『モンスターハンターライズ』最新アプデでPC版に「Steam Deckで起動しない」不具合発生。DRM刷新の影響がユーザーから疑われる

 

カプコンは1月22日、『モンスターハンターライズ』向けに最新アップデートを配信した。内容としては、コラボDLCの配信終了に伴うデータ更新のみ。ただアップデート後、PC(Steam)版のプレイヤーから「Steam Deckで起動しなくなった」との報告が相次ぎ、カプコンはこの症状について調査をおこなってると案内している。

本作は、人気ハンティングアクションゲーム『モンスターハンター』シリーズのひとつ。Nintendo Switch向けに2021年3月に先行して発売されたのち、PC向けにも展開され、2022年6月には超大型拡張コンテンツを追加した『モンスターハンターライズ:サンブレイク』が発売。またPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けにも本編および拡張コンテンツは発売された。『モンスターハンターライズ』本編は、2023年9月30日時点で累計1360万本を売り上げる大ヒットを記録している。


『モンスターハンターライズ』のPC版は、Valveの携帯型ゲーミングPCであるSteam Deckとの互換性が確認され、快適に動作可能と案内されている。しかし1月22日に配信開始された最新アップデートの適用後、プレイヤーからは「起動できなくなった」との報告が相次いだ。現時点で原因は不明ながら、カプコンが本作に新たに導入したDRM(デジタル著作権管理技術)による不具合ではないかと、コミュニティ内ではささやかれている。

本作のPC版には、Irdetoが開発したデジタル著作権管理技術「Denuvo Anti-Tamper」が導入されていたが、今回のアップデートによって削除された模様。カプコンからは特に公表されていないものの、Steamストアページから同DRMに関する記述が取り下げられている。一方で、コミュニティによる本作のデータ解析により、代わりに「Enigma Protector」と呼ばれる別のDRMが実装されたようだと指摘されている。

Enigma Protectorは、The Enigma Protector Developers Teamが開発するデジタル著作権管理技術で、ゲームファイルの改ざんやハッキング、違法コピーなどを防ぐ製品。実はカプコンは今年に入って、Steam向けの旧作にこのEnigma Protectorを次々に導入していると報じられていた(Polygon)。コミュニティ内では、いま旧作にDRMを導入する背景として、海賊版対策のためだけではなく、ユーザーによるMod導入を防ぐ目的があるのではないかという声が聞かれる。

 

Image Credit: Capcom R&D

カプコンは昨年10月、技術研究部門によるRE ENGINEに関するセッションを実施し、そのなかでPCゲームにおけるチート・海賊版対策について講演。ここではPCゲームにおけるModが“問題点”のひとつとして紹介され、同社としては公式に対応している場合を除き、すべてのModはチートであると定義していると明かされた。内部的な挙動は、Modもチートもまったく変わらないためだそうだ。また、悪質なModによって風評被害や業務負荷が発生することがあるとし、「(PCゲームを)出す以上は必ず対策を!」として締めくくられた。

講演では、あくまでチート・海賊版対策の文脈のひとつとしてModについて言及され、具体的にユーザーによるMod導入を防ぐ方策が述べられたわけではない。ただ当時、カプコンはModに対し不寛容であるとの受け止めがPCゲーマーのあいだで広がった。

そして、Enigma Protectorが導入されたとみられる一連のアップデート後、一部ユーザーからは「Modを削除しないと起動しない」などの報告が上がり、カプコンがMod排除を実行に移したのではないかとささやかれることとなった。ただ、タイトルあるいはユーザーによっては依然としてModは利用可能だとする報告もあり、情報が錯綜している状況である。


Mod導入の可否については、権利者であるカプコンの決定に従うべきではあるが、特に海外のPCゲーマーにとっては、Mod導入が阻止された(とみられる)ことが不満だった様子。Enigma Protectorが導入されたと報告されているタイトルのSteamストアページには不評レビューが多数投じられ、たとえば『バイオハザード リベレーションズ』の最近のユーザーレビューステータスは「圧倒的に不評」にまで低下してしまった。なお同作に関しては、「動作において不備が確認された」としてアップデートが撤回されている。

そして『モンスターハンターライズ』においても、同じく不評レビューが殺到。Modが使えなくなった、あるいはフレームレートが低下したなどの報告と共に、Enigma Protector導入への批判が寄せられている。そして同DRMが導入された副作用として、本作がSteam Deckで起動しなくなったのではと推測されることになった。


『モンスターハンターライズ』のアップデートについてカプコンは、Steam Deckでプレイできないという症状について確認しているとし、現在開発チームが調査をおこなっていると報告。調査に進展があり次第、改めて報告するとした。また海外向け公式SNSでは、修正アップデートを近日中に配信する予定であると案内された。ちなみに同投稿に対しても、Enigma Protectorの削除を求める意見が多数寄せられている。今後カプコンはどのように対応するのか、注目が集まりそうだ。

【UPDATE 2024/1/23 21:41】
カプコンは1月23日、『モンスターハンターライズ』のPC(Steam)版向けに修正パッチを配信。これにより、Steam Deckでプレイできない不具合が解消されたとのこと。