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ディーゼルパンクRTS『アイアンハーベスト』を通じてRTSと出会った筆者。前回の「初級攻略編」では、「エリアコントロール」と「役割の理解」、「前線の意識」の3つを軸にお話してきた(関連記事)。筆者自身、執筆を通じてプレイの外で情報を整理していくと、徐々にスムーズにキャンペーンをクリアできるようになっていった。とはいえ、序盤ほど敗北を前にうろたえるようなことはなくなったものの、理想的な勝利には程遠い状況だ。やりたいことや勝ち筋は見えているのに、思い通りにいかない。そんなもどかしさを抱えていた。 

本稿では、キャンペーン中盤から終盤にかけて抱える「思い通りにならない」を少しでも解消するべく、中級攻略編として、筆者が編み出したテクニックや攻略方法をお伝えしたい。目指すは脱・初心者だ。なお、具体的なメックや兵士をお伝えするうえで、多少のネタバレを含む可能性がある点は留意いただきたい。 
 

 
『アイアンハーベスト』について 

改めて本作を紹介したい。『アイアンハーベスト』は、ドイツに拠点をもつKING Art Games が開発したディーゼルパンクRTSだ。日本ではDLCなどを同梱した『アイアンハーベスト コンプリートエディション』をDMM GAMESが販売。PlayStation 5/Xbox Series X|S版(パッケージ版はPlayStation 5のみ)が10月28日に発売されている。 

本作の舞台は、第一次世界大戦終結直後の架空のヨーロッパ。巨大歩行ロボット「メック」を筆頭に、伝統的な生活とディーゼルテクノロジーが織り交ざった独特の世界観が展開される。なお、キャンペーンの進行に合わせてプレイヤーの扱うユニットもハイテクになっていく。新たな戦術を与えてくれるだけでなく、シンプルにカッコ良いロボットや特有の高度なメカを操る楽しさがある。 
 

 
もどかしさの正体 

ゲーム中盤になると、できることが増える。兵舎建造によるユニットの総数の増加はもちろん、ユニットのもつ役割が広がり、扱えるメックが増える。キャンペーンで起こるドラマの盛り上がりと比例して、ゲームプレイの忙しさも加速していくのだ。すると、徐々にユニットたちが自分の手に負えなくなってくる。せっかく製造したユニットがマップの隅で暇そうにしていたり、とりあえず全部前線に出してしまえと、エンジニアやメディックも最前線に放り出したり。こういったケースに陥ると、ユニットの統制が崩壊してしまい、戦果もどこか釈然としない。難易度イージーであれば許されるが、ノーマルだと極端にクリアに時間がかかってしまったり、レベルの終盤で敗北したりとリスクが大きい。できればスマートにユニットを管理して、綺麗に勝利まで導きたい。 
 

数の暴力で押し切っている様子。正直、これはこれで楽しい。

 
最大限操作を楽にしよう 

まずはコントローラーでスムーズに操作できるようなテクニックをお伝えしたい。限られたボタンで最大限プレイしやすいようデザインされているものの、多くのユニットを扱ううえ、広いマップのさまざまな場所を注視する必要がある本作は、やはりゲームパッドで思い通りに操作するためには少々慣れが必要だ。 

コントローラーでおこなうユニットへの指示出しは、カーソルをユニットに合わせて選択する以外にも、L1/R1(LB/RB)ボタンで画面下部に並んだユニットを切り替えることで選択することもできる。また、主要ユニットは十字キーに割り当てられ、十字キーそれぞれを押すことで瞬時に選択することもできる。○(Bボタン)で「画面内」にあるすべてのユニットを選択し、一度に指示を出すこともできる。 

これを利用して、十字キーに割り当てられた4つのユニットをそれぞれ含む小隊を編成すると便利だ。具体的には、上キー小隊、下キー小隊、といった具合で、「ヒーロー・歩兵・メック」といったバランスの良い一個小隊を作ってみる。これと「画面内すべてのユニットを選択する」を組み合わせると、十字キーそれぞれで小隊にフォーカスし、そのすべてを選択して移動させるといった、スムーズな管理が実現する。ただし、筆者の脳みそはシングルコアなので、2つの小隊を作るだけで手一杯であった。また、拠点となる司令部などへそれぞれの小隊が同時に戻ってきた場合、朝の通勤ラッシュのような混雑になるので、時間をズラして撤退・補給する工夫が求められる。時差出勤だ。
 

