発見の楽しさを再発見させてくれる動く絵本『here AND there』プレイレポート【デジゲー博 2018】

今月11月4日、秋葉原UDXにて開催された、同人・インディーゲームの祭典「デジゲー博 2018」。会場内ではさまざまな作品が制作者の熱い想いと共に軒を連ねていたが、その中でも特に筆者の琴線に触れたゲームを紹介していきたいと思う。

今回紹介するのは、正に現代版「動く絵本」という喩えがふさわしいiPad専用ゲームアプリ『here AND there』だ。

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最初に言ってしまうと、本作品の中には「心動かされる物語」であるとか、「卓越したゲーム性」といったものは存在しない。日常の一場面を切り取った3つのコマ。そこに何気なく、”当たり前のようにあるもの”に対しての再発見を繰り返すことに楽しさや喜びを見出す、そんな作品である。

道端にいつのまにか咲いていた花に対し思わず近寄ってみたり、今まで存在していることすら気づかなかった、家の近所にあるお店に寄ってみたり。この作品に触れていると、原始的な「発見の楽しさ」と「発見の身近さ」が心の中に自然と浮かび上がってくる。日常というものは、自分で考えている以上に、複雑怪奇であるものなのだと。

本作品の内容は、提示された「初夏の3つの風景」の中で起きる小さな出来事たちを、画面に触れたりデバイスを傾けたりすることによって楽しむという至ってシンプルなものだ。だがそのシンプルな楽しさを表現するにあたって制作者が込めた創意工夫の数々は、この作品に触れることでプレイヤーに伝わるっていくことだろう。

まず目を見張るのは、全て手書きで制作されたというイラスト、及びアニメーションだ。線の数が少なく、そして色鮮やかな風景は、目に楽しく尚且つうっとおしくならない絶妙なデザインとなっており、ギミック一つ一つにしこまれたアニメーションは実に滑らかに動く。本作品は作者が以前手がけたアニメーションを元に制作されているが、ゲームというメディアにその形を変えても、良さは全くと言っていいほど失われていない。

そして筆者が特に素晴らしいと感じたのは、本作がプレイヤーにインタラクティブな体験を与えることに主眼が置かれているゲームであるのにも関わらず、ゲーム側からプレイヤーに対し、インタラクティブな体験を促すための「ゲームらしさ」が極限まで廃されているという点だ。ここでいう「ゲームらしさ」というのは、例えばキャラクターの頭上に矢印アイコンが表示されていたり、ダンジョンの中に何故か誰が置いたかもわからない宝箱が置かれていたりといった、プレイヤーにアクションを促すための、現実にはありえないシステムのことを指す。

ゲームらしさを削ることによって「とある初夏の風景」という舞台に一定の説得力を与えているのはもちろんのこと、ここに”本作がゲームである”という前提が加わることで、作品を起動した後、プレイヤーの中に「よくわからないけど、とりあえず触ってみよう」という気持ちが自然と湧くようにデザインされている。

そしてプレイヤーは自らの発見に驚き、他のギミックは無いのかと、こんなところにもあったのかと、この世界に夢中になってしまうはずだ。先述したとおり、原始的な「発見の楽しさ」と「発見の身近さ」をプレイヤーに思い起こさせてくれる素晴らしい作品だと筆者は感じた。

11月5日からこのゲームは無料で発売されており、AppStoreからDLが可能となっている。IPad専用タイトルなので注意が必要だ。作品及び作者に関する情報は本作の監督を担当した小光氏のTwitterをチェックしてほしい。

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