Blizzard Entertainmentは8月27日、『オーバーウォッチ』におけるキャラクター「ジェシー・マクリー」の名称を変更すると発表した。
ジェシー・マクリーは、『オーバーウォッチ』に登場するキャラクターの一人だ。カウボーイのような姿をしており、愛銃ピースキーパーを携行。射線が通るすべての敵をロックオンして一斉に撃つ「デッドアイ」などの能力を使いこなす、射撃特化型のヒーローだ。
そんなマクリーだが、最近はある騒動に巻き込まれていた。Activision Blizzardは7月20日、米国カリフォルニア州の行政機関である公正雇用住宅局により訴訟を起こされている。訴状では、Activision Blizzard社内に女性従業員に対する性的ハラスメント、および賃金や昇進機会の不平等などが存在し、男性従業員を中心とした有害な職場文化が根付いていたと主張されている。この件は各メディアによって報道され、そのなかでKotakuが報じた男性従業員らのグループチャットの内容が注目を集めた(関連記事)。
こうしたなかで非難を集めることとなったのがJesse McCree(ジェシー・マクリ―)氏である。Jesse McCree氏はBlizzard Entertainment社にてリードレベルデザイナーを務めていた人物だ。『ディアブロ III』においてシニアレベルデザイナーを担当するなど、ベテラン開発者として活躍。また『オーバーウォッチ』におけるマクリーの名前の由来となった人物としても知られていた。
McCree氏はKotakuが公開した記事によって、セクハラ容認を示唆するグループチャットに参加していたことが判明。その事実が批判を招き、とくに『オーバーウォッチ』ファンから反発を招いた。一部のユーザーは同作のキャラクター名としてMcCree氏の名前が使われていることに強い嫌悪感を示し、『オーバーウォッチ』におけるマクリーの改名を求める動きが生じていた。なおMcCree氏は後日、Blizzard Entertainmentを離職したことが報じられている(関連記事)。
Blizzard Entertainmentは今回の名称変更に関する発表にあたり、『オーバーウォッチ』の世界観はインクルーシビティや平等性、希望といった考えにもとづいて構築されており、よりよい未来を形作ることを望んでいると表明。こうした価値観を尊重し、それらを反映するゲームワールドを創造していくにあたって、現在「マクリー」と呼ばれているキャラクターの名称変更が不可欠であると判断されたという。
マクリーの名称変更にあたっては、適切な対応をおこなうためにも時間をかけていきたいと言及。もともと9月にはマクリーが重要な役割を果たす物語およびゲームコンテンツのリリースが予定されていたが、こちらを9月から年内リリースへと延期すると発表した。代わりに9月には新たなFFAマップをリリースするとしている。また、今後はゲーム内のキャラクターを現実の従業員にもとづいて命名しないこと、現実の要素を参照する際はしっかり検討をおこなっていくことを発表した。
Jesse McCree氏由来の名称としては、『オーバーウォッチ』だけでなく、『World of Warcraft』についても5人のキャラクター名と、1つの都市名が存在している。The Washington Postに匿名の従業員が語ったところによれば、これらの名称も今後ゲームから取り除かれるという。また、『Diablo 4』ディレクターの Luis Barriga氏、『World of Warcraft』デザイナーの Jonathan LeCraft氏に由来した名称も同様に削除される予定とのこと。本件については Blizzard Entertainmentの広報も認めた。Barriga氏、LeCraft氏の両名もMcCree氏と同時期にBlizzard Entertainmentを離職している。
なお『World of Warcraft』については本件に先立っての動きとして、元クリエイティブディレクターAlex Afrasiabi氏に由来する名称が変更されている。同氏は先述した訴状にて、女性従業員へのセクシャルハラスメント行為を名指しで指摘されていた人物だ(2020年の時点で、同社から解雇されている)。Blizzard Entertainmentの訴訟騒動を受け、今後もゲーム内の名称変更の動きは続いていきそうだ。具体的なマクリーの名称変更の時期や、変更後の名称については今のところ明かされていない。