ネパールのカトマンズ・ポスト誌は11日、ネパールの電気通信規制機関であるNepal Telecommunication Authority(以下、NTA)が、ネパール国内すべてのインターネットサービスプロバイダ、モバイルサービスプロバイダに対して『PUBG』を禁止するよう指示したと報じた。
前日には、ネパールの首都圏犯罪課(MPCD)が『PUBG』の禁止を求め、カトマンズ地方裁判所に公益訴訟を起こしていた。MPCDのDhiraj Pratap Singh上級捜査官は、プロバイダが『PUBG』禁止命令を遵守しない場合「実力を行使する」と語っており、ゲームプレイに関連した人物は逮捕される可能性がある。
Singh上級捜査官は『PUBG』によってゲームプレイヤーの攻撃性が強まることに懸念を示している。ネパール当局は精神科医と相談し、海外で「衝撃的な事件」の事例を目撃したとしている。弊誌既報の通り、インドにおいて残念な事件や事故が相次いでおり、Singh上級捜査官の発言はそれらを示唆したものと思われる。
ゲームとプレイヤーの攻撃性に関しては、長年にわたって研究が続けられているが、いまだ科学的な根拠はない。しかし、ゲーム依存症については話が別だ。世界保健機関(WHO)は昨年、ゲーム依存を「ゲーム障害」として疾病分類に追加している。ロイターの取材に対し、NTAのSandip Adhikari副所長は禁止の理由について「子どもや10代の若者にとって中毒性があるから」だと述べている。
ゲームの中毒性に関する懸念は、インドやネパール以外の国でも高まりつつある。先日、英国のヘンリー王子がロンドンのYMCAのイベントで『Fortnite』などのサバイバルゲームは「中毒のために作られた」と発言し、話題となった。子どもや若者に対して、SNSや一部ゲームを禁止すべきだと呼び掛けたヘンリー王子に同意する声もある。英国では過去にもサウサンプトンFCのラルフ・ハーゼンヒュットル監督が、選手たちのゲーム依存を「アルコール依存症や薬物中毒と同じだ」と発言し、選手の保護を訴えたことがある。
ネパールでは幸い、まだ痛ましい事件や事故が起きたわけではない。しかし『PUBG』や『Fortnite』への風当たりは世界中で次第に強くなっている。WHOがゲーム障害を病気であるとした以上、インドやネパールに続く国が今後も出てくる可能がある。ゲーマーが出来ることは、プレイに熱中するあまり日常生活を逸脱しないよう、普段から心がけることだろう。ゲームで生き延びても、実生活で死んでしまっては本末転倒なのだから。