Nintendo Switch向けドライブゲーム『Need for Spirit Drink & Drive Simulator』のニンテンドーeショップでの配信が10月25日に停止された。本作の対象年齢を示すレーティングに問題があったようだ。
『Need for Spirit Drink & Drive Simulator』は、オフロード車に乗ってさまざまな障害が待ち受けるコースを走破する、シンプルなドライブゲームだ。コースには砂漠や密林、高速道路などが用意され、そのなかでは大きな起伏を乗り越えたり、道なき道を進んだり、谷に架かる細い橋を渡ったりなどの難所が待っている。
本作はAtomic Fabrikが開発し、2018年にPC版が先行してリリース。そして、先日10月15日にNintendo Switch版が海外で配信開始され、日本でも10月19日に発売された。しかし欧州では、ほどなくしてニンテンドーeショップから姿を消し、本日10月25日になって日本でも配信停止された。
欧州地域のレーティング団体PEGI(Pan European Game Information)が海外メディアEurogamerに説明した内容によると、本作は全年齢対象を示す「PEGI: 3」にレーティングされていたが、実際には16歳以上対象となる「PEGI: 16」もしくは「PEGI: 18」に指定されるべきゲーム内容だという。つまりストアページに掲載されたレーティングが誤っていることから、取り下げられたのだろう。
実は本作では、ビールやワインなどのアルコール飲料をお祝いの場に配達する、という目的をもって車を走らせる。そしてゲーム画面が、酔っ払ったかのように歪むなどすることが特徴。開発元いわく“スリリングな要素”として導入したそうで、これもコースを走破するうえでの障害のひとつということのようだ。酒が入っているらしきタンクは車の荷台や屋根に積まれているが、ドライバーが盗み飲みしているという設定なのだろうか。ともあれ、ゲーム内に飲酒表現が存在するとなると、全年齢対象としてレーティングされることは基本的にありえない。
本作は日本では、ダウンロードゲーム・アプリを専門とするレーティング団体IARC(International Age Rating Coalition)により審査・付与されたレーティングをもって配信開始され、こちらも全年齢対象にあたる「IARC: 3+」となっていた。このことから、本作はまずIARCによる審査を受け、その結果を各地域のレーティング団体の対応するレーティングに変換して、それぞれの地域で発売されたようだ。
IARCは、PEGIなどが加盟して成り立っており、上述したように1回の審査で世界各地でゲームを配信できることが特徴である。日本のCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)は現時点で加盟していないため、日本ではIARCレーティングのまま配信されている(関連記事)。
IARCのレーティング審査は、アンケート方式の無料かつ簡便なものとなっている。本作の販売元がどのように申請したのかは定かではないが、審査過程でゲーム内容に関し十分な情報が提供されなかったために、誤って全年齢対象に指定されてしまい、そのままPEGIでも全年齢対象レーティングが与えられた模様である。
ニンテンドーeショップにて本作が配信停止となった背景として、もっとも重要な点は、本来指定されるべきレーティングとの差だ。仮に本作が、全年齢対象の1段階上のレーティング(PEGIであれば7)が正しかったとすれば、ストアページのレーティング表記を修正するだけで済む。しかし2段階以上の差があるとなると、任天堂は開発・販売元に対しゲームの再提出を求めるため、その作品の配信を一旦停止する。
前出のPEGIのコメントからすると、本作のレーティングは2段階どころか3〜4段階もの違いがあったことになり、配信停止もやむなしといったところ。PEGIなどでは、指定されたレーティングに齟齬がないかなどを、ゲームの配信後にもさまざまな観点からチェックしているという。そのなかで今回本作が発見され、任天堂に対応が委ねられた模様である。
なお本稿執筆時点で、『Need for Spirit Drink & Drive Simulator』の販売・開発元からは本件について特に声明などは出されていない。今回ニンテンドーeショップにて配信停止となったものの、レーティングの修正対応のみで済むとみられるため、いずれ再配信されるだろう。