わずか1年で新展開打ち切りのマルチ大作『スーサイド・スクワッド』開発者、“もうゲームを作りたくなくなる”ほどつらかったと告白。名門Rocksteadyでも躓いた、ライブサービス挑戦

『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』の開発者が、開発の苦労と売上不振で受けた心理的負担を語った。

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元Rocksteady Studiosで『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』を手がけた開発者が、同作の開発とその後の不振で“もうゲームを作りたくなくなる”ほど消耗したと当時の心境を語った。海外メディアBloombergが報じている。

『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』(以下、スーサイド・スクワッド)はRocksteady Studiosが手がけ、ワーナー・ブラザースよりリリースされたオープンワールドTPSだ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|Sで、ソロプレイおよび最大4人でのオンライン協力プレイに対応している。

本作はDCコミックスのアメコミ「スーサイド・スクワッド」をもとにしたゲーム作品だ。作中世界はエイリアン「ブレイニアック」の襲撃を受けており、バットマンを始めとする多くのヒーローが洗脳されている。窮した治安当局は頭部に小型爆弾を仕込んだうえで囚人たちを解放し、洗脳されたヒーローを始末させることに。プレイヤーはハーレイ・クインやデッドショットなどのヴィランを操作して、舞台となるメトロポリスを探索。「ジャスティス・リーグ」を殲滅するという決死のミッションに挑む。

『スーサイド・スクワッド』は2024年2月にリリースされた作品だ。もともと2022年を発売予定として発表されたものの、数度にわたって延期された後に発売された経緯をもつ。シーズン制のライブサービス型のゲームとして設計されており、キャラクターの衣装などが手に入るゲーム内課金要素も存在。発売前よりリリース後1年間は無料でアップデートの配信を続けるとの発表もあった。そして新キャラクターとしてジョーカーなどが追加されるなど、さまざまなコンテンツが無料で追加されていった。

しかし本作の売上は振るわず、リリースから約半年経った2024年9月には、開発元のRocksteady Studiosでレイオフが実施されたことが報じられた(関連記事)。そして当初の発表通り1年間の無料アップデートが配信されたのち、本作のシーズンは終了することが発表。アップデートの新展開は終了した。販売元のワーナーブラザースより決算発表にて「期待外れのリリース(disappointing release)」と称されるなど、売上における苦戦がうかがえる作品となった。

そんな同作について海外メディアBloombergが今回、元開発者たちにインタビューを実施。本作の開発における苦難を訊いた。インタビュ―に応えたのはすでにRocksteady Studiosを離れているふたりの開発者のAxel Rydby氏と Johnny Armstrong氏だ。それぞれ同作の開発において、ディレクターとアソシエイトデザインディレクターを務めていた。

高評価作を連発していたので、自信はあった

Rocksteady Studiosへの入社はArmstrong氏の方が早く、2010年にスタジオに加入した。しばらく『バットマン アーカム』シリーズの制作に携わっていたとのこと。2015年に『バットマン アーカムナイト』をリリースしたのち、マルチプレイ重視の新作の企画が上がり、Armstrong氏も制作チームに参加。それが後の『スーサイド・スクワッド』になったそうだ。

Armstrong氏はずっとバットマンのゲームを作っていたため、 『スーサイド・スクワッド』の制作に加わった際は、バットマンから少し離れられることを喜んでいたそうだ。それまで手がけた作品はどれも高評価を獲得していたため、『スーサイド・スクワッド』も成功させる自信があったという。

しかしArmstrong氏によると、『バットマン アーカム』シリーズと『スーサイド・スクワッド』の開発はまったく異なるものだったとのこと。売り切り型のシングルプレイゲームだった『バットマン アーカム』は一度だけプレイして楽しければ問題はなかったが、ライブサービス型の『スーサイド・スクワッド』ではあらゆるコンテンツを繰り返し楽しめるようにする必要があったそうだ。盛り込むべき要素も多く、品質テストもより困難だったという。ひとつのコンテンツの制作にも非常に長い時間がかかり、いくら時間を費やしても状況が改善しているとは感じられなかったとのこと。大きな文化の変化だったそうで、開発チームは慣れないライブサービス型ゲームの制作に苦労していたようだ。

