宇宙戦艦MOBA『Fractured Space』大型アップデート第4弾「Phase 4」が10月3日に実装された。宇宙の火炎放射器で敵を焼き尽くす新型戦艦Furionが今回の注目ポイントだ。また、エンドコンテンツとプレイ報酬システムを一新するとともに、艦載機の戦闘力学をリワークなど、変更点は多岐にわたる。本稿は前回記事から続く過去数か月のマイナーアップデートも含めて要約する。総評は、競合作の宇宙戦艦シューター『Dreadnought』への対抗意識が、よい方向に働いたものとなったといえる。
宇宙の火炎放射器
新型戦艦「Zarek Furion」は、小惑星産業など鉱業重機のトップメーカーZarek社が満を持して送る中量級ダメージディーラーだ。これまでの同社ラインアップは、戦闘力を犠牲に、耐久性、生存性、作戦継続性を重視するものであった。Furionはそのイメージを覆すDPSの高さを売りにしている。主砲は射角が狭いものの高DPS。副砲の火炎放射器は文字通り近距離の火力をたたき出す。現状でピック率が高い「Titan Interceptor」「USR Brawler」の特徴をあわせもつロールである。スキルも推進力ブースト、ミサイル、敵アーマーを削るドローンと、攻撃に特化しておりロールが明確である。「Titan Ages」に並ぶ人気戦艦となろう。
4月7日に追加された準新型艦「USR Endeavor」は、機動力とフィールドコントロールを備えもち、軽量防衛艦という新戦術をもたらした。主砲、装甲は軽量級ゆえ貧弱だが、自動で敵を攻撃する砲台を3機射出する。いわばセントリーガンを設置する工兵である。戦線の維持、ガンマバトル、敵ジャンプポイントへのトラップなど、砲台の配置次第で能動的に防衛する。これは敵チームをかき乱し、疲弊させ、侵攻を食い止めるという意味だ。推進器やステルス機構など先進技術を追求するUSR社らしい実験艦といえよう。
弊誌レビューとアップデート紹介記事で述べたドラフト制ピックは、6月15日に実装された。2-2-1ピックで敵艦へのアンチを出しやすく、チームワークはさらに奥深いものとなっている。推奨構成としてタンク、ヒーラー、ダメージディーラーの有無を表示したことで、アンバランスなロール構成がほとんどなくなった。ここ数か月はゲームがはじまる前からチームが崩れる「萎え落ち」を目にしていない。
ゲームルールに変更はないが、操作量の軽減と視認性の向上についてはブラッシュアップを続けている。Phase 4では艦載機のシステムを一新した。攻撃指示をうけていない艦載機は自艦に追従しながら待機し、修理・補給する。対爆撃機の戦闘機がつねに迎撃するようになり、出し忘れをふせぐとともに艦載機をもたない戦艦との差異をつけた。他にも初心者にやさしいオート対空砲火、ターゲットアイコン直下に武器クールダウン表示、攻撃命中時のアーマー効果演出など、戦艦のパフォーマンスを引き出す改良が施されている。
エンドコンテンツとプレイ報酬の一新
『Fractured Space』の現状の問題点はプレイヤーの減少にある。これはマルチプレイゲームで避けられない宿命だ。F2Pモデルの多くは、サービス開始の1か月目を境に激減し、あとはなだらかに減少していく。昨年9月サービス開始の本作も上記の推移をたどっており、プレイ人口の減少からマッチメイキングの品質や待ち時間で問題が出ている。
Phase 4ではゲーム外の環境にテコ入れし、新規プレイヤーの定着をねらうコンテンツに主眼を置いた。一番大きな要素はプレイ報酬である。毎日更新のクイックミッション、毎週更新のウィークリーミッション、そして継続ミッションのキャンペーンと、3系統を用意した。毎日少しずつ進めてもよいし、週末たっぷり遊んでもよい。プレイヤーの生活スタイルにあわせたものといえよう。また、ウィークリーミッションの一部とキャンペーンはPvPでのみカウントされる。これは対戦人口の増加を意図したものである。
