Unityが新料金システムは「料金面でほとんどの開発者に影響はない」と再々説明。『Rust』や『Slay the Spire』開発者らが“信頼失墜”として怒る中説明に奔走

 

Unity Technologiesは9月12日、ゲーム開発プラットフォーム「Unity」について、各提供プランの利用料金に加えて、ゲームのインストール数を基準とする「Unity Runtime Fee」を2024年1月1日から導入すると発表。これを受けて、Unityを利用するゲーム開発者は困惑や不満をあらわにしている。

Unityから別のエンジンに移行すると表明する人気作品の開発者も続出するなか、Unity Technologiesは9月14日、公式Xアカウントにて声明を投稿。「Unity Runtime Fee」の仕組みについて、各所に散らばっていた情報をまとめるかたちで改めて説明している。


発表後すぐさま物議を醸す

Unity Runtime Feeは、利用者が開発したゲームがエンドユーザーによってダウンロード・インストールされた回数を基準として適用。ゲームの過去12か月の収益が最小しきい値を超えており、かつ累計インストール数が最小しきい値を超えている場合、さらにインストールされるたびに規定の料金の支払いが求められる。Unity TechnologiesはUnity Runtime Feeの導入について、Unityの利用料金の値上げであると認めつつ、実際に支払いが発生する利用者は全体のごく一部だと説明している(関連記事)。


一方でこの発表後には、Unityを利用するゲーム開発者から非常に多くの反発を招くこととなった。導入を撤回するよう求めたり、今後Unityの使用を避けることを検討したりといった反応が見られる。たとえば宇宙人狼ゲーム『Among Us』の開発元Innerslothや、カルト教団運営&アクションゲーム『Cult of the Lamb』の開発元Massive Monsterなどが本件に関してコメント。今後Unityの使用を避けることを示唆していた(関連記事)。


相次ぐ脱Unity表明

さらにその後も“脱Unity”を掲げる人気作品の開発者・開発元は後を絶たない状況にある。サバイバルゲーム『Rust』の開発元Facepunch Studiosの創設者Garry Newman氏は、声明を投稿。同氏は、Unity Runtime Feeによって増加するコストは大きな問題ではないと前置きつつ、問題は信頼の失墜にあると強調。プランの利用料金を支払いながら長年エンジンを利用し続けていた開発元に、Unity Technologiesからの何の相談も警告もなく、同意のないまま新たな料金体系が実装されたことを厳しく批判した。また『Rust』の次回作は、確実にUnityでは制作されないだろうと綴っている。

デッキ構築ローグライク『Slay the Spire』開発元Mega Critも声明を投稿。同スタジオでは、2年以上にわたってUnityを用いた新作の開発がおこなわれていたという。そうした中で発表されたUnity Runtime Feeは「遡及的」であり、開発者にとって有害なうえ信頼を裏切るとの見解を示し、批判している。Unity Technologiesは、Unity Runtime Feeの対象作品かどうか判断する際には、2024年1月1日以前の累計インストール数や収益も参照されると説明していた(現在は更新済み)。この点が遡及的であるという見方だろう。


さらにMega Critは、Unity TechnologiesがGitHubで公開していた利用規約(Terms Of Service・TOS)を削除した点も批判。Unity Technologiesは以前、利用規約が更新された場合、更新後の規約は最新年度バージョンのUnityに適用されると規定していた。そのため更新後の規約にユーザーが不利になる条件がある場合、更新前の利用規約を用いるためにUnityを最新年度のバージョンにアップデートしないという選択肢が用意されていた。

そうした背景もあり、ユーザーが更新前の利用規約を確認できる、いわばバックナンバーとして旧版の利用規約がGitHub上で公開されていたわけだ。しかし利用規約が公開されていたGitHubページは告知なく閉鎖。さらに上述したような、Unityのバージョンの違いによって適用される利用規約が変わるといった条項も削除されたことが報告されている

Mega Critはそうした変更が完全に元に戻され、利用規約の信頼性が回復しない限りはUnityから新たなエンジンに移行すると表明。すでに新作の開発に膨大な時間と労力が注がれているそうだが、現状のままではUnityでの開発を断念する方針のようだ。


Unity側の“再々説明”

人気作を手がける開発元がUnity Runtime Feeの導入を厳しく批判し、続々と“脱Unity”を掲げていることを受けてか、Unity Technologiesは公式Xアカウントにて声明を投稿。Unity Runtime Feeに寄せられた懸念に回答する内容になっており、これまで公式フォーラム上や海外メディアを通じて明かされてきた情報がまとめられ、一部が調整されているかたちだ。

同社は、Unity Runtime Feeを支払うことになるのは一部の成功を得たメーカーに限られるため、90%以上のクリエイターは影響を受けないといった見解を強調。同一デバイスでの再インストールや、海賊版などの不正なインストールに対してはUnity Runtime Feeが課されないことなどが今回の投稿でも説明されている。また以前の説明から変更された点としては、Web上で動作するゲームやストリーミングで提供されるゲームについても、インストールによる支払いは発生しないとのこと。

そのほか、公式フォーラム上でも複数のFAQが更新され、説明が変更・調整されている。Unity Runtime Feeは発表以降、ユーザーの懸念に対するUnity Technologies側の説明が変わることもあり、さらに混乱を招いている状態だ。公式フォーラムや海外メディアを通した声明など、説明がおこなわれる媒体も統一されておらず、仕組みについても疑問の声が寄せられる状況にあった。今回、公式Xアカウントで改めて一連の説明がまとめられた格好だ。

Unity Technologiesが強調しているように、Unity Runtime Feeを支払うことになるのは一部の成功を得たメーカーに限られ、現状ほとんどの開発者には影響はない。またFacepunch Studiosのように、新たに発生する支払いそのものに大きな問題はないとするスタジオもある。一方で利用者の意志を確認しないかたちで突然発表された点は、利用者の信用を大きく損なっているようだ。かねてよりひっそりとおこなわれていた利用規約周りの変更もあわせ、引き続き説明が求められるところだろう。