とあるゲームのThe Game Awards受賞トロフィー、ネットオークションで売られていた。約4年越しに開発陣のもとへ

Image Credit: PrestigeIsKey on YouTube

ゲームの祭典「The Game Awards」にて授与されたはずのトロフィーが、ネットオークションで売られていた。発見したYouTuberが同トロフィーを購入し、本来の所有者である開発元へ返却したようだ。

The Game Awardsは、年に一度開催されるゲームの祭典だ。一年間のベストゲームを決める「Game of the Year」のほか、さまざまな部門の優れた作品に賞が与えられる。また、式典中に新作情報などが明かされることも多く、ゲーマーたちの注目度も高い。そして、受賞した開発者たちに与えられる翼の生えた女性のトロフィーは、たゆまぬ開発努力と作品の上質さが認められた証。有翼の女神像の如き輝きを放っている。受賞者から壇上で掲げられたり、その重みについてコメントされる場合も多い。同イベントの映像を見たことのある方は、印象に残っていることだろう。


そんな栄誉の証であるトロフィーの実物が、あろうことかオークションサイトeBayに出品されていたというのだ。しかも即決価格500米ドル(約5万8000円)で。値段が高いか安いかはともかく、本来は売り買いされるような物品ではない。トロフィー販売ページを発見したのは、YouTubeチャンネルPrestigeIsKeyを運営するRyan B.氏だ。同氏は、オフィスに飾るためにThe Game Awardsトロフィーのレプリカを購入しようと思い立ったとのこと。そこでeBayにて良さげなトロフィーを探していると、いきなり本物のトロフィーと主張するオークションページを発見してしまったのだ。

Image Credit: PrestigeIsKey on YouTube


本来であれば開発元に飾られているはずのトロフィーだ。オークションページによれば、販売者自身もこのトロフィーの出自については知らないとのこと。また、出品者のほかに売っていたアイテムは、ゲーム関連ではなく車のパーツなどが中心だったようだ。Ryan B.氏は訝しみつつも、賭けに出た。同氏が375ドル(約4万3000円)にて入札すると、すぐに落札・発送され手元に届いたようだ。

しかし、トロフィーがオークションで買えるなどというのはただ事ではない。Ryan B.氏は、「もしかしたら盗まれたのかもしれない」と考え、開発元に問い合わせたそうだ。トロフィーに刻まれたゲームの名は、2Dアクションゲーム『Celeste』。手がけたのはExtremely OK Gamesだ。幸いにも、Ryan B.氏は同スタジオにてオペレーションマネージャーを務めるHeidy Motta氏とコンタクトを取ることができたとのこと。そしてトロフィーについて訪ねてみると、Motta氏からは「トロフィーは私達の手元にはない」との答えが返された。つまり、怪しいトロフィーは本物だったようなのだ。『Celeste』は2018年に開催されたThe Game Awardsにてベスト インディペンデントゲーム部門などを受賞しており、開発陣が壇上にあがり、トロフィーを手に喜びをあらわにする様子も映像に残されている。


一度は掲げられたトロフィーが、なぜeBayに出品されていたのか?Ryan B.氏が問い合わせた内容によれば、開発陣が壇上で受け取ったトロフィーは、一旦The Game Awards側に返却されたという。トロフィーは後日郵送されるはずだったものの、約4年間にわたり届けられることはなかったという。また、郵送されなかったトロフィーがなぜeBayで売られていたかの経緯も、現状では不明だ。

Ryan B.氏は「本来開発元の手元にあるべきもの」として、Extremely OK Gamesに対して返却を申し出た。一方で同スタジオ側は、トロフィーの代金と送料を負担すると提案。約4年間謎の失踪を遂げていた有翼の女神像は、正当な持ち主の手へと無事帰ることになったようだ。また、Ryan B.氏は一連の出来事を伝える動画のなかで、The Game Awardsトロフィーの“開封動画”も届けている。まず一般ゲーマーが手にすることのない禁断のアイテムをじっくりと触る、興味深い内容だ。

*開封動画パートは動画4分30秒頃から

まず、トロフィーはかなりしっかりした紙製の箱に収められている。The Game Awardsの文字が記された蓋を空けてみると、中にはサテンのような、なめらかな生地で内張りがされたクッションが配置されている。この時点で本物のオーラが出ている印象だ。そしてその中に眠るは、栄誉の証のトロフィーだ。この中で約4年間にわたり眠っていたかと思うと、なにやらゲームのアイテムのようでもある。

Ryan B.氏が触ってみた感想によれば、トロフィーは予想を凌ぐ重さであるという。壇上でプレゼンターや開発者が「思っていたより重たい」と口にしているのは、その栄誉の重さだけでなく物理的な重量もあったようだ。また、翼の部分はとても鋭いとのこと。同氏は、開封時に翼の先端にウレタンのような素材で覆いがなされていたのは、緩衝ではなく安全のための配慮ではないかとの見解を示している。筆者としてはThe Game Awardsを見る度に、誰かがトロフィーを落とさないかハラハラしていた。もしかすると、落とし方によっては地面に刺さるかもしれない。

Image Credit: PrestigeIsKey on YouTube


思わぬ発見により、再び日の目を浴びて開発者のもとへの帰途についたThe Game Awardsトロフィー。開発元に届かなかった理由や、売りに出されてしまった経緯も気になるところではある。しかし、こうした偶然がなければ、一般ゲーマーによるトロフィーの“ハンズオンレビュー”を聞く機会もなかっただろう。

なおExtremely OK Gamesは現在、新作探索型2Dアクション『Earthblade』を開発中だ(関連記事)。長き旅を経て帰ってきた栄誉のトロフィーが、同作の開発を見守ってくれることだろう。