Steam向けゲーム開発者を悩ませる“アルゼンチン価格”にValveが今後対応か。地域別価格設定の調整頻度アップを約束


Steamを運営するValveは、ゲーム開発者がSteam向けに作品をリリースする場合に知っておくべき情報を公開している。そのなかの価格設定に関する記述内容が、最近になって更新されたようだ。海外メディアGame Developerが報じている。

更新された具体的な箇所は、Steamの開発者向けドキュメントにおける「地域別価格設定のための推奨事項」という項目内の記述だ。いま情報更新したValveの意図は明かされていないが、国ごとの価格差を悪用するユーザーを抑制する狙いがあるのではとみられている。


「地域別価格設定のための推奨事項」では、開発者が自らの作品の価格を米ドルで設定すると、Steamが対応するほかの数十の国・地域の通貨での価格に自動的に変換してくれる、Valveが提供しているサービスについて説明されている。各通貨での価格は、開発者自身で個別に設定することも可能だが、面倒な作業となるためそうしたサービスが提供されているわけだ。

今回の更新内容はというと、同項目内のほぼすべての記述が対象となっている。ただ、大部分は基本的な内容としては変わっていない。上述した通貨変換サービスでは、為替レートだけに基づいて米ドルから単純に換算されるわけではない。国ごとの購買力平価や消費者物価指数なども参考に、各国・地域の一般消費者向けエンターテインメントの価格として相応しいように算出。Valveはそれを推奨価格として、開発者に提示しているという。今回の更新でそうしたプロセスについて補足され、より丁寧に説明するようなかたちに書き換えられた格好である。

一方で、明確に表現が調整された箇所もみられる。上述したように、推奨価格の決定プロセスにおいては、為替レートや各国・地域の経済状況が反映されており、それらの状況は常に変動する。Valveはそうした状況に応じて、これまでは推奨価格のガイドラインを「定期的(periodically)に更新していく」としていたところ、「より一層高い頻度(a much more regular cadence)で更新し続けていく」と表現を改めた。

『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』の国別価格設定。日本円で換算すると、アルゼンチン価格は日本での価格の約半額に。ちなみにロシアのN/Aは販売されていないことを意味する。
Image Credit: SteamDB


この情報更新により、Valveは各国・地域の実態によりタイムリーに追従して、推奨価格を調整していく方針を示した。裏を返せば、これまでは実態と乖離した価格設定となっていたことが多かったとも受け取れる。また更新された文章のなかでValve側は、多くの作品がValve提供の推奨価格を採用せず、開発者が独自に価格を設定している状況にあることに言及。そして、上述した一連の対応変更によって、今後提供する推奨価格が開発者にとって有用なデータとなることを望むと、新たにコメントしている。

開発者が独自に価格を設定する背景のひとつとしては、物価が比較的低い国の存在が挙げられる。たとえばアルゼンチン向けの推奨価格設定が、開発者の頭を悩ませてきた。アルゼンチンでの推奨販売価格は他国から見てかなり安く設定されるため、ゲームを不当に安く購入しようとSteamの居住地設定を偽る他国ユーザーが後を絶たないのだ。

例としてこれまでには、特定ゲームの購入者の国別割合において、「アルゼンチンなどが異常に大きい」と報告する開発者もいた。国ごとの価格差を悪用し、アルゼンチンからの利用を装い不当な安価で購入するユーザーが相次いだためだろう。そうした不当行為が増えると、開発者が受け取る利益が減ってしまう。そのため開発者のなかには、アルゼンチンの価格を個別に引き上げるよう設定する人もいる(関連記事)。

今回の「地域別価格設定のための推奨事項」の記述内容の更新は、上に挙げたような一部ユーザーの不当行為に悩む開発者を念頭に置いたものと受け取れる。つまり、開発者が国や地域個別に価格設定を調整せずとも、Valveが提供する推奨価格のままで適切に販売できるようになることが期待される。もっとも、単純に為替レートに基づいて変換するだけでは、現地における適正価格とはならないことも多い。今後Valveは、どのような調整をおこなうのか注目される。また同時に、Steamの居住地設定を偽って購入できてしまう仕組みについても、さらなる対応が望まれるところだろう。