小刻みな延期が悪循環を招く

そしてRydby氏は2018年にRocksteady Studiosに入社し、2022年に『スーサイド・スクワッド』のディレクターに就任した。同氏によると開発初期はRocksteady Studiosとワーナーブラザーズの意見はユーザーフレンドリーな作品を作ることで一致しており、大量の課金アイテムを押し売りするようなことはしないという方針だったという。

しかし『スーサイド・スクワッド』の制作が難航し、開発期間が延びると、やがて社内会議での主題はゲームの内容よりも膨らんだ開発費の回収方法に重点が移っていったそうだ。幹部からは想定されるプレイヤー規模や、リプレイ性の向上などの検討を求められていたという。Rydby氏はワーナーブラザーズが投資を回収できるか不安を抱いていることは理解しつつも、数字を意識しすぎるあまり自分がゲームを作っているという意識が薄れていき、作品から魂が失われていっているのを感じていたとのこと。

また『スーサイド・スクワッド』は複数回発売が延期されており、開発期間は7年以上に及んだという。しかし一度に大きく延期したわけでなく小刻みに延期したため、開発チームの目の前には常にリリースの締め切りが存在している状況だったとのこと。そのため長期の開発期間にもかかわらず、ゲーム内容を抜本的に改善するようなことは難しかったそうだ。

そうしてついにリリースされたもののあまり高評価を得ることができず、Armstrong氏はユーザーからの反応の悪さに衝撃を受けたという。結局本作の巻き返しが本格的におこなわれないことが決まると、同氏は「体からすべての力が抜け落ちたように感じた(I felt everything drained from me)」そうだ。こんなことはもう繰り返せないとの思いを抱き、Armstrong氏とRydby氏はスタジオの退職に至ったという。

ゲーム業界を離れることも視野に

『スーサイド・スクワッド』はヴィランたちが主人公となる設定などで注目を集めた。しかしリリース直後のサーバートラブルなどで評価を落とし、また無料アップデートで徐々に追加もされていったものの、ボリューム不足を訴える声も多数寄せられた。さらに洗脳されているとはいえヒーローたちが民間人を殺傷していく描写などにも賛否があり、Steamでのユーザ―レビューは「賛否両論」ステータスに。リリース直後には1万人を超える同時接続プレイヤーを集めたものの、3か月後には同時接続プレイヤー数が500人程度まで落ち込んだ(SteamDB)。高い人気を得たとは言い難い作品だ。

今回はそんな同作の開発の裏側の苦労が、当時のディレクターらによって語られたかたちだ。『スーサイド・スクワッド』はRocksteady Studiosにとって、ライブサービスゲームへの挑戦ともいえる作品だった。しかし開発実績のあるシングルプレイゲームとの違いからか全体として開発は難航していたようで、両氏の証言からは開発期間が延びるにつれてゲーム体験そのものよりも収益性やプレイの継続性に重点が移るという、悪循環に陥っていた様子も垣間見える。そうしてどうにかリリースした作品も好評を得ることができず、退職を決断するほどの心理的な負担となったようだ。「業界をやめるかどうかはわからないけどもう限界だった」と、同氏は当時を振り返っている。

シングルプレイ主体のゲームの開発元が本格的なライブサービスゲームに挑戦する事例は近年増えており、たとえばNaughty Dogでは『The Last of Us』のマルチプレイ作品が約7年にわたって開発されていたもののとん挫していた(関連記事)。Rocksteady Studiosに限らず、実績あるスタジオでもライブサービスゲームへの“初挑戦”には苦戦しうることがうかがえるだろう。

『Secret of Circadia』

なお、Rydby氏とArmstrong氏はスタジオを辞めたのち、ゲーム業界から離れることも視野に入れつつ、退職の数か月後に再会。昔の話をしているうちに「またいっしょにゲームを作ってみよう」という話になったそうで、現在インディーゲーム『Secret of Circadia』を開発中だ。

同作はデッキ構築型ローグライトRPGで、プレイヤーは邪悪なAIが支配する世界を冒険する。開発資金をKickstarterのクラウドファンディングキャンペーンで募りつつ、ふたりで制作しているとのこと。『スーサイド・スクワッド』に比べるとかなり小規模な作品のようだが、両氏は同作の開発を通じて、ゲーム作りへの情熱を再発見しているという。独立してゲーム制作を続けることを選んだ、Rydby氏とArmstrong氏の新作の成功を期待したい。

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Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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