『Starfield』の「局地的すぎる雨」がバレて、「エレベーターローディングごまかし術」など秘密の工夫が続々明かされる。隠されたゲーム開発の“節約術”

『Starfield』で「雨がキャラの周囲にしか降らない」ことを確認できるケースが報告された。これをきっかけに、開発者らが別の秘密のパフォーマンス向上法も紹介している。

Starfield』で「雨がキャラの周囲にしか降らない」ことを確認できるケースが報告され、注目を集めている。パフォーマンスへの負荷を減らす工夫と見られ、ほかのゲームでも一般的に採用される仕組みのようだ。この報告には別のゲームの開発者らも「“秘密”を暴かれた」と驚きの反応を示し、さらに別の秘密のパフォーマンス向上法も紹介されている。


『Starfield』は、『The Elder Scrolls』シリーズや『Fallout』シリーズの開発で知られるBethesda Game Studiosが手がけるRPGだ。プレイヤーは人類が太陽系外に進出している2330年の世界を舞台に、希少なアーティファクトを求める宇宙探検家集団コンステレーションの一員として、広大な宇宙の星々を冒険する。星によってさまざまな特色があり、気候の違いなども見られる。

今回、Redditユーザーthelastfastbender氏は本作の“雨”の仕組みを暴いたと報告。フォトモードでキャラからカメラを離すと「キャラの周囲にしか雨が降っていない」ことを確認できると紹介している。たしかに同氏の投稿したスクリーンショットでは、雨のエフェクトがキャラ周辺の限られた範囲にしか存在しないことが確認可能。また雨は空ではなくキャラの頭上の虚空からいきなり降り注いでいるようだ。なお弊誌で確認したところ同様の現象は見られず、雨はキャラではなくカメラに追従していた。フォトモードで確認できる局所的な雨は不具合かもしれない。

いずれにせよ、この奇妙な雨模様には注目が集まり、開発者のTom Francis氏がXアカウントにて引用。同氏は『Darkest Dungeon』シリーズの開発元Red Hook StudiosにてリードVFXアーティストを務める人物だ。同氏は「ゲーマーたちが開発者の“秘密”を知ってしまった」とコメント。そのほか『Dust』などの開発者David Szymanski氏も秘密を知られたことにたじろぐ反応を見せている。

Tom氏はVFXアーティストとして、こうした仕様となっている理由を説明。雨粒を必要最小限の範囲で描写することによって、パフォーマンス上の負荷を抑えられるからだという。また雨に限らず、雪やほこり、ホタルや草の葉など、画面上を飛び回るエフェクトは、基本的にはすべて必要最小限の範囲で描写する手法がとられているそうだ。

Tom氏の投稿を受けて、別のゲームの開発者らも続々と反応を示している。観念したのか、善意から知識を共有したいのか、さらなる“秘密”を暴露する開発者も散見される。たとえばBungieにてリブート版の新作『Marathon』のアソシエイト・ワールドデザイナーを務めるCollin MacGregor氏は、ゲームにおけるエレベーターなどの目的を説明。そうした要素は、ロード画面を誤魔化すために用いられていることもあるという。つまりゲーム内の地理的な高低差を移動させる目的だけでなく、ロード画面を挟まずシームレスにプレイヤーが移動したように感じさせる工夫となるのだろう。

また開発者のRegalisことJoonas Rikkonen氏は、オブジェクトの描写における秘密を紹介。同氏はサバイバルホラー潜水艦シム『Barotrauma』をフィンランドのスタジオFakeFishと共同開発した個人開発者だ。同氏によると基本的にゲーム内のオブジェクトは、カメラに映る部分だけが描写されるように作られているという。そのためプレイヤーから見えないオブジェクトの“裏側”は、透明のような扱いになっているそうだ。つまり箱状のオブジェクトであれば、内側をゲームプレイ上見ることがない場合、内側のテクスチャが用意されていないわけだろう。そのため、たとえばバグでそうした箱の中に視点がめり込んだり、“世界の裏側”にたどり着いてしまったりした場合、オブジェクトの表面や地面・壁などが裏側から透明に見える現象もそうした実装によると考えられるだろう(関連記事)。

そのほかBethesdaの過去作『Fallout 3』における秘密を紹介するユーザーも見られる。同作のDLC「Broken Steel」では地下鉄に乗って移動するイベントシーンが存在。この際、プレイヤーキャラを乗せて車両が実際に動くわけではなく、キャラが“頭に列車を装着して”動く仕組みになっているようだ。

Image Credit: PC Gamer

というのも、過去に海外メディアPC Gamerが検証したところによると、列車の3Dモデルが「DLC03MetroCarArmor」とされる装備アイテムのように扱われていることが分かったという。イベントにおいては、列車の操縦席にインタラクトすることでこのアイテムが装備され、「DLC03MetroCameraPackage」というアニメーションが再生される仕組みとのこと。頭部に列車のモデルを装着し、列車人間と化したプレイヤー自身が“出発進行”することで、あたかも動いている列車の操縦席に乗っているように見せかけたのだろう。既存のシステムを用いることでDLCの開発リソースを抑えつつ、通常プレイではプレイヤーが気づかないようにする巧みな工夫があったわけだ。

『Starfield』の雨の秘密が明らかになったことで、次々と紹介されるかたちとなったゲーム開発におけるさまざまな工夫。リソースの節約やパフォーマンスの向上などが図られており、それぞれプレイヤーが普通に遊ぶ分には気づかないかたちで隠されている様子だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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