『テイルズ オブ』シリーズは近年「新規参入が一桁台」とプロデューサー明かす。国産長寿RPGが『アライズ』に託す覚悟

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RPG『テイルズ オブ』シリーズの現ゲームプロデューサーを務める富澤祐介氏は8月20日、同シリーズの近年の展開についての背景と、新作『テイルズ オブ アライズ』にかける思いについてSNS上に投稿した。
 

 
『テイルズ オブ』シリーズは、1995年リリースの初作『テイルズ オブ ファンタジア』から多数のメインシリーズおよびスピンオフ作品を発表し、根強いファンとともに歩んできた国産RPGシリーズだ。シリーズ最新作『テイルズ オブ アライズ(以下、アライズ)』は今年9月9日に国内で、10日にはグローバル発売を控えており、現在SNS上などでシリーズファンがにわかに盛り上がっている様子が見られる。

そんななか、現在『テイルズ オブ』フランチャイズの責任者である富澤祐介氏が、近年『テイルズ オブ』シリーズが直面していた状況と、同シリーズにかける思いについて語った。同氏は『GOD EATER』シリーズの立ち上げなどに携わった後、『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』よりシリーズプロデューサーを受任している。現在は『テイルズ オブ』ブランド全体の統括とIP戦略の推進を担当する総合プロデューサーであり、まさにシリーズを背負って立つ人物だ。

富澤氏は8月20日、自身のTwitterアカウント上で同シリーズについて「ここ数作、新規参入が一桁台だった」とコメントして、自身の思いを綴っている。同氏の補足ツイートによれば「ここ数作、新規参入が一桁台」という言葉は「タイトル購入者に占めるシリーズ新規購入層の割合が10%未満である」という意味とのことだ。このデータについては、結果の偏りを避けるために購入者アンケートとは別におこなった定量調査の結果だという。


つまり、作品にまつわる調査の結果、全体の売り上げに対してシリーズ新規プレイヤーの割合が10%に満たない、つまり「一桁台」だったという。富澤氏による今回のツイートには、『テイルズ オブ』シリーズの現況に関する危機感と、今後同シリーズを盛り上げていくという強い決意が込められているのだろう。
【UPDATE 2021/8/23 11:00】
富澤氏の補足ツイートにあわせ情報を追記し、記述を明確化。

実際に、日本含むアジアマーケットにおいて同シリーズが新規ユーザー獲得に苦戦していた可能性を示唆するデータがある。今年3月に『テイルズ オブ』シリーズ公式YouTubeチャンネルで公開された「『テイルズ オブ』販売本数ランキング」発表動画だ。

動画によれば、アジア圏売り上げランキング上位10位内に入ったシリーズ作品のうち、もっとも新しいものは2011年発売の『テイルズ オブ エクシリア』だ。上位は『テイルズ オブ デスティニー』など、比較的シリーズ初期の作品が占めている。直近のメインシリーズ作である『テイルズ オブ ベルセリア』などはランキング圏外に位置していることから、近年のアジア圏において『テイルズ オブ』シリーズが新規顧客の獲得に苦戦していた可能性は十分に考えられる。富澤氏は動画の中で、「(アジア圏の)強固なユーザーさんにシリーズ通して買っていただいてる」として、シリーズ固定ファンの根強さが売り上げに寄与していると分析している。
 

 
一方で、米国・欧州などを含むワールドワイドの売り上げでは、上述の『テイルズ オブ ベルセリア』が上位にランクインしている。ほかにも比較的近年の作品が上位10位圏内に入っている点を鑑みるに、国内含むアジア圏とそのほかの地域では、やや新規ユーザー参入率に違いがあるとも考えられる。そして、ワールドワイド総合売り上げについては2003年発売の『テイルズ オブ シンフォニア』が首位に立つようだ。現在『テイルズ オブ』シリーズを背負って立つ富澤氏にとっては、ぜひとも塗り替えたい記録だろう。

同氏は前述のツイートにおいて、「ここ数作、新規参入が一桁台だった」事実について「テイルズブランド責任者として私がアライズを企画する強い覚悟、背景としてありました」とコメントし、シリーズブランドロゴの作成や過去作の再編成など、『テイルズ オブ』ブランドの“未来”を作り出すための取り組みについて触れている。また、最新作『アライズ』は、新規プレイヤー層獲得を意識して企画しているようだ。
 

 
富澤氏はバンダイナムコエンターテインメント運営のウェブメディア「アソビモット」におけるインタビューのなかで、『アライズ』の目指すところを語っている。同氏は目標として「海外プレイヤーの増進」および「若年層プレイヤーの獲得」を掲げて、「長寿シリーズゆえに新規プレイヤーが参入しづらい」という調査結果に触れている。ファミ通におけるインタビューにおいては、同作について「これまで培ってきた『テイルズ オブ』シリーズの魅力や歴史を背負いつつ、いまの世代のユーザーに伝えるためにいかに進化するのか、というのが目標です」とコメントして、グラフィック面での進化を伝えていた。いずれのインタビュー内容からも、『アライズ』で新規層を開拓するという富澤氏の意思がうかがえる。

また、『アライズ』はゲーム本編における進化のみならず、マーケティング面でも新しい手法を導入しているようだ。具体的には、「Amazon試供品戦法」である。現在、パッケージに封入された同作の体験版ダウンロードコードが、Amazonからの試供品として多数ユーザーに発送されているようなのだ。記事執筆現在、Twitter上では“Amazon体験版”を受け取ったという報告が続々となされており、なかには「シリーズ未プレイである」というユーザーもちらほら存在する。この取り組みも、新規プレイヤー層開拓に向けての一手なのだろう。なお、各ストア経由でもPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに体験版が配信されている。
 

 
グラフィックにこだわり、アクション性を強めて世界展開に打って出る『アライズ』。富澤氏の思いが通じ、「心の黎明を告げるRPG」というキャッチコピーの通り、シリーズの新しい夜明けを迎えられることを祈りたい。

『テイルズ オブ アライズ』は9月9日、PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けに発売予定。PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けには、体験版も配信されている。

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