Steamの“特定国でのゲーム価格悪用問題”に、Valveがついに対処。アルゼンチンでは以前の約6倍の価格を開発者に提案するように

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Valveは10月25日、Steamにてゲームなどを販売する開発者に対し、価格設定ツールの変更と、推奨価格の更新をおこなったと発表した。新しい価格設定ツールでは、開発者が自身の作品の価格を管理する方法が簡素化されている。

そして推奨価格の更新においては、一部の国の推奨価格が大きく変動しているようだ。Valveは先日、推奨価格のガイドラインを、従来よりもより一層高い頻度で更新していく方針を明らかにしており、早速対応された格好となる(関連記事)。

*価格設定ツールの利用ガイド。日本語字幕対応


Steam向けの開発者は、自らの作品の価格を米ドルで設定すると、Steamが対応する39の国・地域の通貨での価格に自動的に変換してくれる、Valve提供のサービスを利用可能。先述した推奨価格とは、その変換された価格のことである。単純に為替レートだけに基づいて換算されているわけではなく、現地の購買力平価や消費者物価指数なども参考に、各国・地域の一般消費者向けエンターテインメントの価格として相応しいように算出されるという。なお開発者は、推奨価格とは異なる価格に独自に設定することも可能である。

今回実施された推奨価格の更新については、デベロッパーのMommys Best Gamesが報告している。同スタジオは、シューティングゲーム『Game Type』のセール時の売上が酷かったものの、アルゼンチンとトルコでは数百本も売れていたとコメント。そこで価格設定ツールを確認したところ、新たな推奨価格に気づいたそうだ。

同作の、米ドルでの価格は2.99ドル(約445円)。以前は39.99アルゼンチンペソ(約38円)を推奨され、その価格で販売されていたが、現在は249アルゼンチンペソ(約240円)が推奨価格として提示されているという。つまりアルゼンチン国内では、約6倍の価格に引き上げられるかたちとなる。

またRedditでは、いわゆるフルプライスとされる59.99米ドルの作品における、各通貨の新旧推奨価格が報告されている。そこでも、アルゼンチンでの価格はやはり約6倍に。トルコでは5.5倍ほどとなっている。日本円については、6290円から6500円に引き上げられたようだ。実際のところ、ほぼすべての通貨において、割合の大小はあれど推奨価格の引き上げが実施されている。昨今のドル高の影響もあり、全体的に引き上げられたのかもしれない。

なお、推奨価格が引き上げられたからといって、直ちにSteamでの販売価格がアップするわけではない。開発者が任意にその新推奨価格に更新した場合に適用されるため、各作品の開発者次第ということになる。ただ、特にアルゼンチンやトルコなど、大幅な引き上げがおこなわれた国については、新推奨価格の採用を検討する開発者が今後増える可能性がありそうだ。

先述したMommys Best Gamesの事例からも伺えるように、為替レートよりも安く設定された価格で販売すると、1本あたりの収益は減ることになる。アルゼンチンなどでは、これまで推奨価格がかなり安く設定され、そうした傾向が顕著だった。そのため、Steamの居住地設定を偽りアルゼンチンからの利用を装って、不当に安価で購入する他国在住ユーザーが相次ぎ問題視されてきた。開発者にとって今回の推奨価格の更新は、アルゼンチンなどでの価格を引き上げる良い機会と映るかもしれない。

Image Credit: SteamDB


一方で、アルゼンチンなどで暮らすゲーマーにとっては難しい状況となりそうだ。依然として為替レートに基づいて算出した数字よりは安い価格になるものの、以前の推奨価格は現地における適正価格とされてきた側面があり、それが約6倍に跳ね上がるというのはインパクトがある。前出のRedditでは、特定のタイトルが最低賃金の何割に相当する価格に引き上げられるのかという例を挙げ、高価であると訴える投稿がみられる。

今回の発表にてValveは、開発者に提案する推奨価格を定期的に見直すことで、目安としてより価値あるものにしようと取り組んでいるとコメント。今後は年に一度、推奨価格を詳しく検証し、適宜調整していく予定とのこと。今後1年のあいだには、今回の推奨価格の更新が、開発者や各国のゲーマーにとってどのような影響を及ぼすことになるのか注目されそうだ。

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