中国版NVIDIA SHIELDの失敗により、任天堂コンテンツの提供が終了するとの報道。Wiiタイトルリマスター版が独自配信

 

NVIDIAのデジタルメディアデバイス「NVIDIA SHIELD」は、中国国内向けには任天堂のゲームが提供されたことで話題となったが、どうやら近くサービス終了となる可能性があるようだ。市場調査会社Niko PartnersのシニアアナリストDaniel Ahmad氏が報告している。


NVIDIA SHIELDは、Androidベースのセットトップボックスで、ゲームコントローラーとリモコンを同梱。映画や音楽を楽しめるストリーミングデバイスであると同時に、Android向けゲームをプレイできるゲーム機でもある。ゲームストリーミングサービスGeForce NOWを通じて、PCゲームも利用可能。そして中国向けにおいては、そうした基本的な特徴の多くを引き継ぎつつ、任天堂のコンテンツを楽しめることを前面に押し出して展開している。

中国版NVIDIA SHIELDは2017年末に発売。『スーパーマリオギャラクシー』や『New スーパーマリオブラザーズ Wii』『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』『パンチアウト!!』『ドンキーコング リターンズ』など、Wii向けのタイトルが移植され提供された。しかも、すべてのタイトルが1080pで描画。任天堂が他社ハードにコンテンツを提供する事は珍しく、さらにオリジナル版よりもアップグレードされ、中国限定でリリースされるとあって当時話題となった(関連記事)。

これは、同年発売されたNintendo Switchに、NVIDIAのTegraベースのプロセッサが採用されたことが関係しているようだ。前出のDaniel Ahmad氏は、任天堂とNVIDIAの提携の一環として、中国版NVIDIA SHIELD向けに任天堂タイトルが提供されたと報告している。

しかし、中国のゲーム市場に詳しいDaniel Ahmad氏は今年7月19日、先述した任天堂タイトルがダウンロード不可になっていると報告。現時点では、それらのタイトルの購入者はアクセス可能であるものの、認証を担うサーバーがいつまで稼働し続けるのかは不透明だとしている。なお、中国版NVIDIA SHIELD向けには『The Witness』や『XCOM: Enemy Unknown』『Contrast』『Beatbuddy: Tale of the Guardians』なども配信されているが、これら任天堂以外のタイトルにも影響が及んでいるのか、またNVIDIA SHIELD自体がサービス終了となるのかどうかは不明である。

またAhmad氏は、任天堂タイトルはそれぞれ数千本程度しか売れておらず、NVIDIA SHIELDは中国では失敗したとコメント。その理由は、価格設定などにあるとのこと。ちなみに中国では、NVIDIA SHIELDは1499人民元(約2万5000円)で販売されている。

同氏が所属するNiko Partnersの調査によると、中国ではNintendo Switchが昨年だけで売り上げ130万台を突破し、PS4やXbox Oneを大きく上回る人気だという(Nintendo Life)。政府機関による厳格な審査システムが影響してか、配信タイトル数はまだそれほど多くないが、中国の任天堂ファンにとってはNVIDIA SHIELDではなく、Nintendo Switchを選ぶという流れができているのかもしれない。


現時点ではNVIDIAも任天堂も、中国版NVIDIA SHIELDのサービスに関して特に発表はおこなっていない。ただ、NVIDIA SHIELDの製品ページは存在するものの、Weibo公式アカウントは2019年7月の投稿を最後に更新が途絶えたまま。積極的に運営が続けられているとは思えない状況となっている。

任天堂は昨年9月、『スーパーマリオ 3Dコレクション』の収録タイトルのひとつとして、『スーパーマリオギャラクシー』をNintendo Switch向けに移植している。中国版NVIDIA SHIELDの今後についてはまだ何ともいえないが、中国国外の任天堂ファンとしては、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』や『ドンキーコング リターンズ』などの移植にも期待したいところだろう。