『ディアブロ IV』ゲームディレクターなどベテラン開発者がBlizzardから離職。一連の騒動で注目を浴びたマクリー氏など3名


訴訟問題に揺れるActivision Blizzardの子会社Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)にて先ごろ、3名のベテラン開発者が同社を離れたようだ。海外メディアKotakuの報道によれば、退職したのは『ディアブロ IV』や『World of Warcraft』などの大型タイトル開発に深く関わる開発メンバーたちだ。


Activision Blizzardは現在、ゲーム業界全体に波及する騒動の渦中にある。先月7月20日には同社および子会社が、女性従業員への不当な扱いを理由として米カリフォルニア州行政機関より訴訟を受けた。その後、現役従業員・元従業員などの関係者による告発が相次ぎ、従業員主導によるストライキなどの抗議運動にまで事態が発展した。そして、今月8月3日にはBlizzard社長が退任するなど、役員の出処進退にまで影響が及ぶ状態となっている(関連記事)。今回報じられた開発者の退職についても、少なくとも一部は、一連の訴訟騒動を受けての動きと見られる。

今回退職が報じられたのは、『ディアブロ IV』のゲームディレクターの職にあったLuis Barriga氏と、同作のリードゲームデザイナーを務めたJesse McCree氏、そして『World of Warcraft』シニアゲームデザイナーだったJonathan LeCraft 氏だ。Kotakuの報道によれば、今回の離職の理由および解雇処分か自主退職かといった点については明かされていないようだ。しかしActivision Blizzard広報は、いずれの人員も現在Blizzardに所属していないという旨の声明を、同誌を含めた複数海外メディアに送っている。


まず、上述の3名のなかで特に騒動の中心に近かったのがJesse McCree氏だ。同氏は『ディアブロ III』においてシニアレベルデザイナーを務め、長年にわたりシリーズ作品を支えてきたベテラン開発者である。一連の騒動のなかでMcCree氏の名前が特に注目を浴びたのは、セクハラ容認を示唆するBlizzard一部社員によるグループチャットに、同氏の名前が認められた一件だった(関連記事)。McCree(マクリー)氏の名はBlizzardが手がけるFPSゲーム『オーバーウォッチ』に登場するキャラクター「マクリー」の名前の由来ともなっており、上述の件が発覚した際には一部ユーザーが名前の変更を求める声をあげていた。

Jonathan LeCraft 氏およびLuis Barriga氏も、いずれも約15年にわたってBlizzardに務めてきたベテラン開発者だ。両者に関しては、McCree氏のように問題となりうる言動が過去にあったのかは不明。Barriga氏については、『ディアブロ IV』制作の中心に位置している開発者だった。Activision Blizzard広報は、前述のKotakuへの声明において「すでに新しいリーダーを配している」としている。しかしながら、中心メンバー2名が離脱することとなった『ディアブロ IV』制作の行く先には懸念が残るのも事実だ。


ほか、人事関連の出来事としては、一連の騒動で大きな批判を受けるActivision Blizzard重役のひとりであるFrances Townsend氏の動向についてThe Washington Postが報じた。同氏はABK(Activision Blizzardおよび2015年同社に買収されたKing)女性従業員ネットワークのエグゼクティブスポンサーを辞していたようだ。ただ、同氏は現在もActivision Blizzardに在籍しているという。

ほかにも懸念の種は尽きない。先頃には『オーバーウォッチ』公式プロリーグである「The Overwatch League」について、State Farmやケロッグ、コカコーラなどの企業が同リーグとのパートナーシップを継続すべきか再検討している旨を表明している。同リーグのスポンサー一覧からは、過去に掲載されていたケロッグの商品ブランドやState Farm、そしてT-Mobileのロゴが消えている。

さらに8月10日には、Activision Blizzard株主および投資家団体SOCが、同社に対して書状を送ったことが報じられた。書状の内容は、現状での対応不足を厳しく指摘しつつ、今回の問題に責を持つ重役の給与の返納や減俸および女性役員の増員など、より抜本的な改善を求めるものだ。

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社内外の関係者やゲーム業界のみならず、外部企業や投資家からも改善を求められるActivision Blizzard。まさに四面楚歌という状態の同社からベテラン開発者が消えたことにより、新作ゲームの開発などにも影響が出る可能性は大きい。いずれにせよ、プレイヤーにしっかりとゲーム作品を届けるためには、迅速かつ誠実な対応が急務となるだろう。