魂入れ替えホラー『UN:Me』で、他人のトラウマを“正面から浴びる”。身体の魂を入れ替えつつ進む恐怖迷宮、最後に残す魂はどれにするか

ホラーADV『UN:Me』の試遊レポートをお届けする。

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UN:Me』は、3Dの不気味な迷宮を舞台に繰り広げられるホラー脱出アドベンチャーだ。主人公の少女は身体の中に複数の魂を宿しており、それぞれの魂が不定期かつランダムに表層へ現れる。魂たちは、まるで多重人格のように異なるバックグラウンドと性格を備えており、個別のトラウマも抱えている。最終的に身体に存在できる魂はひとつだけ。プレイヤーは探索と対話、推理を繰り返すことでそれぞれの魂のことを知っていき、どの魂を残し、どの魂を消去するのかを決断する。

本作は、現在8月26日よりドイツ・ケルンにて開催中の大規模ゲームイベント「gamescom」内・集英社ゲームズのブースにて、世界初となる試遊出展をおこなっている。本稿ではこの試遊版のプレイレポートをお届けする。

異形頭ひしめくリミナルな迷宮へ

今回の試遊版では、フィールドマップ「学校」を探索可能だ。始まるなり、下駄箱の並ぶ昇降口や教室など、現実でも見慣れた光景が目に飛び込んでくる。昇降口、教室だとすぐに判別がつくほどに「らしさ」を伴っているのに、同時に異質さの目立つ奇妙な構造とNPCたち。建物の中に蔦や草花が繁茂していたり、教室の中が天井まで水で満たされていたり、それにもかかわらず整然と着席している生徒の頭には人の頭部の代わりに花が咲いている。

花頭を揺らしながら激しく拍手する人物。意図不明で不気味

悪夢、とりわけ高熱でうなされている時、ここは現実で自分は起きて活動しているという錯覚をおぼえつつ、何かが破綻しているという確信もできるあの不思議な感覚を思い出す。不気味さの中に、美しさや儚さのようなものを感じるところもまた夢のようだ。人のような造形をしている存在が立ったり座ったり歩き回ったりしているのに、絶対にこの存在に話は通じないだろうという直感が働く。

そのため、おおよそ人と呼べるものは自分しか見当たらないという意味では、この空間はかなりリミナルスペース的だ。筆者は、リミナルスペース特有の「怖いというより孤独」という感じは嫌いではない。むしろゲームの中にある空間として結構好きと言っても良いかもしれない。現実なら耳がジーンとして心拍数が上がってしまうかもしれないが、ゲームの中では一歩引いて雰囲気を楽しめる。

本作における探索目的は、あちらこちらに隠されたキーアイテムを見つけ出し、主人公の中に宿っている複数の魂のバックグラウンドを探ることだ。筆者は迷宮で道に迷わぬよう、部屋をくまなく見ていくことにした。

対話を通して見えてくる、魂ごとの個性

音楽準備室のような小部屋で最初のキーアイテムを発見した。これは1番目の魂との対話において「一番幸せな記憶は何?」という質問項目を出現させられるもののようだ。さっそく、今表層に出ている1番目の魂と対話を試みることにした。せっかくなので、さきほどアンロックされた幸せな記憶に関する質問を投げかけてみた。

彼女は、ぽつりぽつりと話を始める。どうやら、すぐには考えがまとまらないようだ。話し方や仕草を見る限り、一般的な女子高生という感じがする。また話しているときの表情の移り変わりの細かさに、開発者の強いこだわりも感じる。「この人物がこの世のどこかには存在しているのかもしれない」という実存への実感を持たせる表情や声でコミュニケーションをとってくれる。まるでビデオ通話のような感覚になり、親身になって話を聞いてみたいという情が湧いてくるのだった。

彼女が話に詰まるときや、こちらに質問を投げかけてくる際には選択肢が表示され、時間制限内に3~4つの項目の中からどれかを選ぶ必要がある。

ゲームオーバーになるということはないが、その後のリアクションに変化があるので、2回遊んでみる中で異なる選択肢を選んで反応の違いを観察してみたりもした。

不意に涙をこぼす彼女。しかし、悲しくて泣き出したわけではないという。ここまでの会話で判明した家族構成や、彼女の身体が涙で反応を示したという事実は、追々魂の選別をおこなう際に重要になるのかもしれない。そんなことを思いながら様子を観察した。ゆくゆくは複数の魂の中から、違うと思うものを“消去”して正解にたどり着く必要があるからだ。もしどこかで矛盾を見つけたら、その魂は本当の彼女ではない可能性が高まる。

今回のプレイ範囲では4つの魂が順繰りに出てきてそのうちの3つの魂と対話をした。第4の魂は、第1の魂と口調も仕草も違った。座り方や目線など、佇まいがまさに別人である。

睨むようにこちらを見る少女

第4の魂とは、友達について話してみた。少しがさつな口調で、冷めた持論を展開する彼女。やり取りの中ではときに威圧的な態度を見せることすらあり、個性が際立っていた。しかしほかの魂と同様に、この魂にも彼女なりの事情がありそうで、多少威圧されたとしてももっとさまざまな質問をしてみたくなる。

