ソニーがTake-Twoの買収を検討しているという噂話は、ソースの誤引用から始まった

 

ソニーがテイクツー・インタラクティブ・ソフトウェア(以下、Take-Two)の買収を検討しているという噂話が3月13日、Game InformerBusiness Insiderといった複数の海外メディアにて報じられ始めた。『GTA』『レッド・デッド・リデンプション』シリーズなどで知られるRockstar Gamesや、『NBA 2K』『Borderlands』シリーズなどの販売を手掛ける2K Gamesを傘下に持つTake-Twoがソニーに買収されるというのは、事実であれば業界を揺るがすビッグニュース。そういうわけもあって、話はみるみるうちに広まることに。だが結論として、この買収話は明確なソースの無い曖昧模糊とした噂話に過ぎなかった。

各メディアが引用している情報のソースを追っていくと、 MarketWatchという投資家向けの市場情報を発信するウェブメディアに行きつく。Wall Street JournalやBarron’sと同じDow Jones Media Group系列のサイトだ。Take-Two買収に関する記載は、米国の投資市場動向をデイリーで追う「Market Snapshot」のコーナーにて確認できる。共同執筆者のSue Chang氏はダウ・ジョーンズ経済通信の韓国ソウル局長を務めていたレポーター。サイトおよび執筆者ともに、噂話の出所として個人ブログやフォーラムよりも信頼性は高い。

Image Credit: ロイター

MarketWatchの記事内では、「Take-Two買収に向けた議論が、ソニーの取締役会レベルで進んでいるという噂により、Take-Twoの株価が4.7%上昇した」と記載されていた。買収にあたってのTake-Twoの企業価値は1株130ドル前後と見積もられているとし、情報のソースとして北米の投資会社Wedbush SecuritiesのアナリストJoel Kulina氏の名を挙げていた。

だがGameSpotGameIndustry.bizがJoel Kulina氏に直接問い合わせたところ、MarketWatchによる誤引用であるとの回答が返ってきたという。またKulina氏が関係者向けに送信したというメールの件名には「Take-TwoのM&A話が広まっている ソース無し 未確認情報」と書かれていたとし、Kulina氏自身、投資デスクで働いている中で耳に入ってきた、出所不明の噂話に過ぎないとコメントしている。MarketWatchの記事執筆にあたり情報収集を行っていたChris Mathews氏も、Kulina氏のメール以外でTake-Twoの買収話を聞いたことはないと、GameIndustry.bizの問い合わせに対し回答。またTake-Twoの株価上昇が始まったのはKulina氏のメールが送信される前であるとも述べている。

Take-Twoの株価がこのタイミングで大幅に上昇した原因のひとつとしては、Gearbox Softwareが3月12日にSNS上で投稿したティザー画像が挙げられるだろう。このティザーは『Borderlands 3』に関する発表を予告したものだという見解が広まっており、同シリーズの販売元2K Gamesならびに2K Gamesの親会社Take-Twoの投資家からも注目が集まったというわけだ。また同社の株価は昨年10月から下落傾向にあり、単にそろそろ持ち直す時期だったという可能性もある。

仮にソニーが時価総額100億ドルのTake-Twoを買収したとしても、PlayStation以外のプラットフォームでも作品を販売しているTake-Two傘下のフランチャイズの扱いには困るだろう。基本的にはソースの不確かな噂話として葬るべきだ。ただ情報源が曖昧模糊とした噂話でも、インパクト次第では急速に広まっていくこともあると示す事例にはなった。

【UPDATE 2019/03/15 9:50】
ソニーは海外メディアVentureBeatの問い合わせに対し、「どこから始まった噂か分からないですが、そのような計画はございません」と回答している。