無料スマホゲーム開発者「広告費に月1600万円以上かけてる」、リアルなお金周りを公開。“作るだけ”では生き残れない

今日の市場でスタジオがどのように収益を上げているかをユーザーに共有している。

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昨今の基本プレイ無料のモバイルゲーム市場では、市場の成熟や広告競争の激化にともない、新規プレイヤーの獲得がかつてに比べて難しくなっているとされる。今回は海外掲示板Redditに現れたとある開発者によって、業界の実情を映す貴重なデータが共有されている。

Redditのゲーム開発者向けコミュニティ「r/gamedev」にて売上データを事細かに明かしたのは、開発者のmoleki氏だ。同氏は、モバイル向け作品を手がける4人スタジオLimeboltのプログラマーだという。Limeboltが現在運営をおこなっている放置型RPG『Bounty Bash』は、Google Playストアでは50万ダウンロードを突破している人気作品だ。

広告コストは莫大に

moleki氏はいわく、モバイル向け基本プレイ無料ゲーム市場では、ユーザー獲得(UA)に関する実際の数値が公開されることはほとんどないという。そこで同氏は、2024年9月にリリースされた『Bounty Bash』のリテンション率(定着率)やインストール単価、広告費用の回収期間などを赤裸々に公開し、今日の市場でスタジオがどのように収益を上げているかをユーザーに共有している。

まずリテンション率について、D1リテンション、つまりインストール翌日に再び遊んだユーザーの割合は46%で、約1週間後の定着率を表すD7では20%、約1か月後の定着率を表すD28では7.5%だったとのこと。同氏が優れたモバイルゲームの基準だとするリテンション率は、それぞれ40%、20%、10%だという。そうした基準と比べると、D1リテンションでは基準を上回っている一方で、D7では同等。D28リテンションでは下回る結果となっているようだ。

また、インストール単価、すなわち新規ユーザー1人を獲得するのにかかる広告費用はおよそ13ドル(約2100円)だという。とはいえこの数値はすべての媒体や地域をあわせた平均値だといい、たとえばReddit広告で米国ユーザーを獲得するには、1インストールあたり約30ドル(約4800円)かかっているとのこと。すべての広告施策をあわせると、ユーザー獲得のために毎月10万ドル(約1600万円)以上、年間では120万ドル(約2億円)以上がかかっているそうだ。これは毎月のサーバー費用や、開発メンバーおよびスタッフの人件費を合わせた金額をもはるかに上回る金額だという。

小規模スタジオには厳しい現実

これほどまでに莫大なコストをかけて広告を打つ意味について、moleki氏はオーガニック、つまり自然に作品を見つけてもらうことが事実上不可能だからだと説明している。というのも『Bounty Bash』はApp Storeではフィーチャーされたことがなく、またGoogle Playストアでは頻繁に取り上げられているものの、もし取り上げられたとしても1日100インストール未満の増加にとどまるとのこと。さらに、そうして獲得したユーザーは有料広告で流入したユーザーよりもリテンション率が低い傾向にあるという。同作においては有料の広告施策がゲームを維持するために不可欠な状況のようだ。

なお、大手スタジオでは毎月1000本以上の広告クリエイティブを専属チームのもとで制作していると同氏は説明。ゲーム開発メンバーが広告素材も作らなくてはならない小規模スタジオでは、そうしたライバルに制作スピードで太刀打ちすることができないとのこと。そのためLimeboltでは、クリエイティブの量で競うのではなく、ゲームプレイの長期的な改善を通じてリテンション率を高める戦略を重視しているそうだ。

また同氏スタジオでは、ROAS(広告費用対効果)を12か月で120%にすることを目標としているという。これはつまり、広告費を1ドルかけた場合、1年以内に1.2ドルの収益を得られる状態を目指していることを意味する。実際に過去18か月を月別にみると、ある月に獲得したユーザー群から広告費を完全に回収するまでには、平均で約4か月かかるという。多くの場合、初月で広告費の約70%が回収できるが、そこから120%の目標を達成するまでが長い道のりになるそうだ。前述したように『Bounty Bash』の1か月後のリテンション率は7.5%であり、その先はさらに落ちこむとみられる。そうして残ったわずかなプレイヤーからの収益に依存することになるわけだ。月ごとのデータを平均して得られたグラフを見ると、数か月後には広告費の回収ペースは大きく鈍化することがうかがえる

Image Credit: moleki on Reddit

Limeboltはパブリッシャーや投資家の支援を受けていないため、広告費は自腹で出すしかなく、売上の約95%はそのまま次の広告費に回すかたちになっているとのこと。創業者の報酬を抑えてなんとかやりくりしている状況のようで、今日のモバイルゲーム市場において、基本プレイ無料タイトルで収益を上げることの難しさが垣間見える。

moleki氏はここまでを踏まえて、同氏のスタジオと同じような小規模スタジオに向けてアドバイスをおこなっている。まず、リテンション率は単なる指標ではなく、ビジネスそのものだと主張。特に1か月後の定着率を表すD28リテンションが、広告費をユーザー群から回収できるかどうか、そして誰かにゲームを見つけてもらえるかどうかを決定づけるとしている。またLimeboltが12か月で120%というROASを目標としているように、広告を打ってから収益として回収できるまで待つことになる期間を、事前に見定めて計画することの重要性を語った。

時代に合わせた生存戦略

今回開発者から示されたデータについては、アナリストによっておこなわれている市場分析とも一致する部分も多い。市場分析会社Sensor Towerが今年1月に公開したレポート「State of Mobile 2026」によると、昨今のモバイルゲーム市場では動画やプレイアブル広告といった高アテンションなフォーマットへの移行が進んでいる。また特定のプラットフォームやゲームジャンルに広告掲載が集中することで、広告クリエイティブが消耗するスピードが増し、高いクオリティの広告が要求されるようになってきているという。現在起きているUAコストの高止まりは、そうした環境の変化を背景としているようだ。

そのため同レポートでは、単にインストール数を高めるよりも、既存のユーザーベースから得られる顧客生涯価値(LTV)を拡大させる方向へと市場がシフトしていると分析されている。そのため、リテンション率の向上や休眠ユーザーの再活性化に加え、課金ユーザーの厳密な管理、広告費の回収率やコンバージョンに基づいたユーザー獲得を優先する戦略の重要性も示されている。

今回は、そうした市場の傾向が現場の生の声として伝えられたかたちだろう。なおReddit投稿ではほかにも、ストアページの概要欄のたった一行を変えただけでインストール数が7%増加したことや、インストールしたユーザーのうち96.5%のユーザーはお金を落としていないことなど、興味深いデータもさまざま共有されている。昨今のモバイルゲーム市場の状況が具体的な数値で示されており、小規模スタジオといえどもゲームを作るだけでは生き残れない厳しさを物語っているだろう。

『Bounty Bash:放置パイレーツRPG』はAndroid/iOS向けに基本プレイ無料で配信中。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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