある。だからこそ、無関係タグの削除といった対応が取られているのだろう。また、『アーマード・コア6』がどのような内容の作品となるかも、登場キャラクターなども含め現時点ではほとんどがベールに包まれている。キャラクターに恋愛すること自体はまったくの自由ではあるものの、ユーザータグについては、実際に作品を遊んだ上で適切と思えるタグを投稿したい。

『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』は2023年、PC(Steam)およびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けにリリース予定だ。



※ The English version of this article is available here

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