南側と西側、それぞれの小隊が同時に侵攻している。実にスマートだ

 
また、マップに広くユニットを展開することで、「視界」の面でも有利になる。マップ全体の地形は見渡すことができるものの、そこに敵ユニットが配置されているかどうかは、自軍が制圧している施設の周辺を除いて、自ユニットが一定距離まで近づかないとわからない。複数の一個小隊をもつことで、より広いエリアの状況を把握できる。視界外から突然襲撃されて慌てるなんてことも少なくなり、安全性が高まるわけだ。 
 

頭に入れておくと便利な機能 

使える機能は全部使っておきたい。まずはアビリティのオート機能だ。ユニットに与えられたアビリティは非常に強力で、大きなダメージを与えるものはもちろん、回り込んだり間合いを詰めたりと、移動などでも有効な手段をもつものもある。特に攻撃に関わるものは、オートにしてしまおう。自分が管理できていない時間にクールダウンが終わってアクティブになっている状態を極力減らし、ダメージを稼ぐのだ。ひとつの戦闘を早く終わらせることは、被弾を最小限に食い止めることにつながる。 

そして、複数の指示を出せるキュー機能は必須級テクニックだ。これはユニットへ指示を出したあとに、R2(RT)ボタンを押しながら指示を出すことで、次の指示を出せるというもの。「この物資を拾ったあとにメックを修理し、その後は戦闘に合流」といった複雑な指示を一度にできる、便利な機能だ。特にエンジニアなど、雑務を多く担うユニットに積極的に使っていきたい。
 

 
さらにキュー機能の応用的な使い方として、「向き」を変えることができる。一般的なメックは背面が弱点となっており、敵に背を向けることは極力避けたい。だがメックに攻撃指示を出した結果、遠くの主戦力に背を向けながら身近な敵を殴り始めるといったことも少なくない。そういう場合は一度引いた位置へ移動させ、改めて敵の方向へ攻撃指示を出すことで、向きを調整できる。メックは攻撃の要であり、失うと大きな痛手となるため、被弾を抑えるために意識しておきたい。 
 

「足並み」を合わせる 

ここからはユニットを用いた戦略に関わる話だ。Wave形式での防衛時、前線を意識すると楽になるというのは、初級攻略編でお伝えした。それをユニットで侵攻する際にも使えれば最強では?というイメージだ。ゲーム内では具体的な数値で示されてはいないようだが、ユニットによって機動力(移動する速さ)は異なる。ライフルマンをはじめとした身軽な歩兵であれば移動は速いし、重厚なエグゾスーツをまとった歩兵や高火力なメックの移動は遅い。それらを混合した一個小隊でまとめて同じ場所へ移動を指示すると、歩兵が先に交戦を始めてしまう場面がある。敵拠点との間で発生する極めて小さな戦闘であれば問題ないが、鉄鉱山や油井など、敵の拠点に攻め入るときは、同じ攻撃目標でも、目標に近づいたら歩兵を少し引いた遮蔽物に配置し、メックにはそのまま向かってもらう……というミクロな指示設定が理想的だ。 
 

 
上手な拠点の作り方 

物語やレベルの後半になってくると、自拠点を根城としつつ、敵の本拠地へ攻め込むことがクリア目標になってくる。つまり、敵の拠点へ侵攻するためにリソースを管理しつつ、自拠点の防御を固めて敵の襲撃をしのぐ必要があるというわけだ。そこで問題になるのが、「どの程度拠点に兵を配置するか」である。これは場合によって異なってくるが、前哨基地2つに歩兵を入れ、メックを2体以上用意しておくことをおすすめする。 

具体的には、ロズヴェト軍であれば「SHM-68”ナカバルニャ“」がかなりおすすめだ。長距離射程をもつ機動力の低いメックを配置することで、だいたいの敵はしのいでくれる。特に“長距離射程”というのが重要で、本拠地に近づく前に交戦が始められるよう意識しよう。また、バッファとして、侵攻部隊に機動力の高いメックやヒーローを入れておくと、万が一の場合すぐに拠点へ駆けつけることができるので便利だ。 

