『VALORANT』PBE新パッチ5.03パッチノート公開。チェンバーが大幅弱体化、アルティメットに部位ダメージ判定を追加など

 

Riot Gamesは7月30日、『VALORANT』PBE(パブリックベータ版)の新パッチ5.03のパッチノートを公開した。チェンバーが大幅に弱体化されるほか、アルティメットアビリティーに部位ダメージ判定が追加されるなど、さまざまな変更が追加される。

なお、現在北米地域限定で実施されているPBEは、実際の『VALORANT』に新パッチを適用する前段階の「テストサーバー」的な立ち位置。実際に正式リリースされるかどうかは、一般ユーザーからのフィードバックを受けて決定される。 また、本稿に記載のパッチノート内容は、公式訳ではなく英語原文を筆者が翻訳したものとなる。


ゲームエンジンのアップデート

『VALORANT』で使用されているゲームエンジン (Unreal Engine) のアップデートが、今回のPBEに適用される。詳細は以下の通り。

Unreal Engine 4.26 へのアップグレードが完了し、今回のPBEではこのエンジンでプレイしていただきます。現在、多くのデータと統計を収集し、状況を確認しているところです。


エージェントのアップデート

今回のアップデートの目玉はチェンバーの調整である。チェンバーの全アビリティーに対して下方修正が入り、大幅に弱体化されることになる。詳細は以下の通り。

ランデヴー(E)

  • 基本クールタイムが増加:20秒 >>> 30秒
  • リコールクールタイムが増加:20秒 >>> 30秒
  • ランデヴーアンカーが破壊される度にクールタイムが45秒に設定される
  • 有効範囲の半径が減少:21m >>> 15m

トレードマーク(C)

  • スロウの継続時間が減少:9.5秒 >>> 6秒

ツール・ド・フォース(X)

  • 必要なアルティメットポイントが増加: 7 >>> 8
  • スロウの継続時間が減少:9.5秒 >>> 6秒

ヘッドハンター(Q)

  • 弾のコストが増加:100 >>> 150

ランデヴーの「有効範囲の半径」については、『VALORANT』ゲームデザイナーのpenguin氏による追加の説明ツイートが画像付きで分かりやすい。どうやら、アンカー設置後にチェンバーがテレポート可能となる範囲の半径が、一回り小さくなるようだ。

※ ランデヴーの比較画像。”live” が現在のライブパッチ、”prototype” が現在実施中のPBEパッチにおける有効範囲を表す


アルティメットアビリティーに部位ダメージ判定を追加

ほかには、一部のアルティメットアビリティーに対して、一般的な武器と同様に「部位ダメージ」の判定が追加される。詳細は以下の通り。

ネオン – オーバードライブ(X)

  • 1発のダメージが減少:22 >>> 18
  • キルゾーンが増加:15m >>> 20m
  • レッグショットのダメージ倍率が減少:1.0 >>> 0.85
  • ヘッドショットのダメージ倍率が増加:1 >>> 3

チェンバー – ツール・ド・フォース(X)

  • レッグショットのダメージ倍率が減少:1.0 >>> 0.85

ジェット – ブレードストーム(X)

  • レッグショットのダメージ倍率が減少:1.0 >>> 0.85

チェンバーについては先述の弱体化に加えて、さらに弱体化が入ることになる。従来のアルティメット「ツール・ド・フォース」は、脚部に直接ヒットしたとしても150ダメージを与えていたが、これが通常の武器と同様にダメージ減衰が入るわけだ。


チェンバー弱体化の背景

パッチノートでは、今回のチェンバーの弱体化について背景が語られている。パッチノートの冒頭では「コンペティティブとプロシーンの両方でプレイヤーがチェンバーを使いこなすにつれて、チェンバーの長所が短所を覆い隠し、ランデヴーなどへの対処法は我々が期待するほど効果的ではなくなってきました」と述べられている。つまり、多くのプレイヤーがチェンバーに対して十分に熟練。同キャラの性能が引き出されるにつれ、平均的なパフォーマンスが高くなりすぎたと、開発陣は見ているようである。

