『アイドルマスター』の「てってってー」の曲が第三者の手によって有償販売される。しかし、誤検知による事故の可能性あり【UPDATE】

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バンダイナムコエンターテインメントが権利を所有する『アイドルマスター』シリーズの楽曲「Town」が、なぜか第三者によって有償配信されているようだ。配信がおこなわれているサービスは幾多にも及んでおり、SpotifyやiTunes Storeなど大手配信サービスも含まれている。この状況に、バンダイナムコエンターテインメントのスタッフも反応。『鉄拳』シリーズのプロデューサーとしても有名な原田勝弘氏がTwitterで言及しており、配信状況を不審に感じてリプライを送ったファンに対し、事実確認をおこなう旨を伝えている。 

【UPDATE 2021/05/08 9:40】
各種配信サービスにおいて、有償配信されていた楽曲の削除が確認されている。YouTubeにアップロードされていた自動生成アートトラックも現在は削除済みである。
 

 
「Town」は『アイドルマスター』シリーズに使用されている楽曲だ。シリーズをプレイしたことがない方も、「てってってー」という通称を聞けばその特徴的なフレーズが耳に浮かぶかもしれない。 

該当する配信ページでは、楽曲のタイトルは「てってってー」、作曲者は「アルカラ」とされている。前述のとおり本曲の正式なタイトルは「Town」なので、タイトルが異なっている時点で怪しいことがわかるだろう。それでは、作曲者としてクレジットされている“アルカラ”なる人物が著作権侵害をおこなっているのだろうか。多くのプラットフォームで作曲者として日本のロックバンド・アルカラのページがリンクされているが、彼らはおそらく無関係であると思われる。筆者が調べたところ、著作権侵害とも思われる事象が発生した理由としては、YouTubeの著作権管理システム・Content IDの仕様が関係しているようだ。 
 

いずれの楽曲も、謎のパンがアートワークに使用されている。 

 

YouTubeの著作権管理システムであるContent IDは、YouTube内の動画をスキャンして登録されている著作物との照合をおこなうシステムだ。スキャンはAIによって自動的におこなわれ、アップロードされている動画が自身の著作物に一致していると判断された場合、著作権者は動画のブロックや収益分配などの対応をすることができる。Content IDの利用には申請が必要だが、楽曲の著作者であることが証明できれば登録可能である。 

「Town」はそのポップな曲調から、ニコニコ動画やYouTubeなどへ投稿される個人制作動画に使用されていることも多い。そのなかでも有名な動画にwawawa氏のものがある。同氏が投稿する動画の大半は食事をしながらハイボールを飲む内容で、ジョッキの中の氷をカラカラと鳴らす動作から“アル中カラカラ”の通称で親しまれている人物だ。アル中カラカラ、略して「アルカラ」である。 

wawawa氏のオリジナル動画はニコニコ動画へ投稿されたものだが、第三者によってYouTubeにも転載されていた。前述のとおり、「Town」は個人制作の動画に使われることの多い楽曲だ。誰かが「Town」を使った動画を投稿し、楽曲のオリジナルとなる動画を探してAIがデータベースをスキャンした結果、wawawa氏の動画を転載したものがヒット。そしてAIは同氏の通称である「アル中カラカラ」をデータベースから検索し、すでにContent IDの利用者として登録されていたロックバンド「アルカラ」と紐付けてしまったものと思われる。 

この説を裏付けるものとして、YouTube内を検索するとアルカラ公式チャンネル投稿とされる「てってってー」という動画がヒットするが、アルカラ公式チャンネルのアップロード動画一覧を見ても当該動画は存在しない。動画のキャプションには“Provided to YouTube by TuneCore Japan”と記載されている。TuneCore JapanはYouTubeにおけるコンテンツ収益化を手助けするサービスをおこなっている企業だ。そしてこの一文は、動画がAIによって自動生成されたアートトラックであることを示している。パンの上に「てってってー」と書かれただけのサムネイル画像も、AIによって自動生成されたアルバムアートのようだ。 
 

“Provided to YouTube by TuneCore Japan”は、自動生成の動画のキャプション定型文。コメントがオフになっているのも自動生成アートトラックの特徴である。 

 
さらにAIは、TuneCore Japanが提携している他のサービスにも、アルカラが作曲したものとして「てってってー」を登録してしまったようだ。SpotifyやiTunes Storeでも有償配信がおこなわれてしまっているのはこれが原因と思われる。 

AIの誤検知によって楽曲が有償販売されてしまったと見られる『アイドルマスター』。現状、販売されている楽曲を購入すると無関係なロックバンド・アルカラの収益となってしまう状態だ。この一連の騒動は権利者であるバンダイナムコエンターテインメントの耳にも届いているようなので、一刻も早い解決を望みたいところだ。 

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