Steamには10万円超えのゲームがいくつも存在するとの報告。異常な価格とチープなスクショ、そして開発者の思惑

 

Steamには、日本円にして10万円を優に超える価格で販売されているゲームが複数存在することが報告されている。常軌を逸した価格で販売されているゲームにもそれぞれ事情がある様子ながら、価格に見合うクオリティかどうかは疑問な内容となっている。


Steamでは販売者がゲームの価格を設定可能。リリース後30日間は価格の変更は原則認められないものの、その後は必要に応じて価格変更が可能とされている(Steamworks)。また米ドル価格に基づき、自動でほか通貨への値段を算出する機能も用意。Steamでの独自基準にて、数十通貨に対する推奨価格を設定してもらうことも可能。ただし、販売者はこの価格を採用せずに独自の価格を設定することも可能となっている。

ゲーム関連企業でデータスペシャリストを務めるというGus Alvarenga氏は4月20日、Steamに約1000ドル(約13万円)超えのゲームが複数存在すると報告。Steamにて高額で販売されている3つのタイトルを挙げている。

Alvarenga氏がまず挙げたのは『The Hidden and Unknown』(関連記事)。本作は今年1月に発売された作品で価格は日本円では22万円。米ドルでは1999.9ドル(約27万円)で販売されている。本作は、テキストベースのアドベンチャーゲームだ。本作の目的は「心理学的・哲学的に、プレイヤーの認知を拡張すること」とされている。

なお本作のSteamストアページのゲーム説明では、「もしもあなたが、合理的に行動するかわりに怒ったりしやすいタイプなら、このゲームは買わない方がいいでしょう」との注意書きも。海外メディアのPCGamesNのインタビューに対して開発者ThePro氏は、本作は同氏の人生に基づいて個人的部分に深く踏み込んだ作品だとコメント。同氏は「自分の人生を20ドルといった価格で売るつもりはない」とも述べており、22万円は間違いでもおふざけでもなく本気の価格設定と見られる。ただ、Steamユーザーレビューでは件数全体が少ないなかで不評の多さが目立つほか、作中で性差別的表現が目立つとの意見も寄せられている。

ほかにAlvarenga氏が挙げたのは、『The Official GamingTaylor Game, Great Job!』だ。本作は2018年1月に発売された作品で、10万100円で販売されている。ジャンルは3Dゾンビシューターとされている。Steamストアページ上の動画を見るに、次々と空中から湧き出てくるゾンビをひたすら撃ち倒すゲームになる様子。10万円にしてはかなりチープなゲームプレイとなっている。

本作は当初100円で販売されていたものの2018年9月に1010円に値上げ。その後2020年7月に1万10円に値上げされ、さらに今年1月に10万100円となった。なぜか10倍ずつ価格が引き上げられてきたようだ。Steamスプリングセールでは90%オフとなる1万10円で販売されていた。なお本作は米ドルではなぜか9.99ドルで販売。米ドル向けには0.99ドルから9.99ドルへの引き上げ以降、価格の変更がおこなわれていない(SteamDB)。

そのほかの高額ゲームとして、Alvarenga氏は『Ascent Free-Roaming VR Experience』を紹介している。本作は2019年12月に発売された作品で、価格は12万円。米ドルでは999ドル(約13万円)で販売されている。本作はVR対応作品であり、最大4人で協力プレイが可能とのこと。

本作には7件のレビューが寄せられており、うち6件が好評。1件はロシア語ながら、そのほか5件のレビューにはすべて「Not Bad(悪くない)」とのみ記載されている。ゲーム内容にほとんど触れておらずプレイ時間もごくわずか。一方で返品済みのレビューはひとつしかない。いずれのレビューにも「参考になった」「面白い」とする投票が多数寄せられており、奇妙な状態である。そうした不可解なレビューも踏まえてあるユーザーは、「マネーロンダリング目的で販売されているゲームではないか」との推察を述べている。

そのほか過去には、開発者が悪ふざけで申請した50万2634米ドル(当時のレートで約6500万円)という価格がそのままSteamに承認されてしまったゲーム『MEGAJUMP』も存在する(関連記事)。同作はSteam史上もっとも高額なゲームとなったものの、その後開発者により自主的に販売停止される一幕があった。ちなみにその作品は現在、Steam史上最高額から一転して、無料で配信中となっている。

10万円超えのゲームが複数販売されているSteam。自分のゲームを、並々ならぬこだわりから高額で売る者、なぜか10倍ずつ値上げする者、ふざけて設定した高額がそのまま承認されてしまった者。Steamにて常軌を逸した高額で販売されるゲームにも、さまざまな事情があるようだ。いずれにせよ、どれもスクリーンショットやトレイラーを見る限りは、価格に見合ったクオリティはなさそうである。ゲーム自体を遊ぶために実際に進んで大枚をはたいたユーザーがいるのかは疑わしいところだ。