また、ランデヴーの変更については「チェンバーのランデヴーは強力なエリア確保を目的としていますが、実際は余裕のある半径のおかげで、意図以上のエリアを確保出来ていました」と、現在のランデヴーの問題点に言及。その上で、「今回の変更により、チェンバーがオフアングルを利用するのにより一層の努力が必要となりました」と説明されている。まとめると、チェンバーのランデヴーを利用したオフアングルによるエリア確保が強力すぎたため、今回のような弱体化が入ったようだ。


プロシーンにおけるチェンバー

実際のところ、現在の『VALORANT』プロシーンにおけるチェンバーの評価はどうなのだろうか。以下は世界大会における、各エージェントのピック率の変化である。1つ目の画像は2022年4月に開催された「VALORANT Champions Tour 2022: Stage 1 Masters – Reykjavík(以下、VCT Stage 1)」におけるピック率をまとめたものである。本大会は日本代表チーム ZETA Division が世界3位の大躍進を遂げ、日本中のファンが熱狂の渦に巻き込まれたことで記憶にも新しいだろう。一方、2つ目の画像はつい先週に全日程が終了したばかりの世界大会「VALORANT Champions Tour 2022: Stage 2 Masters – Copenhagen(以下、VCT Stage 2)」におけるピック率をまとめたものである。なお、画像はどちらも『VALORANT』統計情報サイトRun It Backから引用した。

※ VCT Stage 1 における各エージェントのピック率
※ VCT Stage 2 における各エージェントのピック率


チェンバーは最近の世界大会でピック率が7割を超えており、2位のレイズと大差を付けてダントツの1位である。特筆すべきは、チェンバーに強化が入ってこのような結果となったわけではなく、むしろチェンバー自体には以前から弱体化が入っており、なおピック率が上がっているという点である。VCT Stage 1 における適用パッチは4.05、VCT Stage 2 における適用パッチは5.0であり、両者の間では下記のようなエージェントの調整とピック率への影響が見られた 。

ジェットはパッチ4.08のテイルウィンド(ブリンク)の仕様変更が響き、ピック率は大幅に下がっており(65% >>> 17.42%)、その代わりとして同じデュエリストであるレイズが大幅にピック率を上げている(28.33% >>> 53.79%)。また、ソーヴァはパッチ4.08で入った弱体化と同時に、同じリコンの役割を持つ新エージェントのフェイドが候補に入ったことが影響し、大幅にピック率が下げている(49.17% >>> 18.94%)。一方で、チェンバーはパッチ4.09にてトレードマークに関する弱体化(チャージ数が減少:2 >>> 1)が入ったにもかかわらず、大幅にピック率が上昇している(44.17% >>> 76.52%)。ほかのセンチネルに対して能力に変更がないことも考慮すると、これはチェンバーが未だに強力なエージェントであることを示しているだろう。


実は予告されていたチェンバーの弱体化

チェンバーの弱体化が近々おこなわれること自体は、実は海外掲示板 Redditのとあるスレッドにて開発者から予告されていた。投稿の内容は、VCT Stage 2 の約半分である70試合が終了した時点における、各エージェントのピック率をまとめた途中経過についてである。チェンバーのピック率はこの時点で80%を記録している。

この投稿に対して、とあるユーザーは暫くチェンバーへの調整は来ないだろうとコメント。「パッチ4.09におけるチェンバーの弱体化で、開発側は調整を果たしたと思いこんでいるだろう」との意見をイヤミ混じりに投じた。これに対して『VALORANT』ゲームデザイナーのpenguin氏は簡潔な否定の言葉で回答。続けて「正確に言うと、バランス調整がもうすぐ来ます」とコメントしていた。 PBEに盛り込まれたチェンバー弱体化は、一部からは予期されていた出来事だったわけである。


まとめ

以上、PBEパッチノートの内容について、本作世界大会の統計データなどを織り交ぜつつ説明してきた。チェンバーの大幅な弱体化については、同エージェントを好む多くのプレイヤーにとって頭を悩ませるものだろう。なお、本記事の内容はあくまでテスト環境におけるパッチノートであり、正式リリース時には内容が変更される可能性があることに留意していただきたい。

『VALORANT』は、Riot GamesからPC向けに基本プレイ無料にて配信中。