Steam物理演算将棋『超将棋』の競技シーンがやたらと熱い。 3D駒台穴熊にアグロ竜王戦法、瞬く間に移り変わるメタ

 

Steamにて11月9日から無料配信中の『超将棋』。同作は、一発ネタのように見えるかもしれないが、対戦ゲームとしての奥深さも備えており、3D駒台穴熊や超カタパルトなどいくつかの戦術が発見されている。本稿では、盤上で繰り広げられている、駒が縦横無尽に飛び交う様子の一端をお伝えしよう。なお本稿には『超将棋』の具体的なテクニックなどが掲載されている。事前知識なしでプレイしたい場合には、注意してほしい。


『超将棋』は、国内の学生であるT.Okawa氏が開発した、駒を弾いて落とす対戦型のゲームだ。名前のとおり、本作のベースには「将棋」のルールがある。将棋の駒と盤を使用しており、一定条件下で駒の所有権が移ることなど、ある程度将棋のルールに則っている。ただし、本作では物理演算を採用し、駒の動く量はチャージとタイミングによって決定。弾いた駒をぶつけて、相手の王(玉)が盤上から落ちると勝利になる。将棋とは異なる、駒同士のぶつかりあいが繰り広げられるわけだ。駒の種類ごとに移動のできる最大距離と向きが決まっており、歩は前に弱く、角は斜めに強く、王(玉)は全方位へわずかに移動する。ゲームモードとしては、オンライン対戦用のターン制/リアルタイム、1人用の詰将棋モードが搭載されている。また、駒の上に駒を載せて飛ばしたり、強く弾きすぎた駒がどこかへ飛んでいってしまったりなど、物理演算導入ゲームならではの光景も本作の特徴だろう。


そんな本作であるが、対戦ではリリース初日から奇想天外な戦いがおこなわれていた。流行していた戦術の一例としては、3D駒台穴熊と呼ばれる、駒台を活用した囲いが挙げられる。王が自ら盤上から駒台の上へ飛び移ることで、盤石の守りを得る戦術である。

通常の将棋においては、駒台は取った駒を置くための台であり、対局中に盤面として使用されることはない。しかし本作では、盤外へ落ちなければ駒は生きている。駒台には駒の死亡判定はないため、問題なく駒台の上に乗っていられるわけだ。駒台は将棋盤より高い位置にあるので、ただ弾くだけでは駒台の上へたどり着けない。

そこで、右クリックに搭載された縦軸と横軸への回転機能を使用する。王を縦軸に回転させて立て、そこから斜めに弾くことで、王が斜め上に向かってジャンプ。この動きを活用して最短3手で駒台の上に到達すれば、駒台との高さの差によって盤面の駒から攻撃を受けなくなり、物理的な守りが完成する。3D駒台穴熊を破るには、同じ駒台の上へ駒を送り込む必要があり、互いに駒を動かしあっている中では難しい。成立はある程度難しいものの、破るのも困難であることから、3D駒台穴熊は初日の段階ではトップメタと目されていた。しかし、このメタは長くは続かなかった。超カタパルトと呼ばれるテクニックで、駒が準備なしで飛ぶようになったからだ。


前述のとおり、本作には右クリックに駒の縦軸と横軸の回転機能が導入されている。通常、ターン制では軸の回転も1手と見做されており、リアルタイム制でも軸の回転と駒の移動は別でおこなう。しかし本作では左クリックでの駒のチャージ中に、同時に右クリックで軸が動かせるようになっており、1手で2手分を動かせる。さらに、駒が移動するタイミングにあわせて上手く軸を移動させると、軸移動時に駒がジャンプする関係で、駒が立体的に移動。上手く駒を飛ばすと、前方の歩を飛び越えて相手の王を狙える位置に飛車や香車を送り込んだり、本来移動力の弱い王を大きく移動させたりなど、駒を縦横無尽に動かせるようになっている。また難易度は高いものの、開始位置にある香車を上手く打ち出すことで、ワンターンキルも可能であった。3D駒台穴熊の成立よりも速い攻めが確立されたことで、メタが変わったわけである。

しかし11月12日20時ごろに配信されたv1.46では、超カタパルトが弱体化された。ターン制では開始から3手、リアルタイムでは5秒間回転ができなくなり、序盤戦における超カタパルトを使ったテクニックは使えなくなった。超カタパルト自体は変わらず有用であるものの、対局序盤は3D駒台穴熊とアグロ竜王/桂馬の戦いへと戻るのかもしれない。なお本作では、リリース初日からマッチングがしづらく、不具合も発生していた。そうした中で奇怪な戦いが繰り広げられてきたが、アップデートが精力的におこなわれており、対戦環境も徐々に改善へと向かっているようだ。


『超将棋』は、Steamにて無料配信中。同作は学生向けゲームコンテスト「ゲームクリエイターズ甲子園2021」に参加しており、応援ツイートが求められている(コンテスト内の作品ページ)。