Valve謹製デジタルTCG『Artifact』開発中止し完全無料化。大規模改修を進めるも、十分なアクティブユーザーを得られず

 

Valveは3月5日、Steamにて配信中のデジタルトレーディングカードゲーム『Artifact』について、開発を中止すると発表した。今後は、課金要素のない完全な無料ゲームとして配信を続けるとのこと。
 

 
『Artifact』は、『マジック:ザ・ギャザリング』のデザイナーRichard Garfield氏とコラボして、Valveが開発したデジタルトレーディングカードゲーム。『Dota 2』の世界観をベースにしており、3つのレーンにて対戦ゲームプレイが同時進行し、またそれぞれのレーンの状況により互いに影響し合う要素が特徴だ。

本作は2018年11月にローンチし、同時接続プレイヤー数にして6万人以上を記録する順調な滑り出しを見せたが、ランダム性の強さや、有料ゲームであるにもかかわらず、まともな戦力を得るには課金した方が有利になる面などが批判の対象となり、ほどなくしてプレイヤー数が大幅に減少。Valveは2019年4月に、本作のアップデートを一旦停止して立て直しを図ることとなった。またこの直前には、Richard Garfield氏との契約が打ち切られていたことも判明している(関連記事)。
 

 
Valveは「ベータ2.0」として本作の大規模改修を進めてきたが、それから約1年半が経過した現在も、さらに開発を続けることを正当化できるほどのアクティブユーザー数を得ることができなかったと述べる。確かに、ここ数か月間の同時接続プレイヤー数を見てみると、ピーク時であってもわずか70人程度で推移している。これではオンラインマルチプレイを十分に楽しむことは難しいだろう(Steam Charts)。

ただ、ベータ2.0 のゲームコンテンツの開発については、すでに目標のほとんどを達成しているそうだ。そして、少ないながらも本作にはプレイヤーベースが存在していることから、以前のバージョンである『Artifact Classic』と、ベータ2.0を指す『Artifact Foundry』を、未完成品ではあるが完全無料化して配布することを決断したとのこと。
 

 
『Artifact Classic』と『Artifact Foundry』は、どちらも無料で配信され、公式によるカード・カードパックの販売はおこなわれない。『Artifact Classic』においては、プレイ時にすべてのカードを利用可能。マーケットでの売買も可能となっている。また、これまでに同作を購入したプレイヤーに対しては、コレクターズエディションのカードパックが提供される。

一方の『Artifact Foundry』では、ゲームプレイを通じてカードを獲得するかたちとなっている。マーケットでの売買は不可。また、制作中だったすべてのカードアートの最終版が収録される。ゲームモードについては、どちらのバージョンもグローバルマッチメイキングやAI対戦などを用意。一部違いが存在するため、詳細はこちらのページを参照してほしい。

本作の開発中止および無料化についてValveは、「これがコミュニティへの最良のアプローチであると信じています」とコメント。また、『Artifact Foundry』の開発の仕上げに協力してくれたコミュニティに感謝の言葉も述べている。

『Artifact』は、Steamにて無料配信中だ。日本語表示にも対応している。