長編フリーゲーム『ASTLIBRA ~生きた証~』紹介&インタビュー。14年の開発期間によって描かれる、過去改変と戦いの果て

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ゲームが完成するまでの道のりは、長く険しい。商業作品なら、あらゆる困難を予算と人材によって乗り越え、最初から完成までの算段が立っているかもしれない。しかし、小規模なチームや個人、非商業の作品においては、開発者のモチベーションだけが開発を推し進める動力源であることもままあり、膨大な作業量の前に多くの作品が飲まれていく。主に開発中止になることを指す言葉として、インターネット上には「エターなる」という言葉があるほどだ。特に、短編と比べて物量の多い長編は、あらゆる面から完成させるのが難しいと言われている。だが、中には数年から十数年の歳月をかけ、高いクオリティを保ったままゲームを完成させる傑物も存在する。

今回紹介するフリーゲーム『ASTLIBRA ~生きた証~』は、KEIZO氏が約14年間の開発期間を経て完成させた、長編2DアクションRPGだ。なお、本稿は前半が紹介、後半がKEIZO氏へのメールインタビューとなっている。

本作の主人公は、幼少期に離れ離れになってしまった幼馴染の少女を探しながら、ギルドで働く青年である。彼は、かつてとある村に住んでいた。しかし、8年前に故郷の村に魔物が押し寄せ、主人公と幼馴染の少女も襲われてしまう。主人公は、巨大なドラゴンの攻撃により気を失ってしまうが、気づけば無傷の状態で見知らぬ場所にいた。

そこは、辺境と呼ばれる人も魔物もいない地域。一緒に居たはずの少女の姿はなく、故郷の場所もわからない。少女や村のことがどうしても気になる主人公は、喋るカラスのカロンと共に、辺境からの脱出を目指して長い旅にでる。そして8年後、ようやく人里に辿り着いた主人公とカロンは、偶然から運命を天秤にかける過去改変アーティファクト「アストレイアの天秤」を入手。幼馴染の少女を探しながら、ギルドの一員として訪れる先々で、天秤に翻弄されることになる。そして、やがて世界の謎に関わる大きな戦いにも巻き込まれていく。


1章開始時の主人公は、8年間の長旅を歩んできたものの、魔物との戦闘経験はなく技術も肉体も未熟だ。そのため、まずは武器を使った攻撃と盾を使ったガード、移動とジャンプによる攻撃の回避、2Dアクションとして基本的な動作によって魔物と戦いを繰り広げていく。しかし、魔物たちと戦っていく上では、基本的な動作だけでは心許ない場面もある。そこで、本作では敵や状況にあわせてカロンの魔法をセットする。敵のHPを表示する魔眼、2段ジャンプが可能になるエアライド、攻撃力を3倍にする代わりに一撃即死のベルセルク、スタミナを一定量消費して敵の攻撃を防ぐオートガード、敵の弾を反射するタタミリフレクトなど、装備品をマスターして魔法を習得し、強力な魔法によって主人公の動作を拡張していく。カロンの魔法にはそれぞれコストが設定されており、主人公の育成度合いによってセットできる魔法の数や組み合わせが制限される点も特徴だろう。


また本作には、経験値を得て成長するレベル、スタミナを消費して発動する憑依スキル、フォースを消費してステータスを底上げするグロウ、アイテムの組み合わせによってオプションを得るアストレイアの天秤など、多彩な成長システムが搭載されている。これらの成長要素と旅先での経験や魔物との戦闘の繰り返しによって、青年はやがて歴戦の戦士へと成長していくわけだ。そんな主人公に対して、各章ごとに新しい敵やボスが立ちはだかる。ボスには、それぞれ固有のパターンが用意されており、魔法やスキルを活用しつつ対策を考えて立ち回る、攻略しがいのあるバトルが展開される。さらに隠しステージと隠しボス、5段階の難易度も導入されているため、高難易度に挑みたいプレイヤーにも応えてくれている。

