『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、ポケモンSV)の登場キャラであるアオキとチリ。それぞれユーザーから人気のキャラであり、いわゆるカップリングを描いた二次創作イラストなども数多く制作されている。この「アオチリ」カップリングを目にした海外ユーザーたちが人気の理由を不思議がり、海外掲示板Redditに素朴な疑問を寄せている。
なお本稿にはゲーム終盤に関する内容を含むため留意されたい。
『ポケモンSV』は『ポケットモンスター』(以下、ポケモン)シリーズの最新作。ゲームフリークが開発を手がける。本作ではオープンワールドを舞台に、ほぼ境目なく広がる街や大自然を楽しめる。また、ジムバッジを集めてポケモンリーグに挑戦する要素は本作でも健在だ。チャンピオンの前に戦う四天王も登場。アオキ、ポピー、チリ、ハッサクの4人が主人公の前に立ちはだかる。
一定の人気を博す「アオチリ」カップリング
今回、Redditユーザーが不思議に感じているのはアオキ(英語名Larry)とチリ(英語名Rika)の“カップリング”についてだ。ここでいうカップリングとは、主にユーザーによる二次創作において、2人のキャラの恋愛関係や交友関係を描く文化を指す。海外ではrelationshipが語源とみられる、shipやshippingなどの言葉で表現される。
本稿執筆時点でイラスト投稿サイトpixivにおける「アオチリ」タグのイラストは292作品。「アオチリ」のほかにも、より多くのイラストが投稿されている『ポケモン』シリーズキャラのカップリングタグはある。しかし、『ポケモンSV』が2022年11月発売である点を踏まえれば、急速に人気が高まっているカップリングといえるだろう。
Redditに投じられたスレッドは、pixivにて「アオチリ(Larry/Rika)」カップリング(ship)のイラストが多数投稿されている点を指摘。なぜここまで「アオチリ」のカップリングが人気を博しているのかをユーザーたちに尋ねている。そしてその理由を、一生懸命考えている。
海外ユーザーの考える「アオチリ」人気の理由
海外ユーザーたちが予想するアオチリのカップリング人気の理由はさまざまだ。あるユーザーはそもそもアオキとチリが本作の人気キャラであると言及。人気キャラ同士のカップリングゆえに、作品数が多いとの見方だろう。ほかには「(アオキとチリが)ポピーのパパとママのように見えるから」との意見も。ポピーは少女のキャラであり、アオキとチリとあわせて家族のような間柄を連想させるという発想だ。そのほか同じ四天王に属している点や、2人ともネクタイやスーツを着用しているといった共通点を理由として挙げるユーザーも見られる。
正反対(?)なアオキとチリ
一方でアオキとチリの性格が正反対である点を、カップリング人気の理由とみる意見もある。アオキは“擦れたサラリーマン”のようなキャラであり、言動もかなり落ち着いている。四天王や兼任するチャンプルジムリーダーとしての活動を基本的には仕事と捉えている様子で、サラリーマンの悲哀を感じさせるセリフをこぼすこともしばしば。また常に無表情であり、感情を表に出さない点も特徴だろう。
対するチリはクールそうなビジュアルと裏腹に、かなり気さくな人物。日本語版では一人称が「チリちゃん」で、普段のセリフは関西弁(『ポケモン』世界では、主にジョウト地方コガネシティの方言とされる)。親しみやすいキャラとして描かれている一方で、チャンピオンリーグ挑戦時の“面接”の際には口調は敬語になり至って真面目な対応。その後の四天王戦では、戦いに熱中して語気を荒げる様子も見られる。さまざまな一面をのぞかせるキャラといえるだろう。
そんな対照的な2人のカップリングは、意外な組み合わせにも思える。普段のやりとりが想像しがたいからこそ、二次創作の余地が大きく、それを見る者にも楽しみを与えているのかもしれない。スレッド内には、本編ではなく日本語の二次創作を目にしてから「アオチリ」のカップリングが大好きになったというユーザーも見られる。
「アオチリ」の二次創作においては、積極的にアプローチするチリと平静を装いつつ動揺するアオキの関係を描く作品が多い。作品によっては、我慢の限界で積極的になるアオキが描かれることも。「アオチリ」のカップリングが好きになったという海外ユーザーは、二次創作で描かれるそんな2人の性格の相性の良さを気に入っているようだ。
そのほかReddit内では、日本人からの人気の高さもあってか、日本語版でのセリフ表現に興味をもつ声もみられる。日本語版ではチリが関西弁を話すこともあり、よりアオキとの対照性が際立っている側面はありそうだ。ちなみにイタリア語版のチリは、中部イタリアの方言(romanesco)で話すという。
ちなみに本編においてのアオキとチリのやりとりとしては、四天王のアオキとの対戦後の会話シーンが挙げられる。アオキが敗北後に次の四天王であるハッサクを呼ぶものの、声が小さくてハッサクは出てこない。見かねたチリが声を大きくするよう促すもあまり効果がなく、結局チリが大声でハッサクを呼びつけるという場面だ。落ち着きすぎなアオキと世話焼きなチリという2人の日常が少しうかがえるシーンだろう。
一方でそのほかにアオキとチリがやりとりするシーンは見られず、関係性は不明瞭。Reddit内にも2人が恋愛関係にあるとは思えないとする声はあり、あくまで「アオチリ」のカップリングは一部ユーザーによる二次創作である点には注意したい。
国内の一部ユーザー間で、一定の人気を博す「アオチリ」カップリング。海外ユーザーがそれを不思議がる背景には、ゲーム内言語の違いによるキャラへの印象や、国による価値観の違いなど、さまざまな要因が関わっているのかもしれない。いずれにせよ、個人の楽しみの範囲内で、作中キャラの関係性を想像してみるのも面白いだろう。
『ポケモンSV』はNintendo Switch向けに発売中だ。
※ The English version of this article is available here