Steamにて“価格22万円”のゲームが発売され注目集める。開発者は大真面目で、「買えないなら買わないで」と呼びかけ

『The Hidden and Unknown』を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)で、価格は22万円。弊誌の誤記ではなく、実際に税込22万円で販売中である。

ProXは1月23日、『The Hidden and Unknown』を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)で、価格は22万円。弊誌の誤記ではなく、実際に税込22万円で販売中である。


『The Hidden and Unknown』は、テキストベースのアドベンチャーゲームだ。本作の目的は「心理学的・哲学的に、プレイヤーの認知を拡張すること」とされている。ゲームプレイとしては、一般的なビジュアルノベルとして進行するようだ。プレイヤーは主人公となり、人との交流を重ねつつ時に選択を迫られる、ストーリー重視の作品となっている様子だ。

ただ、本作のさらなる詳細は曖昧だ。Steamストアページのゲーム説明では、「小さな出来事がいかに人生に大きな影響を与えるか」といったテーマが語られている。しかし、全体としてはあまり要領を得ず、「文明の進化」「現実を無視せず、それについて考えてみてほしい」といった、プレイヤーを啓発するような文言が目につく。また、「もしもあなたが、合理的に行動するかわりに怒ったりしやすいタイプなら、このゲームは買わない方がいいでしょう」との注意書きも。どういった体験ができるのか謎めいたゲームであり、22万円(米国向けには 1999.9ドル)という価格設定を踏まえると尚更だ。


本作の価格は、本稿執筆時点におけるSteam販売ソフトでは最高値と見られる。次点としてはVR向けゲーム『Ascent Free-Roaming VR Experience』が配信されており、こちらも12万円(米国向けには999ドル)という高額。しかし、『The Hidden and Unknown』はよりシンプルなビジュアルノベルとして、その2倍近い強気の価格設定となっている。冗談か、あるいは設定ミスとも思えるこの価格設定ながら、開発元は本気のようだ。

『The Hidden and Unknown』を開発しているProXは、とある理念を掲げる集団だという。同団体の説明動画によれば、ProXは「Learn. Understand. Adapt. Grow.(学習・理解・適応・成長)」を繰り返して生きる人々の集まりだそうだ。具体的には何をする団体なのか、何名ほどが所属しているのか、筆者が調べた範囲では明示されていないようだった。ただ、同団体のDiscordサーバーでは「ThePro」なる人物がこの団体の中心となっているようで、本作を開発したとも語っていた。

海外メディアPCGamesNは、本作の価格設定に着目。この高額ゲームを紹介しつつ、上述のThePro氏にインタビューを実施している。同誌によれば、ThePro氏はスロバキアからスイスに移住した人物だという。また、本作は同氏の人生に基づいて、個人的部分に深く踏み込んだ作品だという。本作の強烈な価格設定の理由について、ThePro氏は「自分の人生を20ドルといった価格で売るつもりはない」と語ったそうだ。ほか、同氏は「問題を起こしたくないので、本作を買えない人は買わないように」との旨も伝えている。22万円は間違いでもおふざけでもなく、本気の価格設定と見られるわけだ。


本作が実際に22万円に見合った価値があるのかは、極論をいえば遊ぶ人次第だろう。ただ、その価格ゆえか本作のSteamユーザーレビューは少ないものの、好評レビューの内容としては「所有すれば金持ちだと自慢にはなるのでは」「買う価値あり」といったコメントが中心。一方で不評レビューの内容としては「テキストの質が低い」といった直球の指摘のほか、作中に性差別的表現が見られるとの問題提起も見られる。ただ、実際のクオリティを確かめようにも22万円という価格の壁は分厚い。現状では、開発元の得体のしれなさと、価格の強気さだけが伝わってくる状態だ。

『The Hidden and Unknown』はPC(Steam)向けに配信中。価格は22万円。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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