Activision Blizzard社内にセクハラや賃金不平等など「女性従業員に対する不当な扱い」が根付いているとして行政機関が提訴

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米国カリフォルニア州の公民権保護機関である公正雇用住宅局(Department of Fair Employment and Housing、DFEH)は、現地時間7月20日、Activision Blizzardおよび関連子会社などを相手取り提訴した。原告は、同社においてセクシャルハラスメントや、性別による不当な賃金格差などが横行しており、カリフォルニア州公正雇用住宅法などに違反していると主張。賃金格差の是正などを含む、被害者への賠償を求めた。Bloomberg Lawが報じている。この件を受けてActivision Blizzardは、訴状の内容に誤りが多いとの声明を出している。


今回訴えを起こされたActivision Blizzardは、カリフォルニア州を拠点とするゲーム企業。同社は『オーバーウォッチ』『ディアブロ』シリーズに代表される人気作の開発・販売元Blizzard Entertainmentの親会社。Vivendi Gamesと、『Call of Duty』シリーズのパブリッシングなどで知られるActivisionが2008年に合併した、世界でも有数のゲーム企業だ。同社と共に被告とされているActivision PublishingおよびBlizzard Entertainmentは現在、同社の子会社化されている。

原告であるDFEHはカリフォルニア州ロサンゼルス郡上級裁判所に提出した訴状のなかで、同機関が2年間にわたり調査した結果を報告。Activision Blizzardおよび関連子会社において、女性従業員へのセクシャルハラスメントや、賃金および昇進機会の不当な格差が存在したとしている。また、Activision Blizzardにおいて男性従業員たちを中心とした有害な職場環境が構築されていたと述べられており、同社においては「Frat boy」的な文化が存在したとしている。この言葉については以下に説明したい。

「Frat boy」のFratとは、米国の大学においてしばしば形成される男子学生の社交組織「Fraternity(フラタニティ)」の略だ。フラタニティについては背景や活動内容が多岐にわたり一概には言えないものの、日本語で例えるなら「同好会」のような存在だ。訴状に書かれた「Frat boy的な文化」とは、そうした単一の性別のみによって構成されるコミュニティが陥りがちな、いわゆる“悪質なノリ”を表現した言葉だろう。


訴状では Frat boy的な文化の具体例として、「Cube crawls(キューブくぐり)」という遊びがオフィスにておこなわれていたとしている。この遊びは、大量のアルコールとともにオフィス内を飲み歩くというもののようだ。言葉の由来はPub crawl(はしご酒)と思われ、キューブはおそらく従業員のオフィスデスクを指す(パーテーション付きのデスクブースをCubicleと呼ぶ)。男性従業員がオフィス内を飲み歩きながら、女性従業員に不適切な言動を取る行為が横行していたという。ほかにも、男性従業員が二日酔い状態で「自慢げに」出社してきたり、業務中にビデオゲームをプレイして女性従業員に仕事を押し付けるなどの不適切な行動が見られたという。

そうした職場環境の問題としては、男性従業員の間で性交渉や女性の身体に関する会話が明け透けになされていたほか、レイプにまつわるジョークなども交わされていたという。原告の主張によれば、こうしたセクシャルハラスメント行為は、同社および関連子会社において常態化しており、一部重役なども性的な話題を口にしていたという。非常に痛ましい例として、ある女性従業員は、性的関係にある上司との出張の際に自ら命を断ったという。訴状によれば、その上司は性的玩具を出張に持ち込んでいたとのことだ。また、別の従業員からは「事件の直前に催されたホリデーパーティーで、命を絶った女性従業員の性的な写真が“回し見”されていた」という証言が出ているそうだ。


DFEHによる訴えでは、ハラスメント被害を含む不当な扱いについて、複数の女性従業員が人事部に訴え出ていたものの適切な対応は取られなかったそうだ。また訴えの内容などが「機密にされなかった」。すなわち、本来であれば匿名として保護されるべき、訴えを出した従業員の情報が共有されてしまっていたという証言も出ている。

また、賃金や昇進機会についても男性従業員と女性従業員の間で格差があったとしている。DFEHは同社の従業員のうち、女性が締める割合が20%に過ぎないと指摘。また、重役がほとんど白人男性で締められている点についても言及している。対応格差の例としては、あるアフリカ系アメリカ人女性従業員の場合、後から雇用された男性従業員の方が正規雇用までに要する期間が短かったそうだ。同従業員は、男性従業員よりも厳しく上司に監視され、ほかの男性従業員は不問とされている言動によって非難されることがあったと添えている。

Blizzard Entertaimentについては、元従業員がTwitter上で今回の訴えを補強する意見を述べている。同社のeスポーツ部門やビジネスインテリジェンス部門などで7年にわたり就労していたというNicki Broderick氏は、「もう辞めて2年半になるけど、Blizzardで働いていた時期のことを思うと苦痛を感じる」として、同社での経験を綴る一連のツイートを投稿している。


Broderick氏は転職し、「今はちゃんとした待遇と給料の職場で働けている」として、Blizzard Entertainmentにおける女性従業員への待遇が適切でないと逆説的に批判している。同氏は一連のツイートで、有害な職場環境があったという認識がありつつも、自分を騙しながら就労していたという旨の意見を表明。「私のような過ちを犯す女性が増えないよう祈ります」と述べている。

一方で、Activision Blizzard側には別の言い分があるようだ。BloombergのジャーナリストであるJason Schreier氏は今回の訴訟についてのツイートに追記するかたちで、同社広報から届いたとする声明文を公開している。その内容は、「DFEHの訴えた内容は歪曲されており、多くの部分が間違っている」として、同社の現状に即していないと主張するものだ。


声明文にてActivision Blizzardは「我々はDFEHの調査に関して、極めて協力的だった」として、DFEHが同社との適切な協議などによる解決を模索せず、訴訟に急いだと不満を示している。また、自ら命を断った従業員については「本件とは無関係」としており、同従業員をDFEHが遺族感情を無視して訴状に盛り込んだことは「道義に反する恥ずべきおこない」だとして痛烈に批判。今回の一連のDFEHの動きについて、「理不尽なお役所による無責任な行動」として不満をあらわにしている。

また、同社はDFEHの調査開始直後から、企業文化や多様性についてさまざまな改善の試みを継続していると主張。服務規程の更新や、権利侵害などの報告をしやすくするホットライン導入、従業員が抱えている懸念事項を調査するチームの設立などの対策をおこなっているとしている。少なくとも現状においては、DFEHの描き出した同社内部の様子は現実に沿っていないという主張のようだ。

今回の訴訟におけるDFEHによる指摘や証言はほかにも多岐にわたり、一部男性従業員については名指しでハラスメント行為を証言されている。原告側の主張が事実だとすれば、Activision Blizzard社内の環境は一般的なコンプライアンスにも反するものだったと考えられる。今回の訴訟の行方を慎重に見守りつつ、しっかりと事実関係が究明されることを祈りたい。

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