ゲーム内ポイントも使い道を一新した。戦艦を強化するクルー、インプラントをクレジットで購入できる。以前用いていた「DNA」は廃止され、ゲームに用いなくともクルーのレベルをあげる「エリートXP」になった。将来的には戦艦にも使えるようにする計画だ。プレイ報酬の目玉であるドロップポッドは、入手時にレアリティが決まり、開封すると3アイテム入手する。入手に要する手数は以前と同様~1.5倍ほどで、実質は報酬の量を強化した。
ゲーム内ポイントの一新にあわせ、戦艦のクレジット価格は変更がはいった。使い勝手のよい初心者用戦艦はより安く、とがった性能をもつ上級者用戦艦はより高くしてある。新規プレイヤーの戦艦バリエーションを増やすとともに、高額戦艦のアンロックを無料プレイのエンドコンテンツとしたのが狙いだ。
なお、弊誌過去記事で紹介したとおり、クルーのレベルとインプラントは戦艦性能の微調整程度でありP2W要素ではない。戦艦のバランスについても発売当初より細心の注意をもって施してあり、性能差や個人技ではなくチームワークで戦うMOBAのゲーム性は損なわれていない。ピックで迷ったときは最初の無料戦艦「USR Pioneer」を使うことを勧める。
競合作との比較
サービス開始の昨年は唯一無二のゲーム性であった『Fractured Space』。だが、今年は競合作の宇宙戦艦シューター『Dreadnought』のベータテストがはじまった。チームエリミネーションの「わかりやすさ」。有料ポイントやプレイ時間で強力な武装・戦艦を得る「続けやすさ」。上級者が初心者マッチに意図して参加できる「楽しみやすさ」。これらで人気を博している。
プレイ人口だけでなく、絵のけれん味でも比較されるようになり、本作も見栄えのアップデートに乗り出した。スカイボックスを一新するとともに光源に恒星色を加え、より鮮やかな場景をつくりあげている。ゲームロビーのハンガーも一新され、1kmを越える戦艦のサイズを比較対象できるようガシェットで飾り立てているのは見物だ。
また、競合作にはないMOBAならではの高度なゲーム性を、わかりやすく提示するよう細部を洗練した。ホームベースの砲台を破壊して戦艦1キル分のリソースが得られるようになり、ベース攻撃のメリットを強調している。キャプチャーに特化した高機動戦艦に「機動」というロールを追加し、ゲームルールがチームエリミネーションではないことを示したのはありがたい。
前章で述べた「ゲームの待ち時間」についても改善がある。プレイヤー対AIのPvEでは、プレイヤー側にもAIを導入し、最小3人でもプレイできる。これは「クイックプレイ」という名で、ゲームの雰囲気をカジュアルに楽しみたい層へ向けたものである。PvPではプレイヤーレートの仕切りを撤廃し待ち時間を短縮した。今回のアップデートが成功を収め、新規プレイヤーが定着すれば、マッチメイクの内容は改善されるだろう。
以上が大型アップデート「Phase 4」の要約だ。さらに詳しい情報を知りたい方はSteamのニュース欄を読まれたし。過去数か月にわたる精力的な更新は、やはり競合作が登場した危機感によるものであろう。根底にあるMOBAルールと宇宙戦艦シューターの両立。課金勝利を廃したチームワークプレイ。それらコアコンセプトはそのままに、悪い部分を直す「改修」という意味合いが強い。
サービス開始から今日まで心から楽しんでいるプレイヤーとしていわせてもらえるなら、サービス開始1周年の今回を正式リリースだと考えてほしい。これからは手にするプレイヤーはもちろん、休暇中の艦長、ゲームをインストールした予備役兵のゲーマーにも、リニューアルした宇宙戦艦MOBA『Fractured Space』を手に取ってもらいたい。グッドハンティング、キャプテン!