また、個性は対話の中でのみ表れるものではなく、探索に影響する部分もあって面白かった。たとえば廊下に立っている「立入禁止」の看板の前を何度か通りかかったとき、特定の魂だけがインタラクトし蹴り飛ばすことが可能であった。探索中、プレイヤーの意思で任意の魂に切り替えられる回数は限られているため、特定の魂で何かをしたい場合、その魂が偶然表に出てくるタイミングを待つ必要があるケースも。マップの土地勘を培いながら、魂の状況に合わせて必要なアクションを取る工夫をしなければならない。

トラウマが本当にトラウマもの

音楽準備室でキーアイテムを見つけ、第1の魂と対話した後に手前の音楽室に戻ったところ天井から血まみれの人間が降ってきた。髪の長い少女のようにも見受けられるが、顔が崩れていて年齢などは不詳だ。身体を引きずりながら匍匐前進で追いかけてくる。

どうやら、第1の魂のトラウマのようだ。音楽室から出られないかと引き戸にインタラクトしてみるも、鍵がかかったようにビクともしない。這ってくる女。頭痛や目眩のような演出の中を逃げ惑う。しかしそのうち、捕まったらどうなるのかという好奇心が勝って積極的に逃げることをやめた。女が足元からしがみついてくる。這い上がり、顔に食らいつこうかというほど覗き込んで来て目を背けたくなった。爛れて目や鼻などのパーツも判然としないその顔は、笑っているようにも見える。夢に出そうな光景だった。

ゲームオーバーとなってしまったので直前から再開し、今回は血まみれの女に捕まらないよう音楽室内を逃げ回って時間を稼いでみた。すると、第4の魂が表出し血まみれの女は忽然とその場から姿を消した。

主人公の中に宿った複数の魂は、いずれも個別のトラウマを抱えている。探索中は、まるでフラッシュバックが起きるかのように、そのトラウマに追われることがある。今回は、第1の魂のトラウマとして血まみれの女が出てきたわけだが、時間経過で第1の魂が奥へ引っ込んだことによって、トラウマ自体も見えなくなったというわけだ。このように、トラウマが追いかけてきた場合は別の魂が表に出てくるまで時間を稼ぐというのが回避策のひとつとなる。

これで音楽室から無事出られるようになったので、別の部屋へ向かってみることにした。廊下には、強張った笑顔が能面のように張り付いたナースたちが徘徊している。このナースたちからも、話が通じなそうなオーラが漂っていて不気味だ。しかし、第1や第3の魂ですれ違う分には特に何も起こらなかったので、ひとまず先に進んでみた。

保健室らしき部屋を発見。視力検査がしにくそうな視力検査ボードがある。ここにもナースが二人くらいいた。

奥でキーアイテムを見つけて、第4の魂との対話を済ませて部屋から出ようとしたとき、急に第4の魂のトラウマがフラッシュバックした。どうやら第4の魂にとって保健室や病院、ナースのような概念はトラウマと関係があるらしい。ほかの魂の状態で出くわしてもまったくの無反応だったナースたちが、一斉に追いかけてくるようになってしまった。

保健室から出たところで、廊下にも巡回ナースがいる。うまく魂切り替えまでの時間を稼げず捕まってしまった。たくさんのナースにあの張り付いた笑顔で囲まれ、じっと見つめられた。これも夢に出そうな光景だった。

また、第3の魂の出ているタイミングでは、廊下を移動中に突如長椅子の下から足を掴まれたり、やけに舌の青い男に捕縛されたりした。

画面に表示される指示に従ってボタン操作をすればゲームオーバーにならずに済むケースもある。

本来トラウマは、かなり個人的な体験と紐づいていて、他人のトラウマエピソードはどんなに詳細に語られてもまったく共感できないということもあるくらいだ。だが、本作のトラウマは「こんな風にフラッシュバックするトラウマは確かに怖い」と共感できてしまう。共感できてしまうと、自分自身のトラウマとして内面に取り込んでしまうのではないかという感じがして、とても不安になる。胃がキリキリするような演出で、恐怖体験の表現としてすごくよくできていると感心してしまった。

ただ怖いだけでは終わらなそう

本作は、ホラー演出も備えたアドベンチャーゲームなので、ジャンプスケアやチェイスでハラハラさせられる部分は確かに存在する。しかし、筆者としてはこの作品がただ怖いだけで終わるもののようには思えない。

魂が複数宿っていて、自分の身体本来の魂がどれなのかわからないという設定や、その魂たちと対話をすることで「より確からしい自分」を追求していくというストーリーラインは興味をそそる。そこには、怖さよりも切なさや哀しさ、何らかの人間ドラマや感動までも詰まっているのではないかという期待がある。魂たちのトラウマと対話内容がピースとしてはまったとき、何か大きな絵が浮かび上がってくるのではないだろうか。怖いところはあってもそれだけで終わらないという作品が大好物なので、本作がその期待に応えてくれるかもしれず楽しみである。

Steamストアページで見られる映像の中には、妖しく美しい雰囲気のカットも見受けられる。今回の試遊版では学校という舞台に限られていたが、ゲーム全体ではよりさまざまなロケーションが存在し、非日常感が感じられる探検ができる予感がしており製品版が待ち遠しい。

UN:Me』はPC(Steam)向けに2026年内配信予定。

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Kei Aiuchi
Kei Aiuchi

RPG、パズル、謎解きアドベンチャー、放置系などを遊びます。比較的やりこみ型。特に好きなゲームは『ルーマニア#203』

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