『ボーダーランズ3』はまさしくファンが求めていたシリーズ新作である。メディア向け試遊会レポート

 

2009年に初代『ボーダーランズ』が発売されて以降、いわゆる「ルートシューター」はゲームの1ジャンルとして確固たる地位を築きつつある。『Tom Clancy’s The Division 2』や『Destiny 2』などといった新世代のルートシューターが人気を集める中、2012年の『ボーダーランズ2』と2014年の『ボーダーランズ プリシークエル』以降沈黙を保っていたボーダーランズシリーズであるが、今年3月に満を持して正式なナンバリング続編である『ボーダーランズ3』が発表された。現代のルートシューター達に対抗するべく世に送り出されてくる元祖ルートシューターの新作は、しかし流行に沿った冒険的な試みなどはなく、シリーズのファンが求める「ボーダーランズらしさ」がこれでもかというほど詰まった、まさしくボーダーランズシリーズの新作にふさわしいものであった。メディア向け試遊会に参加した筆者が自信を持って保証しよう。

入室するなり武装したサイコの集団に襲われるのではないかと警戒しながら入った渋谷区の某ビルで行われた『ボーダーランズ3』のハンズオン・イベントでは、4人いるプレイアブル・キャラクターのうち2人から選んで、メインシナリオの一部分であるミッションを試遊できるデモ版が設置されていた。与えられた試遊時間は90分。オプション、操作、新システム・スキルの確認に時間を取ったとはいえ、シナリオ・ミッションを1つ完走するのにギリギリの時間であった。『ボーダーランズ3』のストーリーはクリアするのにおよそ30~40時間程度が想定されているらしいが、この内容の密度なら納得である。豊富なサブクエストも含めると、相当なボリュームを期待していいだろう。

 

ヴォルト・ハンター、宇宙を駆ける

実際のゲームプレイについて移る前に、『ボーダーランズ3』と今回のデモ版のストーリーやキャラクターについて一通り触れておきたい。『ボーダーランズ2』の7年後という設定である『ボーダーランズ3』のストーリーについて何より特筆すべきなのは、過去作品と同様に最初は惑星パンドラから始まるものの、途中からパンドラを脱出し様々な惑星をまたいでストーリーが展開されるという点だ。主人公がお宝を求めるヴォルト・ハンターであることには変わりはないが、その活動のスケールは遥かに大きいものとなり、それぞれの星の特性に応じた戦闘スタイルが求められる。ナンバリング前作のハンサム・ジャックに変わって悪役を務めるのは双子のカリプソ・ツインズと彼らが率いるカルト集団「チルドレン・オブ・ヴォルト」。様々な惑星のヴォルトを求めて回る彼らを阻止する形で、主人公たちはリリス率いるクリムゾン・レイダースから任務を受けるというストーリーだ。その他にも、シリーズのお約束として過去作のキャラクターや主人公たちがNPCとして様々な形で出演する。

今回のミッションで案内人を務めるローレライ

今回のデモ版でプレイすることができたミッション”敵対的買収”の舞台は惑星プロメティア。アトラス社は(シリーズ中においてはエレメンタル偏重の銃器メーカーとして知られる)マリワン社に文字通り力ずくの買収を仕掛けられており、主人公はアトラス社のローレライと、彼女の上司でありアトラス社のCEOであるリースの助けとなって、どうやらカリプソ・ツインズが手を貸しているらしいマリワン社と戦うという内容である。戦闘が展開される惑星プロメティアの都市メリディアンはサイバーパンク感漂うメトロポリスであり、旧作品の舞台となったパンドラの荒涼とした大地からの変化が新鮮である。

マリワン社ロゴが至る所で見られる都市内での戦闘

ミッション中ではリースになぜか執着を見せるマリワン社のCEO、カタガワJr.が登場するほか、前述したようにシリーズの伝統として『ボーダーランズ2』の主人公の一人であるZer0が味方として登場する。Zer0とはミッション後半は一緒に行動することができ、強力な近接攻撃でマリワン私兵との戦闘を助けてくれるだけではなく、相変わらずの五七五調でのセリフも披露してくれる。どうやらNPCとの共闘システムは『ボーダーランズ3』からの新システムとして導入されているらしく、筆者はボーダーランズの達人であるため残念ながらお世話になることはなかったが、ミッション中にダウンした時はNPCが蘇生を施してくれることもあるようだ。

五七五調でカタガワJr.をdisるZer0

ミッションの最後を飾るのはマリワン社のAIであるギガマインドとのボス戦である。戦闘スーツの上に脳が直接乗っかっているという、これまたサイバーパンクな見た目をしているこのボスを倒すと、ミッションの目的である「ギガブレイン」が手に入るほか、ギガマインドの固有ドロップ武器を入手することが可能だ。

この敵対的買収というミッション全体を通じて、ボーダーランズ特有の粗野で、皮肉に満ちていて、そのくせ独特な風味のユーモアセンスが溢れるセリフ回しを堪能することができる。「ギガマインドを狙おう」と提案するZer0に対し「そのギガマインドとかいうのは殴れるのか?」と突如脳筋なところ見せる主人公のアマーラや、「マリワン兵は殺すな」と部下のサイコに命令するものの全く言うことを聞いてくれなくて苦悩するカリプソ・ツインズのエコーログなど、思わずクスリときてしまうシーンが満載だ。

