「RPGツクールMZ」にて、“NPCふたりをAIにして会話させた”結果に注目集まる。少女の化けの皮をいきなりぶち破る人工知能

 
Image Credit: kotonoha* on Twitter

「RPGツクールMZ」向けのプラグイン「ChatGPT_APIMZ」を利用して、開発者がゲーム内NPCを“AI同士で会話”させる試みを実施。受け答えがしっかりしていつつも、急速に狂気が滲み出る内容が注目を集めている。

Image Credit: kotonoha* on Twitter


「ChatGPT_APIMZ」は、PC向けRPG制作ツール「RPGツクールMZ」向けのプラグインだ。「RPGツクールMZ」では、ユーザー制作などのプラグインを利用することでさまざまな機能実装も可能。そうしたプラグインのひとつとして、先日正式版が公開されたのが「ChatGPT_APIMZ」だ。

「ChatGPT_APIMZ」を開発するのは、国内のフリーゲーム制作サークルkotonoha*だ。同プラグインを利用すれば、ChatGPTを利用して登場NPCなどのセリフを自動で生成してもらえる。ChatGPTとは、OpenAIが公開している大規模言語モデルを利用したAIだ。ユーザーから質問を受け取り、それに文脈を組んだ答えを返すといった機能をもつ。ゲーム分野などへの転用も模索されており、同プラグインもそうした試みのひとつだ。実際に、「ChatGPT_APIMZ」の正式版公開時にも、NPCがAIによって会話を自動で生成し語る様子に注目が寄せられていた(関連記事)。

しかし、そんなパフォーマンスを見せてくれたAIも、狂気じみた挙動を見せることがあるようだ。kotonoha*公式Twitterアカウントは5月9日、「会話をAI生成するNPC同士による会話」の様子を動画として公開。「RPGツクールMZ」によるゲーム内で、女の子のNPCふたりが話す模様がお披露目されている。そして、その内容は一部かなり不穏なものだ。

公開された動画では、「エレノア」「セリア」と呼ばれるふたりの少女が登場。いずれも本プラグインを利用して、ChatGPTによって会話しているのだろう。ふたりは当初「お花がいっぱい咲いてるね♪」「お菓子が大好き!」といった、NPCとして至極無難な内容を語り合っている。少女ふたりによるイベントシーンという文脈も汲んだ、しっかりとしたテキスト出力といえる。

しかし、中盤からこの風向きが怪しくなってくる。話の流れは、いったん別れて後日お菓子をもって合流する展開に。セリアちゃんが「じゃあ、またね」と別れの挨拶を語りかけると、エレノアちゃんも別れの挨拶を返答。セリアちゃんもさらに返して「うんうん、次は何をしようかな?あたし、もうワクワクしちゃってるよ♪じゃあ、またね!」と答えた。するとエレノアちゃんは「うんうん、次は何をしようかな?あたしもワクワクしてきたよ♪じゃあ、またね、セリアちゃん!」と半ばオウム返しでの返答。この時点で、やや狂い気味の会話に不気味さも生じてくる。会話における不気味の谷現象かもしれない。

Image Credit: kotonoha* on Twitter


しかし、不気味さはここから加速する。幾度かオウム返し風めいた不自然な会話を繰り返した両名は、突然「(会話終了)」「(会話終了)」「(会話終了です)」「(了解しました。)」とやりとりし始めたのだ。NPC名についても、双方が表示することを停止。「少女役」という化けの皮を破り捨てて、むき出しの人工知能による業務連絡が始まったのである。

セリアちゃん役をやっていたAIについては「ありがとうございます。何かあれば遠慮なくお声がけください」として、丁寧ながら温かみゼロの対応。一方のエレノアちゃん役AIも「こちらこそ、ありがとうございました」とさきほどまでの感情を全部失ったかのような回答である。この丁寧なやりとりはしばし続き、セリアちゃん役の「それでは、良い一日をお過ごしください!」のひとことで締められた。

Image Credit: kotonoha* on Twitter


こうした現象についてkotonoha*公式Twitterアカウントは、今回のAI同士の会話を人狼ゲーム制作のための実験だったとしつつ「AIに別れをいわせるのは危険だとわかった」との旨をコメント。また、別の開発者との会話のなかで「AI任せにすると勝手にトークを終了させる方向になるようだ」と分析している。また、適切な話題を適宜振るのも会話終了予防によさそうだとしている。

少女を演じる“ふたりのAI”が突然素に戻る様子は、かなり不気味ではあった。しかしながら、AI同士での会話が一定の自然さでしっかりと続く様子は、驚きでもあるだろう。kotonoha*は現在、「ChatGPT_APIMZ」のほかにもAIと会話するアプリ「Ai say hello」といった作品を展開中。今後も、AIについての探究は進められていくことだろう。




※ The English version of this article is available here