『スプラトゥーン3』の「下がらないウデマエ」仕様が賛否両論。実力以上になりうるウデマエに、新規も経験者も思うところあり

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発売から10日あまりが経過した『スプラトゥーン3』。本作から参加したプレイヤーもゲームに慣れ、ランク戦のバンカラマッチも多数のプレイヤーで賑わっているようだ。しかし本作では、プレイヤーの実力を示す「ウデマエ」の仕様が前作から変更されている。変更点の中でも、特に「負け続けてもウデマエが下がらない」仕様の是非については、多くのプレイヤーの間で議論になっているようだ。

『スプラトゥーン3』のウデマエについておさらいしておこう。ウデマエはプレイヤー個人の実力を表すランク制のシステムだ。ランク戦であるバンカラマッチ(前作ではガチマッチ)の戦績に応じてポイントが得られ、一定数貯まると昇格戦に挑戦できる。昇格戦で規定数勝利すると、ウデマエが昇格するかたちだ。記事執筆時点ではC-からSまでの10段階、およびウデマエSより上はS+1、S+2と数字が加算され、S+50までのウデマエが用意されている。

今作が前作『スプラトゥーン2』と大きく異なるのは、ウデマエは「一度昇格すると降格しない」という仕様だ。前作では、戦績が振るわなければウデマエが降格する仕組みだった。一時的に昇格することはあっても、試合を重ねるうちにウデマエが上下し、プレイヤーの実力相応のランクを行き来するようなかたちだ。そのためプレイヤーの実力とウデマエが大きく乖離しにくく、ウデマエが実力の指標として一定の機能を果たしていた。また上達したいプレイヤーにとっては、「ウデマエS+」への到達、および最上位プレイヤー向けの「Xマッチ」への参加が一つの目標になっていたのだ。


しかし本作では、バンカラマッチで負けてもウデマエが降格しない仕様に変更されている。戦績次第でポイントは増減するものの、一度昇格すればシーズン終了まで現在のランクが保証されるかたちだ。この変更については初心者から前作経験者まで、さまざまな立場のプレイヤーから意見が寄せられている。なお本稿にて取り上げる意見はごく一部であり、この新しいウデマエの仕様については賛成・反対どちらも多様な意見が交わされている点は留意されたい。

前作『スプラトゥーン2』のプレイヤーにとっては、新しい仕様による”ウデマエの形骸化”が気になるようだ。ウデマエが下がらなくなったということで、勝率の悪いプレイヤーでも長時間プレイすることである程度高ランクになれるという見方だろう。もちろん実際には一定の勝率を維持しなければポイントが得られず、昇格戦というシステムもあるため、「負け続けてもS+になれる」というのは極端な認識といえる。しかし降格そのものがない現状は、前作ほどウデマエが実力を反映していないという印象を受けるプレイヤーも存在するようだ。

また過去作ではウデマエのほかに、独自の基準で算定した「ガチパワー」がマッチングの基準に使われていた。マッチングした敵チーム・味方チームそれぞれの平均ガチパワーを確認することができ、ウデマエとは別の指標として機能していた。しかし本作では、ガチパワーのようなマッチング基準の内部数値、およびマッチング相手のランクはいずれもプレイ中可視化できなくなっている。形骸化したように見えるウデマエや非表示のガチパワーが疑心暗鬼を生じ、実力差のあるプレイヤー同士でマッチングしているのではとの懸念の声もあるようだ。

さらに「Xマッチ」が未実装である点も、マッチングへの不信感に影響している。前作『スプラトゥーン2』では、発売から9か月後に最上位プレイヤー向けのランク「ウデマエX」を開放。およびウデマエXプレイヤー同士がしのぎを削る「Xマッチ」が実装された。ウデマエXはランクではなく数値で実力を示すレート制となっており、ランクの枠を超えた実力を示すレートとして機能していたのだ。しかし本作のXマッチは「今後のアップデートで実装予定」とされている。前作Xマッチに参加していた最上位プレイヤーも現状ではS+帯のウデマエになっており、明確に実力差のあるプレイヤーとマッチングしてしまう可能性が考えられる。

一方、本作からの新規プレイヤーやカジュアルプレイヤーからも、新しいウデマエ仕様への意見が寄せられている。高ランクのウデマエに到達してしまった場合、実力の伴わないランク帯に居座って味方に迷惑をかけるのが不安、というものだ。プレイを重ねてじっくり実力をつけたいプレイヤーにとって、現在のウデマエが保障される仕様はかえってプレッシャーになりうる様子。事実Twitterでは、高ランクに到達した喜びを報告しつつも「このランクに見合うように成長したい」と控え目なコメントを投稿する例が見られる。カジュアルプレイヤーもまた、ウデマエが実力を反映していないのではという印象を強くもっているのだろう。

もちろん、本作の新しいウデマエ仕様を歓迎するプレイヤーも多く存在する。学ぶことが多くもっとも苦労する初心者が、達成感と共にプレイできるように配慮されているという見方も多い。また前作経験者にとっても、ランク降格の「メーターが割れる」演出がない、いわゆるパリンがないことがストレス緩和になり、プレイしやすくなったという意見があるのも事実。競技性もある本作において何を優先するかが、議論の争点になっているようだ。

前作まではウデマエが実力を示す数値として機能しており、「ウデマエS+」「ウデマエX」に到達することが一つのやり込みとして、プレイヤーのモチベーションになっていたという背景がある。前作と同じくウデマエという名前でありながら仕様が変更されたこと、経験量の異なるプレイヤーが一度に同じゲームに参加していることなどが影響して、混乱を招いている状態だろう。発売から3日で345万本の国内売り上げを叩き出し、9月24日からはフェスの開催も控え、さらに賑やかになる本作。ウデマエに対するプレイヤーのフィードバックも含めて、開発元も多くのプレイヤーが楽しめるかたちを模索していくことだろう。



※ The English version of this article is available here

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