長編RPGとして妥協のない作りになっている本作。前述のように、ストーリーの進行にあわせて新しい敵が登場するが、さらにアイテムや装備品も各章ごとに新しいものが導入されていく。さらに装備品には、敵撃破時に確率で出現する金と銀の宝箱から入手できるトレジャーハンティング的な要素も。グラフィックについては、最後まで一定の品質が保たれており、作品全体に統一感がもたされている。膨大な作業量と素材、14年の製作期間によって、豊かな世界が表現されているわけだ。

公称プレイ時間は40時間。ゲーム序盤こそ、主人公のアクションの少なさからシンプルな印象を受けたものの、成長によって選択肢が増える中盤以降には、シナリオの展開も相まって熱いゲームプレイが待ち受けていた。多彩な成長要素と、攻略しがいのあるボス戦、長編RPGらしい熱さのあるストーリーが本作の魅力となっている。


本作を開発したのは、個人開発者のKEIZO氏だ。同氏は、これまでにパズル要素を備えたRPG『MAGICUS』や本作の外伝『ASTLIBRA ミニ外伝 ~幻霧の洞窟~』をリリースしてきた人物。『ASTLIBRA ~生きた証~』は、2作品を開発していた期間などもありつつ、開発開始から約14年間の歳月を経て完成に至ったそうだ。ゲームプレイ中には、長編RPGとして妥協のない作りや物量も感じられ、開発期間の長さもある種納得できる。しかしそもそも同氏はなぜ開発を始め、14年をかけて長大な作品を完成させられたのだろうか。作品に関する内容も含め、同氏にメールにてインタビューを行っただいたので、以下ではその内容をお届けしよう。



───よろしくお願いします。『ASTLIBRA ~生きた証~』の開発を始めたきっかけについて教えてください。

KEIZO氏:
15年ほど前に(2006年頃)、自分のジャンルの好みが狭かったせいもあり、好みのジャンルである2DアクションRPGのゲームが鳴りを潜めた時代がありました。好きなジャンルのゲームをやりたくて仕方ない、でもやりたいジャンルのゲームがリリースされない。なら自分で作るしかない、というところから2DアクションRPGの開発が始まりました。

───開発を始めた当時、目指していたのはどのようなゲームでしたか。

KEIZO氏:
その時までに遊んだアクションRPGは、だいたい10時間くらいの短いものばかりでした。でも、もう少し長いプレイ時間のものが遊びたかったので、長いストーリーのものを作れたらいいなと思い、開発を始めました。ただ、これまでゲームを作った経験はなかったので、
あとから無謀だったことを思い知りましたね。

───アクションRPGとして、こだわったポイントはありますか。

KEIZO氏:
純粋なアクションではなく、アクションRPGが好きな理由があります。キャラクターを成長させれば、自分のようにアクションゲームが下手でもクリアできる。もしくは、最後まで楽しめることです。アクションゲームは、だいたい後半になるにつれ難しくなり、腕次第で最後まで遊べない事がありました。それが辛かったので、『ASTLIBRA ~生きた証~』は「とにかく成長させれば進められる」「後半になる程辛い戦いが減る」を意識して作りました。

こだわったと言えるのは、純粋なアクションゲームに見られる「敵の行動に対して決まった切り返し方があり、それを的確に再現して倒す」ようなシーンをなるべく作らないようにした所です。プレイヤーが、プレイさせられていると感じてしまわないように、自由に敵を殴って倒せるバランスを意識しました。

───当時好きだったアクションRPGを教えてください。

KEIZO氏:
開発当時ではなく、それまでに好きだったアクションRPGを挙げると、有名どころでは『ピラミッドソーサリアン』『ソウルブレイダー』『天地創造』『イースIII 』などです。それからマイナーですが、特に雰囲気が好きだったのは『時空勇伝デビアス』*というゲームです。背景のグラフィックや、村と城、買い物要素もあり、なんとも言えない暗い世界観が好きでした。ファミコンのカセットについてくるはずのヒントの地図を持っていなかったため、クリアできませんでしたが、もしゲームを作るなら、こんな雰囲気にしたいと思っていました。

