Razerのゲーミングマスク「Razer Zephyr」N95グレードをアピールするも、実際には認定されていなかった。虚偽宣伝として米国にて巨額の罰金課される


米国FTC(Federal Trade Commission・連邦取引委員会)は4月30日、ゲーミング機器メーカーRazerに対し制裁金などを課したと発表した。同社が2021年10月に発売したマスク製品「Razer Zephyr」において、その性能として案内された情報に虚偽があったためとのことで、総額で110万ドル(約1億7000万円)以上を支払うこととなる。同製品は当時「ゲーミングマスク」などと呼ばれ注目された。


「Razer Zephyr」は、2021年1月にプロトタイプが公開され、同年8月に正式発表されたマスク製品だ。新型コロナウイルス感染症が世界的に流行していた当時、ゲーミング機器メーカーであるRazerが開発した。特徴としては、コミュニケーションのしやすさを実現するため、着用者の口元が透けて見えるデザインが採用。さらに、Razer製品ではおなじみのRazer Chroma RGBに対応し、マスク内部などに仕込まれたライティングをカスタマイズできる。

また上位モデル「Razer Zephyr Pro」も存在し、こちらにはマイクとアンプが内蔵。マスクを装着しながらでも会話しやすい機能が用意された。ちなみにRazer Zephyrは99ドル(約1万6000円)、Razer Zephyr Proは149ドル(約2万4000円・共に現在のレート)で販売された。

そして両モデルでは、マスクの左右に電動の吸気ファンを搭載。濾過された空気を取り込み、着用者は快適に呼吸できるとされた。その吸気ファンに使用するフィルターの性能について、Razerは虚偽の宣伝をおこなったと今回FTCに認定されたのだ。


当初Razerは、FDA(Food and Drug Administration・食品医薬品局)に登録済みで、BFE(Bacterial Filtration Efficiency・バクテリア濾過効率)99%のN95グレードフィルターを使用していると案内。現在は削除されている公式サイトでは、「交換できるN95グレードフィルターで毎日安全で、ステイセーフ」とアピールしていた。当時、N95マスクは新型コロナウイルスにも有効であるとの認識が広まっていたことを背景とする宣伝だろう。

しかしFTCの報告によると、Razer Zephyrは実際にはFDAやN95規格を定めたNIOSH(National Institute for Occupational Safety and Health・労働安全衛生研究所)によるテストには提出されておらず、N95グレードの認定も受けていなかったという。その後、FTCからの通知を受けた米国司法省がRazerを相手取り提訴。一方のRazerは問題の文言を公式サイトなどから削除し、「これはN95マスク/呼吸器ではありません」との注意書きを追加した。


結果として両者は和解し、Razerは製品の宣伝において、FDAの承認を得ることなく新型コロナウイルス関連の効果を主張することなどを禁じられた。さらに、10万ドル(約1600万円)の民事制裁金が課されると共に、Razer Zephyrの販売収益に相当する約107万ドル(約1億6900万円)を国に支払うことも命じられた。このお金をもとに、Razer Zephyrの購入者への返金対応がおこなわれるとのこと。

Razer Zephyrは、Razer Chroma RGB対応のライティング機能などのRazerらしい機能と、サイバーパンク風ともいえる奇抜なデザインにより、「ゲーミングマスク」などと呼ばれ注目を集めた。ただ、製品化のきっかけにもかかわる性能面での虚偽が明らかになるという、残念な結果となってしまった。なお本製品は現在販売されておらず、公式サイトやYouTubeなどでの関連情報もすでに削除されている。