実体験ベースの戦争ノベル『Ukraine War Stories』では、日本のプレイヤーが世界最多。その理由を開発者に訊いた

 

先月10月18日、Steamにて無料配信開始となった『Ukraine War Stories』。本作は、日本語を含む多言語に対応している。そして有志の日本語翻訳者によれば、本作のプレイ人口は日本が最多だという。日本のプレイヤー数はプレイ人口のどの程度の割合を占めるのか。そして、なぜ多いのか。弊誌は開発元Starni Gamesに話を訊いた。

まず『Ukraine War Stories』について紹介しておこう。本作は、ロシアのウクライナ侵攻を題材にしたビジュアルノベルだ。兵士ではなく民間人として、占領地における極限状態を追体験できるゲームとされている。本作には、それぞれ異なるウクライナの町で展開する3つのシナリオが存在。ホストメリ(Hostomel)、ブチャ(Bucha)、マリウポリ(Mariupol)が舞台となる。そしていずれのシナリオでも、愛する人と共に戦地からの脱出を目指すことになる。

本作で語られるすべての物語は、実際の出来事に基づくとされている。目撃者の証言、およびその地での記録を、1つの物語にまとめあげているそうだ。なお物語のベースになった出来事については、出典元が記載され「情報源」としてゲーム内にリストアップされている。本作には有志の翻訳者たちの助けもあり、12言語に対応。日本語表示にも対応している。

無料配信かつ日本語表示に対応していることもあり、本作は国内でもユーザーの反響を呼んでいる(関連記事)。そして有志で翻訳に参加した、くらむこと舟橋大氏によれば、本作のプレイ人口は日本が最多であるという。弊誌はStarni Gamesにメールにて取材を実施。詳細を訊いた。

── 本作は日本のTwitter でトレンドとなっており、プレイ人口は日本が世界最多と聞きました。日本のプレイヤーは、世界で何割ほどを占めていますか?

Starni GamesのCOO(Chief Operating Officer)を務めるOleksandr Sienin氏(以下、Sienin氏):

はい、たしかにTwitterで話題になったことや、ゲームメディアに取り上げてもらったことによって、日本のプレイヤーが大きく増えました。本作が日本でこれほど広まるとは思いもしませんでしたよ。ゲームの配信から1週間経過時点では、本作をダウンロードおよびプレイした日本のプレイヤーの割合は、全体の30.7%となっています。

以下、コミュニティに共有した統計データとなります(初週のプレイヤー数上位10か国):

日本 30.7%
中国 14.7%
ウクライナ 14.4%
米国5.0%
ポーランド 4.7%
台湾4.2%
ドイツ 3.5%
イギリス 1.8%
韓国1.4%
香港1.2%

── 日本のプレイヤーが多い理由は何だと考えていますか?

Sienin氏:

まず第一に、優秀な有志翻訳チームの方々が日本語に訳してくれたことが大きいです。彼らは素晴らしい仕事をしてくれました。また、日本ではビジュアルノベルがジャンルとしてとても人気が高いことも、理由のひとつとして考えられます。とはいえ、それだけでは、なぜこれほどまでに好意的なフィードバックが寄せられているのか説明しきれません。最大の要因は、日本のプレイヤーの皆様が、本作に関する情報を積極的に拡散・シェアしていってくれたことです。彼らのおかげで、日本のプレイヤー数は、通常であればもっともプレイヤー人口が多い国になるであろう米国や中国を上回ったのだと思います。

── 有志の日本語翻訳者が集ったのはどのタイミングでしたか?デモ版配信の時期でしょうか。

Sienin氏:

はい、デモ版がリリースされたすぐあとだったと思います。Discordのチャンネルで、日本語へのローカライズを手助けしたいと声をかけてくれて、快諾しました。まずはデモ版の対応言語に日本語を追加できるよう、デモ版の内容を翻訳するところから作業を開始。その後、製品版のリリースに間に合わせるかたちで、残りの部分の翻訳作業を進めていただきました。翻訳チームには、とても感謝しています。

── ウクライナは現在どのような状況でしょうか。チームの皆さんは安全に過ごされていますか?

Sienin氏:

開戦以来、ロシアは民間人を攻撃の標的にしてきましたが、最近ではウクライナの電力供給を停滞させるため、インフラへの攻撃に重点を置くようになっています。被害を受けた施設が復旧するまでの間、電力の使用に制限がかかり、また、ときおり停電が発生するようになりました。あと、ロシアの攻撃によって、国中で毎日のように民間人が死亡・負傷しています……。

私たちのチームはなんとかなっており、それなりに安全な状態です。といっても、最寄りの地下鉄の駅からオフィスに向かうまでの間に、破損したアパートをいくつか見かけますが。致命的なことではないものの、我々が一番困っているのは、最近始まった停電です。たとえばゲームのリリース時には、オフィスと自宅のどちらかが停電した場合に備え、私は自宅で、他のメンバーはオフィスで働くようにし、どちらからでもリリースボタンを押せるようにしていました。今日も、オフィスからオンラインで打ち合わせをする予定があったのですが、開始10分前に停電になり、タクシーで(停電の影響を受けていない)自宅に戻ることになりました。

── ありがとうございました。皆さんのご無事を祈っております。

以上がインタビューの内容となる。『Ukraine War Stories』については、国内Twitterユーザーの発信や実況、Togetterでの取り上げなどが盛んだった。ゲームとして、ウクライナの悲痛な現状を知れる内容ということ、それを日本語で確認できることもあいまり、日本のユーザー間でも広まったのだろう。改めて、有志翻訳者による貢献がうかがいしれる。

『Ukraine War Stories』は、Steamにて無料配信中だ。



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