*『時空勇者デビアス』:1987年にナムコから発売されたファミリーコンピューター用2DアクションRPG。

───開発段階で苦労したスキルなどはありますか。このスキルを使ってみてほしいなど、イチオシのスキルがありましたら教えてください。巷ではタタミリフレクトが強力だと言われていますが(笑)

KEIZO氏:
スキルを作る作業自体、苦労より楽しいが勝っていたので、スキルについては特に苦労したエピソードはありません。イチオシの技は、風憑依技3段目の刹那です。飛ばせる敵を、何度も打ち上げ打ち下ろしながら巻き込んで最後に吹き飛ばすのが楽しいです。

タタミリフレクトは完全にバグです。プログラミングのせいで修正部分がわかりづらかったのですが、V1.24でやっと修正出来ました。


───システムで思い入れのあるものはありますか。

KEIZO氏:
思い入れのあるものが多いですね。天秤のシステムは完全にオリジナルのものですが、アイテムの数が多い本作において、使いみちのないシステムにも意味をもたせようと作ったのを覚えています。武器の熟練度のシステムは、当時プレイしてくれた人との掲示板でのやりとり中で寄せられた「せっかく装備が多いのに、強いものしか使わないのは寂しい」という意見から作られたものでした。

GROWのシステム内には、キャラクターを強化しすぎないような仕組みが含まれています。一時はゲームを年単位で、章ごとに公開していました。そのため、次の章が出るまでに鍛え過ぎた人が、楽になりすぎないように、章単位でのロックがかかっているのです。思い返すと、それぞれいろいろな思い入れがありますね。

───当時は、今のようにゲームエンジンが手軽に利用できるわけでもなく、ゲーム開発のハードル自体が今よりさらに高い状態だったと思います。本作には、DirectXライブラリが採用されておりますが、KEIZO様はプログラム自体には明るかったのでしょうか?

KEIZO氏:
プログラミングどころか、パソコンもほとんど初心者でした(今もですが)。なので、『ASTLIBRA ~生きた証~』のソースコードは、その道の人が見たら滅茶苦茶です。動きさえすればよい、を積み重ねて出来上がったものです。結果的に、バグが多く修正も大変な感じになってしまいました。

───『ASTLIBRA ~生きた証~』は、2度の開発中止もありつつ14年間開発が続けられてきたとうかがいました。長期間の開発を経て、ゲームを完成させられた原動力はなんだったのでしょうか。

KEIZO氏:
多数の理由が思いつきますが 、そのうちのひとつとして、「ここまで作ったのにもったいない」という気持ちがありました。システムから作ったので、すべてが無駄になるのが嫌で、余計にそう感じたんだと思います。

次に、個人制作ゲームが完成しない姿を見てきたことです。世の中に、個人でゲームを作る人が次第に増え、その様子をSNSでも目にするようになりました。しかし印象的だったのが、開発中のほどんどのゲームが最後まで作り上げられず、断念されてしまう姿でした。『ASTLIBRA ~生きた証~』も、このままでは開発中止になってしまう。けれど、開発中止にはしたくないという気持ちが、完成を強く後押ししたと思います。


───『ASTLIBRA ~生きた証~』完成発表ツイートが反響を呼んでいましたね。プレイヤーからの反応で意外だったもの/嬉しかったものはありましたか。

KEIZO氏:
意外だったのはやはり、難しいという意見が多かった事です。自分がコツコツ育成してから進めるのが好きなタイプだったので、あまり育成せずに進んでいく人が多かったのは、予想していませんでした。反応で嬉しかったのは、先に公開した外伝『ASTLIBRA ミニ外伝 ~幻霧の洞窟~』よりも本編『ASTLIBRA ~生きた証~』のほうが面白かったという意見です。本来やりたかったのはこちらの方だったので、自分と同じ感性の人に喜んでもらえたんだと思えました。

