Riot Gamesがメンタルヘルス問題対策団体Take Thisに出資、提携へ。ゲーム業界でのハラスメント問題などに対応できる専門的人材育成プログラムを支援


Riot GamesおよびTake Thisは5月15日、「Accelerate Fellowship Program」を立ち上げた。このプログラムはRiot Gamesの出資によって実施され、ゲーム業界におけるメンタルヘルス分野への専門性をもった人材育成を目的としているという。

Take Thisは、2012年に設立された、アメリカに拠点を置く非営利組織だ。同組織は個人や企業に対し、学習リソースや研修などの機会を提供。そうした支援をおこなうことで、ゲーム企業内やゲーマーコミュニティのメンタルヘルス問題に対策していくことを目的としている。具体的には、スティグマ(精神病患者などに対する偏見・差別)やゲームスタジオにおける有害な文化、ハラスメントや有害な言動といったさまざまな問題への対策に取り組んでいるという。

またRiot Gamesは、『League of Legends』『VALORANT』などのタイトルを手がける企業だ。ほかにもeスポーツトーナメントを開催・運営。音楽グループやアニメシリーズなどの制作にも携わっている。


今回Take Thisは、メンタルヘルス啓発月間を記念して、ゲーム業界に関わるメンタルヘルス関連人材のキャリア形成支援をおこなうとした。キャリア支援に際しては、専門家を集めたうえで、教育や指導だけでなく、実地での経験なども提供していくという。このプログラムの立ち上げについては、Riot Gamesと連携し、資金提供を受けている。

Accelerate Fellowship Programでは、10人のフェロー(研修生)と5人のメンターによってチームが構成されるようだ。プログラムでは、フェローが6か月にわたり、インターセクショナリティ、精神疾患をもつ人々へのサポート、エシカル(倫理的)デザイン、プレイヤーの安全性といった項目についてのカリキュラムを修めることになるという。

ちなみにRiot GamesとTake Thisの提携は2022年にもおこなわれていた。Riot Gamesはストリーマーに向けたメンタルヘルスのカリキュラムを開発するための助成金をTake Gamesに提供。このカリキュラムでは、コンテンツクリエイターやストリーマーなどを“ストレスの多い職業”とし、適切なアドバイスなどをおこなうことなどを目的としていた。

近年ではゲームコミュニティなどを取り巻くハラスメントなどの被害報告も目立つ傾向にある。奇しくも先日5月13日には、ストリーマーのTaylorMorgan氏が『VALORANT』内でハラスメントを受け、性的暴行などを示唆する脅迫を受けたとX上に投稿。同作のエグゼクティブプロデューサーを務めるAnna Donlon氏が直接TaylorMorgan氏に対し、最優先事項として対策を講じるとコメントした。


こうしたハラスメントへの対策は、ゲーム内ではVCに関する報告や、アカウント停止などといった対策である程度フォローされているといえる。一方で、ハラスメントの起きづらいゲームデザインを助ける人材育成や、被害を受けた人々などのメンタルヘルス支援に焦点を当てたアプローチは、ゲーム業界のなかでも珍しい事例といえるだろう。今回は、人気のMOBA『League of Legends』や大型FPSタイトル『VALORANT』を擁するRiot Gamesが、そうしたハラスメントなどの問題へのゲーム外からの対策のひとつとして、Take Thisの主導するプログラムに出資したかたちだ。

なお今回公開されたAccelerate Fellowship Programについて、メンターの募集は既に開始されているという。またフェローの募集は6月3日から開始される見込みだ。