また、戦力の総数上限ギリギリまで歩兵やメックを製造することはおすすめしない。というのも、得体のしれない敵メックや、拠点が襲撃された際など、「あと少しだけ増強したい!」といった対応が難しくなる。具体的には中型メックと小規模な歩兵を作れる「8」程度のゆとりは確保しておきたい。 
 

 
スカーミッシュ、そしてマルチプレイへ 

本作のやりこみ要素はさまざまで、キャンペーンの高難易度はもちろん、「スカーミッシュ」や「チャレンジ」といった要素も用意されている。チャレンジは特定の条件をくぐり抜けるミッションで、スカーミッシュはフリーミッションのようなものだ。いわゆるBot戦のようなイメージで、条件で対角線上に設置されたそれぞれの拠点から、互いの拠点を制圧することを最終目標としたミッションなど、ユニットなどを含めある程度自由に設定して遊ぶことのできるモードだ。4プレイヤーモードなど、キャンペーンとはまた異なる遊びが用意されている。 

純粋な真っ向勝負を楽しめるスカーミッシュは、RTSがもつ別の側面を知ることができる。キャンペーンの敵は基本的に死ぬまで戦い続けるが、スカーミッシュでは一時撤退してくるなど、なかなか手ごわい。「倒す」だけでなく「駆け引き」で勝負してくるのだ。ユニットの引き際や前線の敷き方など、こちらのプレイの参考になることが多いので、一度プレイしてみると新しい発見があるだろう(筆者は新しい発見だらけだった)。特に、試合序盤はこちらが勝っていると思っていたら、中盤以降敵が一気に強大な戦力を蓄えていてあっという間に制圧されるといった、まるでMOBAのような逆転劇は敵ながら感心した。RTS、まだまだ奥が深い。 

また、マルチプレイへの先駆けとしての練習にもなる。RTSというジャンルは対戦マルチプレイも盛んで、それを主目的としているプレイヤーも多い。筆者のような初心者は、まずスカーミッシュでどんな戦い方があるのかを知ると、戦いのイメージがつかみやすい。 
 

 
ここまで、腐っているユニットが出ないように、また、無駄にダメージを貰うユニットが出ないようなユニット管理テクニックをお伝えしてきた。ゲーム理解度が高まっていく楽しさに伴う、思い通りにならないもどかしさと、それを乗り越えようと試行錯誤していく過程は苦しくもあり、とても楽しい。身も蓋もないことをいうと、ここまで述べてきたテクニックを完璧に実施することは不可能だろう。だが、そこで産まれる状況によるランダム性や、わずかでも思い通りになった成長の実感というのが、RTSの面白さの真髄のひとつであると感じた。 
 

 
改めて、「ジャンルの入り口」は難しいものだ。人によって入り口が異なるし、用意されたチュートリアルも、ジャンル玄人にとっては釈迦に説法でありながら、素人にはてんで理解不能だったりもする。本作のチュートリアルは最序盤に操作方法などをゲームプレイに組み込まれた形で知ることになるが、その後は文字と画像での説明に留まっている。新しいジャンル/ゲームとの出会いでそれを咀嚼して自分のゲームプレイに落とし込むという動作は、想像よりも難しく、モチベーションや好奇心の維持が難しくなってしまうこともあるだろう。正直、筆者は本作の最序盤はかなり苦しく、よくわからないままゲームが崩壊していくさまを見ながらうろたえていた。ただ、徐々にやりたいこととやれることが見えてきて、初級編でもお伝えした、思い通りにいく「爽快感」と、盤面やユニットを支配している「全能感」を知り、虜になっていった。初級攻略編と合わせて、本稿がRTSというジャンルに飛び込むきっかけになってくれたら嬉しい。 

アイアンハーベスト コンプリートエディション』は現在、PS5/Xbox Series X|S版が販売中だ。SteamではPrime Matterより『Iron Harvest』としてPC版も配信中である。 

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フッ軽ゲームライター。生きている実感を得るため、FPSを中心にド派手なハリウッド的アクションゲームを貪って生きている。