『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の“モブトレーナー”の特濃っぷりが注目集める。おじさんおばさん学生と、世界個性同窓会

 

ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の“モブトレーナー”の個性が豊かであるとして、注目を集めている。主要キャラクターだけでなく、脇役たちが脚光を浴びているようだ。

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』では、オープンワールドシステムを採用。それにあわせて、フィールドにいるトレーナーたちの挙動もちょっぴり変化している。具体的には、向こうから戦いを仕掛けてこなくなった。過去作では、トレーナーの前を通ることで声をかけられ対戦する形式だったが、今作では自分から話しかけることで対戦するシステムに。

そして、やや受け身になったトレーナーの個性が減ったのかというとそうでもなく、むしろ各トレーナーたちの個性がより“濃ゆく”なってきているのだ。もっとも脚光を浴びているのは学生だろう。各地にいるトレーナーなのだが、学生であり中年。見た目もたくましく、なかなかインパクトがある。ゆえに国内外で注目を集めている。


そのなかで特に印象に残りやすいのはトシアキだろう。トシアキは、ゲーム序盤に出会うであろうトレーナー。その見た目だけでなく、キルリアというかわいらしいポケモンのオスを使うこともあいまってインパクト強めである。興味深いのは、本作ではトシアキを含めた学生の年齢層に、かなり幅がある点だ。学生トレーナーはおじさんだけでなく、老人に近い高齢の人も含まれる。またそれぞれが、バトル前/バトル後のセリフで年齢関係なく各々のポケモントレーナー活動を楽しんでいる様子が見受けられる。高齢トレーナーは過去作にも見られたが、「学生」という枠で出てくるのが面白い。


現実の学校は、小学校と中学校は義務教育であるが、高校や大学、専門学校については年齢制限をしないところが多い。本作の学校の舞台となるオレンジアカデミー/グレープアカデミーも、「入学する年齢は不問、子供から大人まで幅広い年齢層の生徒が授業を受けられる」と掲げている(公式サイト)。とはいえ、現実世界ならば学生の多くは高校なら10代後半、専門学校なら10代後半から20代前半がほとんど。それ以外の年齢層の学生は少数派となりがちで、溶け込み難易度が高い。中年/高年トレーナーをガンガン登場させるのは、現実ではあまり見られないという点で、挑戦的な試みといえるだろう。

【UPDATE 2022/11/26 22:19】
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ちなみに学生以外でもモブトレーナーたちは特濃。見た目・表情ともにバリエーション豊かである。子供の学生からタフなご老人まで幅広い。またさまざまなトレーナーがSNS上で話題になっている。バリエーションのひとつであるバックパッカーについては、ストリーマーであるpenguinz0氏のようだという感想があったり、DJ Koo氏も自分に似ているのではないかとも言及していた。タクシードライバーでは、“初心者狩りおじさん”(関連記事)を含め逸材揃いだ。


げいじゅつかについては、目鼻を覆うような衣装をしており、中東系の女性を彷彿とさせる。かと思いきや、やまガールはムキムキの胸板ごつめ。なかなかの迫力だ。なお本作では、骨格が太めの女性も数多く登場しており、体型も幅広い。一方でアジア系の特徴が濃い姿のキャラも。肌や髪色など人種的特徴の多彩さだけでなく、いろいろな人生・背景を感じさせる、世界中の濃い人々が集合するような面々となっている。特筆すべきは、これらのキャラが自分や誰かに似ているとの感想が多いこと。個性豊かであることと、プレイヤーに自分に似ていると思わせることを両立している点は興味深い。

※ 配達員もコミュニティは熱視線を集めているようだ。


ただ、トレーナーたちが自己表現を巧みにしている一方で、プレイヤー側の衣服の自由度にまつわる批判もある。具体的には、主人公の衣服バリエーションが「制服」で固定されることも不満点としてあげられている。頭や顔用のアクセサリー、カバンや手袋、靴下や靴は各ストアで売っているが、制服は春夏秋冬の4種類のみ。Polygonなどのメディアが不満をこぼすほか、過去作と比較してバリエーションの少なさを批判するユーザーも。アップデートやDLCなどでの追加は望まれるところだろう。


本稿はモブトレーナーに焦点を当てたゆえに割愛したが、ジムリーダーや先生陣も実に多彩な装いをもって登場する。そうしたキャラも含めて、『スカーレット・バイオレット』の広大で多彩な世界が構築されているのだろう。『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は、Nintendo Switch向けに発売中だ。

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