Valve製DTCG『Artifact』、大規模改修の進捗を報告。失われたプレイヤーを取り戻すことはできるのか


Valveは12月18日、デジタルトレーディングカードゲーム『Artifact』のベータ2.0についての状況を発表。昨年から告知されている大規模改修の進捗を報告した。来週から2021年1月にかけての見通しも伝えられている。

『Artifact』は2018年に配信開始したデジタル・トレーディングカードゲーム(DTCG)だ。Valve看板作品のひとつ『DOTA 2』の世界観に基づき、MOBAの要素を取り入れたシステムが特徴。3つのボードの状況を管理する戦略性や、ユニークな特徴を持つヒーローユニット、さらにユーザー間でカードを売買できるトレードシステムなど、随所にアイデアが散りばめられた作品だ。Valveの新作であることや、『マジック:ザ・ギャザリング』のデザイナーRichard Garfield氏を迎えて開発したことなどが話題を呼び、発売前から注目作に。いざリリースされると、発売開始から1時間足らずで5万6000人以上の同時接続プレイヤー数を記録した。その後ピーク時は6万人以上に達するなど、順調な走り出しを見せている(関連記事)。

ところが事態は急変した。年が明けて配信から約2か月の時点で、最大同時接続数は約2000人に減少。約97%のプレイヤーを失ったという状況が明らかになった(関連記事)。原因はいくつか推測されており、まず新規ユーザーにとってはターン制ではなくアクションごとに手番を入れ替えるシステムがハードルになったようだ。一方コアユーザーにとっては、ランダム性が強く戦略を立てづらい面が不満を集めた。さらに、基本有料にも関わらず追加課金しなければまともな戦力を得られない点が批判の的となった。その後2019年、ついにValveは同作の抜本的な改修工事に取り掛かることを発表(関連記事)。しばらくアップデートを停止し、大きな見直しを図ることが伝えられた。
 

 
今年4月にはベータ2.0の内容が発表。カードの販売をせず、プレイを通してアンロックする仕様になるなど、不満が強かったマネタイズ面の刷新が伝えられた。ほかプレイヤーがズームアウトして3つのレーンを同時見渡せるようになる、新しいドラフトモード「ヒーロードラフト」の追加が明かされるなど、さまざまな改善を告知。ランダムに選出されたプレイヤーを対象にクローズドベータテストをおこなってきた。

こうしたテストの総括について、まず12月18日の発表で語られている。ベータテストでは、ユーザーの声を通じUIやヒーロー・アイテムデザインの修正、「複数色カード」や「軍団」といった新たな要素の試験的導入が図られてきた。一方オープンベータテストの時期については、まだ解決すべき課題が山積みであるとして明確にしていない。具体的な問題意識についてもいくつか明かされており、まずは「プレイヤーがゲームを学べる明確な方法の提供」「プレイヤーが熟練プレイヤーの中に投げ込まれる前に十分な練習をする場」といった要素を列挙。ゲーム内チュートリアルやUIのわかりやすさ向上、練習相手となるAIの改善などが挙げられた。まずは新規ユーザーの参入しづらさについて解消していきたい狙いだろう。

また、現状で実装されている「気軽」なモードと「敷居が高い」モードの橋渡しになるようなゲームモードの実装も検討しているとのことで、初心者がスムーズに熟練度を上げられる環境づくりを目指したい意図が見られる。一方、コアユーザーから反発を招いたランダム要素についての処置については触れられていない。
 

 
発表では、直近のロードマップについても伝えられている。まずは「来週の早い時期に」、既存のベータテストプレイヤーに向けてチュートリアルベータ2.0を配信。新しいプレイヤーに試してもらう前に、まずは現在のプレイヤーと“数週間”テストを実施したいとのこと。 最初のフィードバックが得られたのちに、ベータ版登録後にまだ1.0をプレイしていなかった新しいプレイヤーを少しずつ招待する予定だという。そして来年1月中旬から下旬には、新規プレイヤーを招待する主要な方法として、「プレイヤーによるフレンド招待」を実施。数か月ほどでカードやルール、バランスの変動を安定させ、 その時点ではじめて、オープンベータおよび最終的なリリースに向けた準備が始動するようだ。

リリース時期は「かなり先」と述べるに留めており、生まれ変わった本作が正式にお目見えするにはまだ時間がかかりそうだ。発表記事では具体的に刷新されたビジュアルも公開されており、新生『Artifact』の姿が垣間見える。茨の道を進む挑戦的なDTCGは、息を吹き返すことができるのだろうか。