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人気海外ゲームメディア、ライターや編集者の報酬が“クリック数歩合制”に変更され反発続々。記事1000閲覧で約800円、読まれなければ“報酬無し”も
規定閲覧数に届かなければ無報酬ともなる内容に対し、TheGamer関係者からは反発の声も上がっているようだ。

Kotakuは5月23日、海外メディア企業Valnet傘下のゲームメディアTheGamerにて、新たな報酬契約が提示されたと報じた。ValnetはTheGamerやPolygonなど多数の海外ゲームメディアを運営・買収してきた企業。報道によれば、5月21日に提示された契約では、記事が一定回数以上閲覧されて初めて報酬が支払われる仕組みが導入されるという。規定閲覧数に届かなければ無報酬ともなる内容に対し、TheGamer関係者からは反発の声も上がっているようだ。
Valnetはカナダに拠点を置くデジタルメディア企業だ。多数のWebメディアを運営・買収しており、特にゲーム系サイトではTheGamerやGameRant、レビュー集積サイトのOpenCriticなどを広く傘下に収めている。昨年には老舗ゲームメディアのPolygonも買収し、海外ゲームメディア業界で存在感を強めている企業だ。
そんなValnet傘下のメディアの特徴として語られるのが、SEO(検索流入)を意識した記事展開だ。SEOとは、Googleなどの検索エンジン経由で読者を集めやすくする手法を指す。攻略(ガイド)記事などがそういったSEOに強いほか、検索上の“分かりやすい言葉”をタイトルや記事内で用いることも、その一環となる。
実際のところ、どのメディアも多かれ少なかれこういった手法は利用しているので、Valnet傘下のメディアだけが特別という訳ではない。一方で、攻略記事やハウツー記事などを大量展開する傾向や、Polygon買収後に編集長を含むスタッフの大規模解雇がおこなわれた件(関連記事)など、その運営方針にはいくつか批判的な見方も存在している。

今回Kotakuは、TheGamerの公式Slackでスタッフに配布された新契約書のコピーを入手したと報道。この「新しく刺激的な成果報酬型のボーナス制度(new and exciting, performance-based bonus system)」は、5月21日にスタッフに発表され、翌22日に施行されたという。本契約によると、記者は記事が1,000回閲覧されるたびに5ドル(約800円)、編集者は3ドル(約470円)を受け取ることになる。また、この報酬は記事が掲載されてから最初の15日間のみに適用されるため、それ以降に獲得した閲覧数には報酬が発生しないとされる。Kotakuは、記事の閲覧数が1,000回未満だった場合、サイトのスタッフには報酬が支払われないと指摘している。
さらにLuddy氏は、TheGamer内で抗議活動が実施されたと発言。多くの“パーマランス”スタッフは「ソフトレイオフ」、つまり待遇の“調整”によって自発的に辞めるような環境を作る手法だと考えており、新たな条件に署名するより退職を望んでいると明かした。この“パーマランス(permalance)”とは、契約上はフリーランスでありながら、特定企業と長期的な契約関係を結ぶ働き方を指す言葉だ。会社に正社員として雇用されているのではなく、あくまでも業務委託契約によって継続的に業務を請け負う形式となっている。Kotakuの取材に対しLuddy氏は、TheGamerでは記者や熟練編集者を含むほぼ全員がこの“パーマランス”契約で働いており、正社員はごく少数しか存在しないとの見方を示している。
“パーマランス”契約自体は、ゲームメディア業界では特段珍しいものではない。日本を含む海外のWebメディアでは、フリーランスの記者が長期的に特定媒体へ寄稿するケースも多く、そうした外部ライターを中心に記事制作がおこなわれる媒体も少なくない。さらにここ数年では特に要職を務めるフルタイムの常勤社員までも減らす動きが欧米のゲームメディアを中心に多く見られる(関連記事)。IGNやGamesIndustry.biz、そしてKotakuにおいても熟練編集者や記者などが相次いでレイオフされているのが最近の実情だ。

ゲーム業界におけるレイオフやスタジオ閉鎖などのニュースは近年数多く(関連記事)、業界全体で活力にやや乏しい印象もある中、ゲームメディアを取り巻く環境も決して楽観視できるものではない。競合のエンタメコンテンツの隆盛に伴う閲覧数低下や広告単価の縮小に加え、動画配信やインフルエンサーの台頭によって、従来主流だったゲームメディアの立ち位置にも変化が生じている。また、Googleにおける検索アルゴリズムの変更や、AIによる検索機能の導入などもあり、業界全体が逆風にさらされているとの指摘もみられる。
今回のTheGamerにおける新たな報酬契約は、こうした厳しい業界環境を反映したものであるのかもしれない。もっとも、新たなプラットフォームやテクノロジーの登場によって収益構造が変化すること自体は、メディアの歴史において繰り返されてきた現象でもある。そうした中で、ゲームメディアがいかに独自性や信頼性を打ち出していくのかは、今後の業界における課題のひとつとなっていきそうだ。
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