『ゴッド・オブ・ウォー』ディレクターが「開発チームでなく、責任者の俺に怒れ」と意見表明。新作延期にまつわる女性開発者への中傷を受けて


アクションゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズは、PlayStationを代表する人気作だ。前作はPS4向けに発売され大ヒットを記録。そうした成功を経て、同シリーズの最新作が現在開発されていることもSIEより表明されている。最新作は2021年中にリリースされると告知されていたものの、今月になり2022年中への延期が発表された。コミュニティのなかには、落胆の思いが開発者個人への中傷というかたちで噴出してしまう一部ユーザーも存在したようだ。前作『ゴッド・オブ・ウォー』にてクリエイティブ・ディレクターを務め、新作を指揮しているCory Barlog氏が、そうした一部ユーザーの行動について、Twitter上で自身の意見を表明している。

PlayStation Studios傘下のSanta Monica Studioが手がけたリブート版『ゴッド・オブ・ウォー』は、PS4向けに発売され1000万本以上を売り上げた人気作だ。昨年には同シリーズ最新作を2021年中に発売する旨のティーザー映像がSIEより公開されていた。しかし、今月6月3日には同スタジオが2022年への発売延期を発表(関連記事)。延期を告げる同スタジオのTwitter上の投稿には、「時間を取ってしっかり開発して欲しい」と期待を述べるコメントや、泣き顔の絵文字で落胆を表現するものなど、さまざまな反応が寄せられていた。


一方で、延期の落胆を開発者にぶつけてしまうユーザーも存在するようだ。昨年、 Santa Monica Studioにライターとして加入したAlanah Pearce氏が、延期にまつわり受けた中傷の言葉を自身のツイートの中で紹介している。


Pearce氏のツイートによれば、『ゴッド・オブ・ウォー』最新作の延期発表後に、リリース延期は同氏の責任であると咎める、強い性的ハラスメントを含む中傷を受けたという。同氏はツイート上で「(Santa Monica Studioに)雇われた当時のものを除けば、初のゲーム開発関係の中傷メッセージ!ついに洗礼を受けられた!」と気丈なコメントを付している。しかし、中傷コメントは非常に苛烈なものであり、同氏の心中いかばかりか案じられるほどの内容だ。

Pearce氏はSanta Monica Studioに加入する以前から、YouTube番組への出演などを通じて活躍する、コンテンツクリエイターとして知られている。もともとIGNなどで執筆しており、シナリオライターとして昨年末Santa Monica Studioに加入していた。前述のとおり、同氏が開発に関わったのは昨年からであり、延期について責任ある立場とは考えづらい。もともと著名なこともあり、開発陣の中でも“目立つ”存在として攻撃の対象になってしまった可能性はありそうだ。

Pearce氏の上記ツイートを受けて声をあげたのが『ゴッド・オブ・ウォー』のディレクター、Cory Barlog氏だ。同氏はPearce氏の投稿を引用ツイートして「みんな、マジでこんなのくだらねえよ!」と語気を荒げた。同氏は続けて「延期や対応プラットフォーム、字幕サイズ、敵キャラ、ほかのなんでも、『ゴッド・オブ・ウォー』関係で誰かに怒りたいやつは、俺に対して怒ってくれ。俺が決定者で、俺に責任がある。開発チームに絡まないでくれ、彼らはいい仕事をする善良な人々だ」と述べた。つまり、同作に関するすべての責任の所在はBarlog氏自身にあり、開発メンバーに責任はない、という強い表明だ。


Barlog氏は、以前からSNS上での実直な物言いで注目を集めている。自身の見解や、ゲーム開発プロセスについて広めることに積極的な姿勢で知られる人物だ。『サイバーパンク2077』のリリース延期理由について議論が巻き起こった際も、ゲーム完成間際の制作進行について自身の考えを表明。広く意見を受け付ける姿勢を見せていた(関連記事)。

上記ツイートのリプライ欄では、ファンに「本当に、2021年にリリースできると信じていた?」と聞かれる一幕もあった。ファンとしては、「(マーケティング上の都合で)上層部に押し付けられた発売時期だったのではないか」という懸念があったようだ。Barlog氏は「リリースできると信じていたよ、そして俺は間違っていた。全部俺の責任だ」と返信している。リリース延期については、マーケティング上の都合などではなく、開発スケジュールの問題であり、責任の所在を明確にしたかたちだ。


もともと、意見を表明することに積極的なBarlog氏。今回の一連のツイートからは、開発チームメンバーが中傷を受けることを見過ごせない、同氏の人柄がうかがえる。同氏は後のツイートで、Twitter上のダイレクトメッセージで多くの好意的な意見が寄せられたことに感謝を述べている。

一方で、「俺が女性開発者だったら、もっと好意的でない意見が多く寄せられていただろう」と、性差によるコミュニティの反応の違いについての見解を述べた。また、続く一連のツイートの中で同氏は「中傷に値する開発者など居ない、誰一人としてだ」とコメント、中傷やハラスメントに対する反意を示した。


『ゴッド・オブ・ウォー』最新作のリリース延期は、 多くのファンにとって残念な知らせとなった。しかしながら、開発者への中傷がそのリリースを早めることはないだろう。同作の開発が順調に進むことを祈りつつ、新たな発表を待ちたい。