ノートルダム大聖堂の火災を受け、『Assassin’s Creed Unity』のゲーム内に再現された同大聖堂を訪れるゲーマー相次ぐ

 

フランス・パリのノートルダム大聖堂が、4月15日に発生した大規模火災により屋根や尖塔などに大きな被害が発生したことは日本を含め世界中で大きく報じられた。火災の原因は、当時大聖堂でおこなわれていた改修工事に関連があると見られており、16日までに鎮火。フランスのマクロン大統領は4月17日、国民に向けた声明を発表し、5年以内にノートルダム大聖堂をさらに美しい姿に再建させる考えを示した。5年後の2024年には、パリにてオリンピックが開催予定となっている。

この衝撃的なニュースを受けて、ゲーマーの間では『Assassin’s Creed Unity(アサシン クリード ユニティ)』ににわかに注目が集まっている。同作は18世紀のパリを舞台にしており、当時の街並みの中でのゲームプレイを楽しめる。新たに開発されたゲームエンジンにて建物は現実と同じスケールで作られ、特にパリの象徴であるノートルダム大聖堂は、外観から内装までこだわって再現されたことが同作の特徴のひとつとして紹介されていた。今回大きな被害を受けたノートルダム大聖堂の被災前の姿に思いを馳せてか、同作を改めてプレイしSNSにスクリーンショットを投稿する人が相次いでいる。

『Assassin’s Creed Unity』のノートルダム大聖堂は、Ubisoft Montréalにて当時シニアレベルアーティストを務めていたCaroline Miousse氏を中心に、およそ2年をかけて制作されたという。非常に有名な建築物であるため、可能な限り正確に再現する必要があるというプレッシャーがあったそうだが、細部を写した膨大な数の写真や、実際の設計図、歴史家からの助言など多くの資料をもとに、ブロックをひとつずつ積み上げていくように再現していったそうだ(Ubiblog)。

こうした開発当時のエピソードに触れて、一部の海外メディアの中には、ノートルダム大聖堂の再建にあたっては『Assassin’s Creed Unity』のモデリングデータが“思いがけない助け”となるのではないかと伝えるところもある(SFGate80 level)。ただ、一見非常に精巧に再現されている同作のノートルダム大聖堂だが、細かく見ていくと実際のものとは異なる部分も多い。

Caroline Miousse氏によると、たとえば今回の火災での焼失を免れたバラ窓と呼ばれる有名なステンドグラスや、巨大なパイプオルガンは著作権で保護されているため、同作ではあえて別のデザインに作り変えられている。また、ゲームプレイにおいてプレイヤーに楽しいと思ってもらう必要があったため、大聖堂内部の構造も、プレイヤーをうまく導くよう手を加えているという。上に掲載した現実とゲーム内のノートルダム大聖堂の比較映像でも、細かい部分に多くの違いがあることに気づくだろう。

ノートルダム大聖堂には、過去の修復作業で使用された設計図や、歴史家のAndrew Tallon氏が現地で大聖堂全体をレーザースキャンした誤差5mmというデータ(National Geographic)など、より正確な資料が存在するため、現実的な話としては『Assassin’s Creed Unity』が再建に利用される可能性は低そうに思える。

それでも、Caroline Miousse氏らが『Assassin’s Creed Unity』にて再現したノートルダム大聖堂において、素晴らしい仕事を成し遂げたことには変わりはない。興味のある方は、同作をプレイしてその雰囲気やスケール感を体験してみてはいかがだろうか。『Assassin’s Creed Unity』は、PC(Steam)/PS4/Xbox One向けに販売中だ。

【UPDATE 2019/4/18 0:10】

Ubisoftは4月17日、ノートルダム大聖堂の火災を受けて、その再建のために同社として50万ユーロ(約6320万円)を寄付すると発表した。また『Assassin’s Creed Unity』のPC版を、本日から4月25日16時までの1週間のあいだ無料配布するとのこと(関連記事)。