Google、内部ゲームスタジオを解散した影響か、 Stadiaタイトルの不具合修正に苦しむ。パブリッシャーがサポートを押し付けあい

 

Googleは2月初旬、Stadia向けの内部ゲームスタジオStadia Games and Entertainment(以下、SGE)の解散を発表した。コストを理由とした自社でのゲーム開発の取りやめ発表は波紋を呼んだ。そして、その影響はすでに出始めているようだ。Stadia向けの特定タイトルの不具合修正がなされないと騒がれたのだ。

問題となった不具合は、Stadia向けに2月1日に配信された『Journey To The Savage Planet: Employee Of The Month Edition』にて、発生しているようだ。『Journey To The Savage Planet』は、2020年にPCおよびコンソール向けに発売された探索アクションゲームだ。『Journey To The Savage Planet: Employee Of The Month Edition』は本編とDLC「Hot Garbage」がセットとなり、Stadia向けに最適化されている。Stadia Pro加入者向けに配信されていた。


『Journey To The Savage Planet』の開発元であるTyphoon Studiosは、2019年12月にGoogleに買収され、SGEの一員となった。そしてようやくStadia向けにタイトルのリリースを果たしたのだ。内部スタジオ初のゲームリリースである。しかしながら、同作の配信日にGoogleがStadia向け展開の方針転換を発表。吉報と悲報を同時に耳にすることになり、Typhoon Studiosの共同設立者であったReid Schneider氏は困惑を見せながら、チームメンバーが自身と家族の生活を守れるよう、彼らのキャリア構築の支援に務めるとコメントしていた。その裏では、『Journey To The Savage Planet: Employee Of The Month Edition』では深刻な不具合が発生していたようだ。


どのような不具合かというと、ゲーム起動後にメインメニュー画面でフリーズしてしまうというもの。タイトル画面にてシングルプレイもしくはCo-opをクリックしたときに、フリーズする現象が報告されていた。Redditでは同様の現象に嘆くユーザーたちの投稿が複数確認でき、少なくない人々がメインメニューのフリーズに遭遇していたようだ。問題となったのは、その後の対応だ。

Redditユーザーlordubuntu氏は、まずTwitter経由でStadiaサポートに問い合わせた。lordubuntu氏がRedditに載せたスクリーンショットによると、Googleはパブリッシャーと協力して問題修正に取り組むと返答したようだ。しかし同氏がGoogleの公式サポートフォームにも問い合わせてみたところ、異なる回答が返ってきた。Googleのサポートは、これまで同様の不具合は報告されていないといい、『Journey To The Savage Planet』のみで起きている問題だとして、同作のパブリッシャーに問い合わせるように促した 。

lordubuntu氏は、今度は『Journey To The Savage Planet』のパブリッシャーである505 Gamesに問い合わせするも、ゲームコードとデータはGoogleが保有しているので、自分たちは何もできないと回答された という。同氏は、Googleからパブリッシャーに問い合わせてほしいと言われて505 Gamesに連絡したにもかかわらず、505 Games側では何もできないと 伝えられたことに困惑。困っている旨を505 Games側に伝えたという。

Image Credit : lordubuntu


すると505 Gamesの別の担当者から返信あり。その内容はというと、『Journey To The Savage Planet』のStadia版のパブリッシャーはStadia Games and Entertainmentであるというもの。505 Games側にできることはなく、パブリッシャーであるGoogleにStadia版のサポートの問い合わせをするよう改めて提案した。またGoogleに問い合わせる際、Stadia版のパブリッシャーはGoogleであると伝えるようアドバイスも送っている。さらに、ゲームの開発元Typhoon Studiosは2019年にGoogleが買収しているため、彼らの方が状況を把握しているはずだと、問い合わせ時に述べるようにも助言している。

つまり、Googleと505 Gamesで、サポートの押し付けあいが発生しているわけだ。進行不能な不具合に陥り、サポートを受けられない状況に、前出のlordubuntu氏は嘆き、ほかのユーザーもまた懸念を見せている。Stadia Proユーザーとして月額9.99ドルを支払いながらも、ゲームが遊べずサポートも受けられない状況に、疑問が呈されていたのだ。

『Journey To The Savage Planet』のPC/コンソール版のパブリッシャーは505 Gamesであるが、Stadia版である『Journey To The Savage Planet: Employee Of The Month Edition』のパブリッシャー表記はSGE。つまりGoogle側がパブリッシャーなのだ。開発スタジオは現在Google内部にあることから、505 Gamesが対処できないというのはもっともだろう。さらにTyphoon Studiosの責任者であるAlex Hutchinson氏も、Twitterユーザーからの不具合に関する別の問い合わせに反応し、自分たちは担当ではないので、Stadiaに問い合わせてほしいとコメント。誰が担当であり、誰が修正できるのか、販売側もユーザー側も把握できていないように見える。


同問題が騒がれたRedditのスレッドが立てられてから1日半が経過したのち、Stadiaのコミュニティマネージャーがコメント。連絡が遅くなったことを詫びつつ、今はパートナーと共に不具合を調査していると表明。続報を届けられるように善処するとコメントした。そしてその直後、同コミュニティマネージャーより、メインメニュー画面のクラッシュ問題についてアップデートが実施されたことが発表。諸々の問題が修正されたようだ(Reddit)。

Stadiaの内部スタジオ解散に係るトラブル報告は今回が初めてではない。Kotakuの取材によると、Googleによる内部スタジオ解散発表は内部開発者にとって寝耳に水だったという。というのも、Stadia責任者であるPhil Harrison氏が、解散発表の数日前にスタッフを激励していたそうだ。SGEは多様で優秀なチームを構築し、自社タイトルの開発において大きな前進を果たしているとし、2021年の投資予算および目標がまもなく制定されると伝えていたとのこと 。しかしその直後、スタジオ解散が発表。SGEのスタッフは、ほかのGoogle事業内で新たな役割を探すこととなった。元スタジオヘッドのJade Raymond氏のように会社を離れる決断をしたスタッフもいるようだ。


SGEはゲーム開発だけでなく、Stadia向けの移植に際してサードパーティーに技術協力をする役目も担っていた。Googleは、内部スタジオ解散後もパートナーとの協力は強化していくとしている。 一方で、事実上の内製タイトルとなる『Journey To The Savage Planet』については、サポートがたらい回しになっていたようだ。問題は解決されたものの、公式な修正対応告知および修正にかかった日数は20日以上。一連のサポートの流れは、サービス利用者に不安を与えかねない。タイトル強化と共に、サポート強化についても求められるところだろう。