Apple、米国App Store向けアプリにて外部決済サービスの導入を解禁。ただし「新たな手数料」などの条件付き

 

Appleは米国時間1月16日、米国向けのApp Store Reviewガイドラインを更新し、「StoreKit Purchase Link Entitlement」の開発者への提供を発表した。これは、iOSおよびiPadOSの米国向けApp Storeで配信されるアプリについて、開発者が外部決済サービスを導入することを可能にするものである。


今回のApp Store Reviewガイドライン更新の背景には、AppleとEpic Gamesとの間での裁判がある。Epic Gamesは2020年にモバイル版『フォートナイト』に独自の決済手段を実装し、Appleは規約違反だとしてApp Storeから同作を削除。これを受けてEpic Gamesは、Appleが自社の決済手段をメーカーに強制することは市場を独占する行為であると主張し米国にて提訴した。

同訴訟の連邦地裁判決では、Appleは反トラスト法(いわゆる独占禁止法)の定める独占企業とは認められないとする一方、上述のAppleによるメーカーへの規制は反競争的であると認定。同規制の排除がAppleに命じられた。その後両社はそれぞれの立場から判決を不服として控訴し、1月16日に最高裁判所はいずれの訴えも棄却。裁判所はAppleに対し、規制を是正するよう通告した。


発表にてAppleは、米国の裁判所による決定に従い、App Store Reviewガイドラインに新たな項目(3.1.1(a))を追加し、「StoreKit Purchase Link Entitlement」の提供をおこなうと報告。Appleが提供する決済サービスはもっとも手軽で安全であるとしつつ、ユーザーを外部決済サービスへと誘導するリンクを、開発者が自らのアプリ内に追加する手段を提供するとした。たとえばゲームにおける少額課金やサブスクリプションの購入などを、App Storeではなく開発者の公式サイトなどでおこなえるということ。後述する手数料次第では、そうした購入にかかる料金が安くなる可能性がある。なお対象となるのは、あくまで米国向けApp Storeで配信されるアプリのみである。

外部決済サービスの導入を希望する開発者は、まずは「StoreKit Purchase Link Entitlement」を利用するための申請をAppleにおこない、承認を受ける必要がある。また、アプリ開発元の公式サイトなど外部決済サービスへのリンクのアプリ内での配置などについては細かい規定が存在。参考にできるテンプレートも用意された。

そして重要なポイントとして、ユーザーが外部決済サービスを利用した場合においても、Appleは開発者から手数料を徴収することも明らかにされた。App Storeを通じた決済では購入金額の30%が手数料として設定されているところ、外部決済サービスでは27%を支払うことを開発者に求めている。なお、年間収益100万ドル以内の小規模事業者を対象にした「App Store Small Business Program」に加入する開発者の場合は12%となる(App Store経由では15%)。また、ユーザーが外部決済サービス利用を選択し、外部サイトに移動してから7日以内におこなわれた購入が手数料徴収の対象になるとのこと。開発者には、各月末から15日以内に取引の詳細をAppleに報告する義務が課せられる。


Appleが、外部決済サービス利用に対し新たに27%の手数料を設けたことについて、Epic GamesのCEO Tim Sweeny氏は反競争的な行為だと批判。外部決済サービスを導入した場合、開発者は購入金額の3〜6%を決済事業者に支払うため、先述した購入にかかる料金の引き下げには繋がらず、価格的な競争が発生しないと主張した。また、ユーザーが外部決済サービスの利用を選択した場合に表示される、Appleによるサポートが及ばない外部サイトであるとする注意表記を「恐怖の画面(scare screen)」と表現し、競合する外部決済事業者を不利にする意図が見えると指摘した。

一方でAppleは、アプリ開発者はAppleが提供する技術やツール、そしてユーザーベースへのアクセスといった恩恵を受けているとコメント。開発者に提供している実質的な価値として、27%の手数料の合理性について説明している。ただTim Sweeny氏は、こうしたAppleの対応について今後連邦地方裁判所にて争うことになるだろうとも述べており、今後の動向が注目される。