『ポケモンGO』開発者、「プレイスタイルの相違」から脅迫を受け困惑。不具合がもたらしたすれ違い

 
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ポケモンGO』におけるとある不具合が発端となり、スタッフがユーザーからの批判にさらされる事態に発展した。スタッフの元には、脅迫メールまで届いているという。Eurogamerなどが伝えている。


『ポケモンGO』においては、最近になりゾロアとゾロアークが正式に実装された。ゾロアは、『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』にて初登場したわるぎつねポケモン。『ポケモンGO』においてのゾロアは、相棒ポケモンに化けてフィールドに登場する仕様となっている。たとえば、フシギダネが相棒ポケモンならフシギダネとして登場。捕まえた後に、変身が解けてゾロアへと変化する。

特殊な仕様が災いしてか、ゾロアは不具合に見舞われることになった。本作運営元Nianticの公式サポートTwitterアカウントは10月29日、ゾロアに関して不具合が発生していることを報告。問題の調査のため、ポケモンGO PlusやモンスターボールPlusといったBluetooth周辺機器の一時的に無効化すると発表した。

ポケモンGO PlusおよびモンスターボールPlusは、『ポケモンGO』のプレイに役立つ便利なデバイスだ。ポケモンやポケストップに近づくと振動。ポケモンの捕獲やアイテム獲得を、スマートフォンでアプリを操作せずにおこなえる。より効率的なプレイを目指す際には、頼もしい周辺機器といえる。

そんな周辺機器の無効化を知らせた公式告知には、数多くのユーザーが返信。不具合がいつ修正されるのかを気にかけ、運営元に問いかけるユーザーも多数。周辺機器は一部ユーザーにとってプレイの上で重要な役割を担っているわけだ。

こうしたユーザーの動きに対し、『ポケモンGO』のコミュニティマネージャーを務めるKelsey Danger氏が興味を示した。同氏によれば、個人的にはポケモンGO PlusやモンスターボールPlusを使用するプレイスタイルを楽しいとは“考えていない”とコメント。というのも、同氏は『ポケモンGO』については「プレイしたいと思った時」に遊ぶのが好きだという。デバイスを使って常に“『ポケモンGO』モード”にはいっているわけではなく、気が向いた時に遊ぶというわけだ。

たとえばDanger氏は本ツイートの数日前、ピッツバーグの都市部にて『ポケモンGO』をプレイしポケストップを回したタイミングで、たまたま“虎の王の壁画”を発見したとのこと。普段見つけられない街の景色を気づかせてくれる機会をもたらしてくれたようだ。同氏の発言からは、「周辺機器メインで遊んでいるとそうした発見を楽しむ余裕もなくなってしまうだろう」といった意図が見え隠れする。

Danger氏の一連のツイートは、ある問題を引き起こした。実は一連のツイートの冒頭で、同氏は周辺機器の無効化を嘆くユーザー反応に対して“interesting”と述べていた。同氏としては、ユーザーたちと自身のプレイスタイルが異なる点を、純粋に興味深く感じての発言だったかもしれない。しかしながら、これがユーザーへの挑発に捉えられたようだ。

Danger氏はこのツイートに続いて、すぐさまユーザーたちを侮辱したわけではないと補足していた。しかしながら、周辺機器の不具合に憤る一部ユーザーにとって、同氏の一連のツイートは火に油を注ぐ事態となってしまった。約50ドルで販売している公式周辺機器が無効化されている状況で、コミュニティマネージャーの立場にありながら「その周辺機器が好きじゃない」と述べた同氏に疑念が寄せられたわけだ。

そうした批判を受けて、Danger氏も反応。周辺機器が使えなくなったユーザーたちの批判に理解を示し、自分のプレイスタイルを彼らに押し付けてしまった点を謝罪している。また自分の考え無しの発言に怒りを覚えるユーザーがいるのはもっともであると続けた

しかし、矛を収めなかったユーザーもいるようだ。その後、Danger氏の元には“暴力的な脅迫(violent threats)”を含むメールが届き始めたというのだ。これを受けて同氏は、スレッド元となる先述の “interesting”と発言したツイートを削除するに至った。同氏は、ユーザーの怒りは自身のミスが引き起こしたものであるとコメント。厳しい意見をぶつけるユーザーとの対話も厭わない構えでいた一方で、さすがに見過ごせないレベルに達したと判断したそうだ。

Danger氏へのあるまじき脅迫メールには、ユーザーコミュニティも怒りをあらわにしている。海外掲示板Redditではあるユーザーが、過去に起きた同様の事例に言及。かつて本作のシニアマーケティングマネージャーを務めていたLiz George氏が批判にさらされ、Twitterアカウントを一時削除するまで追い込まれてしまった点を指摘している。なおGeorge氏はその約1か月後、Nianticを退職するに至っている

スレッド投稿者は、Danger氏やGeorge氏はあくまでユーザーコミュニティとの窓口であり、『ポケモンGO』の調整方針や修正における直接的な決定権を有しているわけではない点を強調。過去の事例から過ちを学ぶように、ユーザーに呼びかけた。同スレッドには投稿者への賛同のほか、脅迫者を強く批判する意見が数多く寄せられている。脅迫メールの送信者に対しては、法的措置を求めるユーザーも見られた。スタッフへのハラスメントや脅迫については、ユーザーコミュニティ内で問題視する動きもあるわけだ。

別のゲームにおいては、過去にユーザーからの脅迫によって、開発者とコミュニティの交流が減った事例も見られる。また脅迫でなくとも、ゲームへの不満を逸脱したハラスメントは開発者たちを悩ませている問題の一つだ(関連記事1関連記事2)。長期運営型ゲームの開発においては、ユーザーからの生の声は貴重だ。一方でその窓口となるスタッフはユーザーとのトラブルに巻き込まれたり、苛烈な攻撃に晒されたりするケースもある。開発・運営元には、今後も一部の攻撃的なユーザーからスタッフを守る施策が求められるところだろう。

なお今回の一幕の発端となった、ゾロアの不具合については現在修正済み。ポケモンGO PlusおよびモンスターボールPlusは問題なく使用できる。