『Call of Duty』新チート対策では「チーターから視界を奪う」弱体化システム導入。見えざるプレイヤーたちに弄ばれる、憐れな不正者たち

 

Activisionは4月26日、『Call of Duty(以下、CoD)』シリーズ向けのチート対策システム「RICOCHET Anti-Cheat」に関する進捗レポートを公開した。同レポートでは、検出されたチーターがみんなの“遊び道具”となる、新たな取り組みについて明かされている。海外メディアIGNなどが報じている。

Activisionは昨年11月より『CoD』シリーズに向けて、チート対策システム「RICOCHET Anti-Cheat」を導入している。同システムは、PCのカーネルレベルドライバを利用してのチート検出のほか、サーバー側での監視強化など、包括的かつ強力にチートを抑制する仕組みとなっている。RICOCHETは『CoD: Vanguard』を皮切りに、基本プレイ無料のバトロワ作品『CoD: Warzone』でも現在稼働しており、2月に発表されたレポートでは一定の成果を上げていることが報告されていた(関連記事)。


RICOCHETでは、チート利用者に対する処罰として、「Mitigation」と呼ばれるユニークな取り組みがおこなわれている。2月のレポートでは、このMitigationの例として、「ダメージシールド(Damage Shield)」が稼働していることが明かされた。ダメージシールドは、チート利用を検出した際に、そのプレイヤーがほかのプレイヤーに与えるクリティカルダメージを無効化するシステム。検出されたチート利用者の武器は著しく弱体化して、豆鉄砲のごとき威力となる、というものであった。

そして今回、RICOCHETのさらなる緩和処理として、「クローキング(Cloaking)」の導入が発表された。チート利用が検出され、クローキング機能が作動すると、ほかのプレイヤーを一切感知できなくなる。ほかのプレイヤーの姿が見えなくなるだけでなく、音まで聞こえなくなるという。反面、普通のプレイヤーからはチーターの姿が通常通り見えるため、みんなでチーターを一方的に攻撃をすることが可能だ。チーターからすれば、誰にどこから攻撃されているのかまったく分からない。そのため、周りのプレイヤーたちは、キョロキョロと慌てふためく、チーターの滑稽な姿も楽しめるというわけだ。

チートが検出された際のアンチチートツールの挙動としては、マッチからの追放、ゲームの強制終了、およびアカウントの停止などが一般的だろう。RICOCHETではそうせずに、あえてマッチを継続させることで、「不正行為を特定するために不可欠なデータを収集している」のだという。普通のプレイヤーにとっても、憎きチーターを返り討ちにする良い機会となる。そのうえ、チーターからすれば、普段の自分の悪行がそっくりそのまま返ってくるようなもの。ある種、反省を促すような側面もあるのかもしれない。

クローキングシステムを実装するRICOCHETのドライバーアップデートは、まず『CoD: Vanguard』に向けて配信。その後、『CoD: Warzone』向けにも配信されるとのこと。なお、RICOCHETの成果として、まず3月19日には、9万個のアカウントをBAN処分にしたことが発表。そして4月27日には、さらに5万個以上のアカウントをBAN処分としたことが発表されている。それに加えて、BAN処分ではなく、緩和処理で泳がされているチーターもさらに存在するものと思われる。


一定の成果を上げつづけているRICOCHET。その一方で、チート開発者もまた突破手段を模索していることを、運営チームは認識しているという。RICOCHETでも検出できないチーターに備えて、ゲーム内の報告ツールを引き続き活用するよう、プレイヤーに呼び掛けている。

PC向けの対戦ゲームにおいて、開発者を悩ませ続けるチーター問題。ちなみに、チート対策において成功を収めている『Valorant』では、チーターをチート対策チームに雇い入れるという、思い切った施策が打たれている。チーターを単なる敵とみなすのではなく、彼らがチートに手を染める理由を分析していることが、功を奏しているのだろう。昨今のチーター対策においては、単にBANするのではなく、泳がせる、懐柔するといった柔軟な対応が求められているのかもしれない。