中でも筆者のお気に入りはZer0のキャラ紹介カットインで、”Ironically does a lot of dividing”という文章が添えられている箇所だ。英語で”divide”は「斬る」と(加減乗除の)「割る」の両方の意味があるので、「ゼロのくせに割りまくる」というかなりくだらないダジャレなのだが、こういったユーモアはまさにボーダーランズ3にふさわしいものだ。ローカライズ作業は現在進行中とのことでデモ版は英語のみであったが、旧作品の日本語版のクオリティを鑑みるに、新作のローカライズにもなんら心配はないだろう。

Zer0の登場カット

 

豪快なゲームプレイの裏には堅実な進化

ゲームプレイに関しては、デモ版ではアマーラとゼインの2人がプレイ可能であった。アマーラはいわゆるセイレーンであり、超能力のようなスキルで戦う。ゼインは、『2』のアクストンが出すタレットのような役割を果たす自身のクローンを設置したり、バリアーを設置したりとユーティリティに富んだキャラクターだ。今作のアクションスキルには3つのツリーが存在し、それぞれ別々にスキルポイントを振って成長させていくことができる。スキルスロット自体は1つのため、3つあるアクションスキルの内一つを選んで装備して戦うこととなる。たとえばアマーラの場合は、相手を超能力で生成した拳で捉えるフェイズロック系のスキル、ジャンプから急降下するAoEダメージスキル、前方直線範囲に貫通する弾を放つスキルの3つからひとつを選んで装備することになる。ゼインのスキルはタレット設置、バリアー設置、クローン設置の3つであるが、ゼイン独特のシステムとしてグレネードスロットにスキルを入れることで2つのアクションスキルを同時に装備することが可能となっている。

わらわらと湧いて出てくる敵を、個性ある銃を入れ替え持ち替え、スキルを活用しつつなぎ倒していくというコア・ゲームプレイは旧作品から変わっておらず、グラフィックが向上した分、臨場感と迫力が増している。ただし操作に関しては2つ新しい共通アクションとして、スライディングとよじ登りが追加されている。どちらも『Apex Legends』のような最近のFPSではおなじみの動作となっているので、多くのプレイヤーはすぐ手に馴染むだろう。マイナーな変化と見せかけて、特によじ登り動作の追加によってかなり立体的な戦闘ができるようになっている。

シールドとデジクローン、どちらも出しつつ戦うゼイン

ボーダーランズシリーズの目玉とも言える豊富な銃に関しても、『3』からは今までの銃器メーカーに加えて2社が追加されている。既存のメーカーについてもギミックが変更・追加されているものが多く、たとえばマリワン社のチャージ式ショットガンはショック属性とファイア属性を任意に切り替えることができるし、リロード時にグレネードのように投げ捨てて爆発させることができたティーディオール社の銃は、今作では投げ捨てると銃から足が生えて近くの敵に向かって走っていくようになった。恐るべき技術の進歩である。ルートシューターらしく、様々な武器パーツが組み合わさって無限にも等しいような銃の種類があるため、ミッションごとや敵ごとに持ち変えるもよし、理想の一丁の求道者となるもよしとなっている。

グラフィック技術の進化によって到るところが見目麗しくなったことを除くと、ゲームプレイの内容はまさしくボーダーランズである以上に言うべきことはあまりない。シリーズファンならば、間違いなく安心できる操作感だ。ただし、細かい部分でのQoL向上的な変化はある。たとえば弾の自動販売機ではワンボタンで上限まで弾の補給ができるようになっていたり、銃やシールドに「アイテムスコア」のような数字が表示されており、細かい性能まで目を通さなくてもパッと見でドロップ品の価値がわかるようになっていたりといった変更がされている。また、オプションにはアクセシビリティの項目があり、クロスヘアの色を弄ることや、パッドでプレイする際のエイムアシストの有無などを変更することが可能だ。

アクセシビリティのオプション画面

デモ版にはマルチプレイ機能は実装されていなかったが、『ボーダーランズ3』のマルチプレイは旧作品と若干仕様が変化していることが判明している。『3』のマルチプレイ時にはドロップ品がプレイヤーごとに管理される。つまり、マルチプレイセッションに参加する全てのプレイヤーには別々にドロップが発生するということだ。『2』でありがちだった、赤箱からのレア武器や弾丸の取り合い等は発生しなくなる。また、ドロップ品自体も参加プレイヤーのレベルごとに調整されており、例えばレベル10とレベル20のプレイヤーが一緒にプレイしている時はそれぞれのレベルに応じた装備がドロップする。敵に与えるダメージもレベルに応じて調整されるため、旧作では難しかった「レベル差があるプレイヤー同士のマルチプレイ」が気軽に出来るようになっている。ちなみに、こういったレベル調整やドロップ調整はオフにして、旧作品と同じ仕様でマルチプレイすることも可能となっている。

 

ヴォルト・ハンター達よ、再び銃を手に取る時が来た

繰り返しになってしまうが、『ボーダーランズ3』はバトルロイヤル偏重気味なFPSマーケットのトレンドなどには目を向けず、ボーダーランズシリーズの骨格をそのまま残した上でより肉厚になった作品に仕上げてきた印象だ。「新しいボーダーランズがやりたい」というファンの期待に、間違いなく応えてくれる作品になってくれるだろう。シリーズファンにも、ルートシューターのファンにも、coop-FPSに飢えているゲーマーにも、そしてシリーズ初経験者にも、幅広く勧めることができて、一緒に盛り上がることができる、そういったゲームの予感をひしひしと感じさせてくれるデモであった。