───僕もあまり育成せずに進んだタイプでしたが、苦戦した部分も込みで楽しいゲームでした。実は、育成をあまり進めていないパターンも想定されていたのではないでしょうか。

KEIZO氏:
アクション系の作品において、上手い人と苦手な人でプレイの感想に大きな開きが出ることが、創作界隈ではよく議論されます。その点『ASTLIBRA ~生きた証~』では、育成することによって、プレイヤー毎に個々で難易度を調整してもらう考えを持っていました。上手い人は、育成をあまりしなくても丁度よく。そうでない人は、育成をガッツリすることで、同じように進められる。そういう調整を目指してみました。

しかしリリースしてみると、育成具合による調整が単純に個々のプレイスタイルの違いで難易度が違って見えてしまい、サクサク進みたい人にとっては難易度の高いゲームとして、とらえられてしまったのではないかと思っています。

───これから遊ぶプレイヤーと遊んだプレイヤーに向けて、KEIZO氏の今後についても含めてメッセージをお願いします。

KEIZO氏:
これから遊んでくれる人、遊んでくれた人へ。これ程多くのゲームが世にある中、『ASTLIBRA ~生きた証~』をプレイしてくれてありがとうございます。この出会いも運命の一部、途中でやめるも、最後までやりきるも、その選択に罪はありません。今後も、自分のやりたいゲームを作っていけたらと思っています。自分が老体の為、横になりながら隙間時間に遊べるものがやりたい年頃なので、スマートフォン向けゲームが主体になりそうです。この作品の途中で開発した『MAGICUS』というゲームが、「自分の今やりたいゲーム」を表現できたと思いますので是非遊んでみてください。

───ありがとうございました。


KEIZO氏の14年間の奮闘の証でもある『ASTLIBRA ~生きた証~』は、フリーゲーム夢現にて無料公開中。公式サイトでは、投げ銭も受け付けられているほか、『MAGICUS』はPC(DLSite)/iOS/Android向けにそれぞれ330円/370円/360円でで販売中だ。

以下には、ストーリーに深く触れるネタバレが含まれている。注意してほしい。


















───『ASTLIBRA ~生きた証~』の中で、開発者として気に入っている章はありますか。

KEIZO氏:
5章が好きです。兄と妹、自分の過去との対峙が気に入っています。意外な展開が好きなので、4章も気に入っています。

───終盤のあるシーンに関することついて聞かせてください。

KEIZO氏:
根本的なルールをぼかしたので、わかりづらかったかもしれません。ぼかす事で、プレイヤーに「なんだろう?」という疑問を持ってもらう目的がありました。長くなるのですが、説明します。まず、■■が少し漏らしましたが、本作ではもともとの歴史という一本の大きな木があり、そこから過去を改竄する度に並行世界という枝が分かれその並行世界が増えると、繋がっている大きな木自体に少しづつ影響を与えていきます。

最後、■■■■に「この時のあなたが死んだ場合、また他の時のあなたを待つだけの事」と言われるシーンがあるのですが、過去が変わる度、選択をする度、さまざまな並行世界が生まれ、途中で終わるものもあり(ロールが流れるものもその一つ)、つまり主人公は幾万あるどれかの並行世界から、何度もここに至るまでの運命を繰り返しているのです。■■■■を切った前回のルートでは、■■■に気付かれなかったため、■■■■■■が暴走せず、今回は気づかれたため、このような流れになったのです。3章の■■■に、初めてきた筈なのに名前が記されていますが、それはこの先のルートまでは行ったが、■■を止められず噴火で死んだ並行世界の影響が元の木に刻まれてしまっているという事になります(何度も止められなかった)。

■■がなぜ歴史の改竄を止めようとしているのかというのも、それは自分達が元の歴史の先、他惑星への移住後の歴史にて作られたからで、■■■■計画で発生する並行世界によって元の歴史の移住の可能性が薄くなり、消えてしまうのを防ぐ為に送られてきたからです。最後に■の元へ向かわなかった選択も、幾万も存在し、最後までいけたのは、プレイヤーが操作した時だけ、という考えです。

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なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。