ヒトラー治療ゲーム『Heal Hitler』発表。第二次世界大戦勃発を防ぐため、アドルフ・ヒトラーの精神を癒やせ

 

インディーデベロッパーJon Aegisは5月16日、『Heal Hitler』を発表した。対応プラットフォームはPC(Steam)。発売は今年夏を予定している。


『Heal Hitler』は、あの「アドルフ・ヒトラー」の精神を治療するゲームだ。まるで不謹慎ジョークゲームのような印象さえ受けるテーマではあるものの、いたって真面目な内容となっているようだ。プレイヤーは精神分析医となり、ヒトラーのセラピーを通じて第二次世界大戦勃発の回避を目指すことになる。

本作の時代設定は1924年、アドルフ・ヒトラー34歳の年である。この年が選ばれたのは、ヒトラーにとって大きな転換期の一つであるためだと思われる。説明のため、実際の歴史について述べたい。実はこの年、ヒトラーは投獄されている。ナチ党が中心となった1923年末の暴動事件、「ミュンヘン一揆」の責任を負う形で、ヒトラーは5年の懲役刑を宣告されたのだ。

逮捕された直後は自殺も考えたとされるヒトラー。しかしながら、当時のドイツではナチ党は多くの国民から支持を得ていた。情状酌量もありヒトラーは同年1924年中に釈放。その後、ヒトラーはナチ党の指導者に復帰。国民からの支持と自信を得たヒトラーは、やがてドイツ全体を導いていくことになる。そしてその後の活動が、第二次世界大戦へとつながっていく。


人によって異なる史観があるものの、1924年がヒトラーの生涯に影響を与える節目であったことは間違いないだろう。つまり、この時に彼を止めることができれば、のちの悲劇を防げたのではないかという考えである。プレイヤーは精神分析医になり、患者として訪れた、当時のアドルフ・ヒトラーを診療することとなる。ヒトラーのトラウマを見つけだし、癒やし、第二次世界大戦を回避するのだ。

Jon Aegisによれば、本作にはジークムント・フロイトやカール・ユング的な精神分析論が盛り込まれているそうだ。ゲームプレイは会話が中心のようで、Steamストアページでは「会話できるウォーキングシミュレーター(conversational walking simulator)」と表現されている。

会話を通じてコンプレックスを解き明かしていくゲームプレイは興味深い。しかしながら、診断する患者は「怒りの問題」を抱えていると訴えるヒトラー。場合によっては、トラウマの原因を掘り起こすことで逆鱗に触れてしまうこともあるそうだ。エンディングは16種類にものぼるとのこと。史実よりも恐ろしい結末が待っている可能性もあるかもしれない。


なお、Jon Aegisによれば本作の開発にあたっては、ヒトラーに関する深い調査をおこなったそうだ。実際のヒトラーの精神分析結果や史料、ヒトラーと会ったことのある人物の記述などを調査したとしている。また、Jon Aegisは「このゲームは真面目なゲームとして作っています」とストアページで伝えている。

ナチス及びヒトラーといえば、ゲーム中で“悪の権化”のように扱われることも多い題材だ。彼らを成敗することを目的にするゲームは多い。その点では、本作のヒトラーを“診療して癒やす”というコンセプトは目新しいように感じられる。ハイル(Heil)・ヒトラーではなくヒール(Heal)・ヒトラー。本作がどれほどの完成度でリリースされ、ゲーマーたちからどのような反応を受けるのか、注目したい。

『Heal Hitler』はSteamで、今年2021年夏、発売予定だ。