GoogleのCEOであるSundar Pichai氏は、2019年第4四半期 収支報告会にて、Google Playの取引手数料を引き下げる予定がないことを明らかにした(GamesIndustry.biz)。業界では、プラットフォームホルダーは、すべてのゲームやアプリなどの購入による売上の30%を取引手数料(ロイヤリティ)として確保し、残りの70%を開発者が得るという形式をとるのがスタンダードとなっている。Google Playも同じく、30%のロイヤリティを得ている。「支払い期間が 12 か月を経過した定期購入者については、アプリやアイテムの取引手数料が 15% に減額される」といった特別措置も2018年1月より開始されているが、単発の取引は原則的に30%の取引手数料が要求されるシステムだ。
しかし昨年、『フォートナイト』をさまざまなプラットフォームでリリースしたEpic Gamesが、従来のスタンダードを大きく引き下げる「12%の取引手数料」を掲げるEpic Games ストアを開設した(関連記事)。同社CEOのTim Sweeney氏は、オープンプラットフォームにおいては、決済プロセスやダウンロード帯域、顧客サービスなどのコストとして売り上げの30パーセントを要求するのは不均衡であると指摘しており、その結果12%という取引手数料を掲げたストアを開設。Epic Gamesの動きを受け、DiscordのPCゲームストアも取引手数料を10%に引き下げるなど、長年30%で定着していたプラットフォームの「取引手数料」に疑問が投げかけられるようになった。
そうした背景もあり、Pichai氏に取引手数料の引き下げについて問う質問が寄せられたのだろう。Pichai氏は、Google Playでは大規模でのオペレーションを前提としているとし、「何千ものデベロッパーが、世界中にいる何十憶ものAndroidユーザーに向けて、安全かつ安定してゲームを配信できることを私たちに期待している」と、大規模なネットワークを運営していることを強調。
そして「そのため私たちは、デベロッパーの総合的な使用体験を継続的に担保するため、そして高いエンゲージメントを実現するため、インフラに多額の資金を投資しています。そこでは価値交換が生じていると思うのです。だからこそ、(30%というロイヤリティは)業界スタンダードとして定着しているのです。よって私たちは、今後も今までどおりの方針を貫いていくと思います。」と、取引手数料はしばらく変更する予定がないことを示唆した。ただし一方で、「マーケットの変化に合わせて適応していく」とも話しており、30%の取引手数料は場合によって変更される可能性があることも含ませている。
Google PlayがプリインストールされているAndroidは、iOSと比べてオープンなつくりが特徴。Epic GamesはAndroid版『フォートナイト』を、Googleが提供するGoogle Play ストアを利用せず、自社の公式サイトから直接ユーザーに配信している。Amazonアプリなども同様にGoogle Play外での運営や決済をおこなっており、こちらの取引にはGoogleによる取引手数料は含まれない。一方でGoogle Playという(ある程度は)守られたプラットフォームの“外”でapkなどをダウンロードすることによるリスクなどは存在していると指摘する声は根強い。
GoogleやAppleはこうした取引手数料により莫大な利益を得ていることを考えると、そうそうその手数料の割合を引き下げるとは考えづらいだろう。ただ一方で、プラットフォーム間での暗黙の了解だった「30%」という数字はすでに可視化され、その可否が論じられる段階にある。まだその影響はPCゲームプラットフォームに留まるものであるが、もし今後どこかの既存プラットフォームがアクションを起こせば、コンソールやモバイルのプラットフォームにも影響が及んでいくかもしれない。