『Hollow Knight: Silksong』開発者の新たな暗号が考察好きファンを唸らせる。導き出されたのはある少年が叶えた夢の残滓

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先月、インディースタジオTeam Cherryが開発中の『Hollow Knight: Silksong』にまつわる謎解きがファンたちを賑わせた。開発者がDiscordにて突如暗号を投稿し、コミュニティがそれを解読することで新情報を見ることができたのだ(関連記事)。そして7月7日、次なる謎がサーバーに投稿される。問題は間も無くファンたちの力によって解読され、明らかになったのはさらなる追加キャラクターの姿だった。そして、そこに付随していたのは思わぬバックストーリーだ。

第1の謎:ある詩人より

Team Cherryでマーケティング・PRを担当するMatthew Griffin氏が投稿したのは、あるzipファイルと次のような詩だった。

To find me, dream of a spider’s web
私を見つけたくば、クモの網を夢見よ
A site with a wondrous view
驚くべき光景の地
I dwell among visions of dangerous foes
危険なる敵の影の間に私は棲まう
Near colored lands berry and blue
ベリーと青に染まった地のそばに

The visions’ arrangement, left, right and left
像の並びは左へ、右へまた左へ
Depicting an exciting story
胸高鳴る物語を描きながら
Among words they lie there frozen in time
言葉の間に時を凍らせ横たわる
Anticipating tales of glory
栄光のおとぎ話を待ちながら

To the west, green is nearly all I see
西へ向かえば緑ばかりが目に映る
Where dangers are raining down
そこは危険が降り注ぐ場所
Among the ancient text here is hidden
古き文の合間に隠され
A pass-word that may be found
合言葉は見つかるだろう

To remove the lock we need the key
錠を外すには鍵が要る
Ignoring the title we proceed finally
題に構わず我らはついぞ進み続ける
Now count the number of visions you see
今こそ目に映る像を数えよ
And move through the text accordingly
順に沿って文を通り抜けよ

ファンがまず目をつけたのは、最初の段落にある「spider’s web」「A site」の単語だ。『ホロウナイト』に登場するクモといえば、絹糸を操る少女ホーネットのこと。そして「web」「site」は彼女が主人公となる『Hollow Knight: Silksong』のWebサイトを示している。その後に「危険なる敵」と続いていることから、敵キャラクターが映っている画像を探してみると、「ベリーと青」=赤色と青色の画像が並んだ箇所が見つかる。この部分に着目してさらに詩を追いかけてみよう。


「左へ、右へまた左へ」とは、先述した赤色と青色の画像、さらにその上の緑色の画像まで含んだスクリーンショットの配置を示している。続く段落で「西へ向かえば緑ばかり」「危険が降り注ぐ」と述べられているので、3枚の中でも左側にある緑の画像に注目。確かに敵の攻撃が上空から降り注いでいる図が見つかる。したがってこの写真のキャプションこそが「古き文」だといえるだろう。「題を無視して」とあるため、タイトルを読み飛ばして見てみよう。「目に映る像」を数えてみると、サイトのこの位置で見える画像の数は3枚。ということで文章の“3番目”の単語に目をやると、「protector」という言葉がある。これこそが、添付されたzipファイルを開くためのパスワードというわけだ。

第2の謎:携えるもの

ところが謎解きはここでは終わらない。zipファイルを解凍すると、なんとその中にさらなるzipファイルが封じられているのだ。そこにはテキストファイルも添えられており、次なる暗号が示されている。

The Knight BEARS Them
騎士はそれらを携える
Divine EATS X of Them
ディヴァインはそれらのうちXを食べる
Salubra SELLS Y of Them
サルブラはそれらのうちYを売る

FIND the WORDS:
言葉を見つけよ:
AA −−−−−−−−−−− (Divine’s Gift ディヴァインの贈り物)
BB −−−−−−−−−(Baby Flukes スイツキの赤子)
CC −−−−−−−−− (Joni’s Blessing ジョニの祝福)
DD −−−−−−−−−− (Weaverling Companionship 紡ぐ者の友好)
EE −−−−− −−−−−− (Conjured Shield 呼び出された盾)
FF −−−− −−−−− (Void Unifier 虚無を結合させるもの)

ARRANGE the WORDS to find the KNIGHT.
言葉を並べて騎士を見つけよ。

TRANSLATE the WORDS to find the answer: −−−−−
言葉を移して答えを見つけよ:−−−−−

 DDFF +Y
 CCDD -X
 DDFF -X
 BB +X
 BB +X
 AABBCC -Y

ひとつ目の謎と比べてかなり不可解な文字列だが、順を追って見てみよう。まず最初の段落、「騎士が携える」もので、NPCの「ディヴァインが食べてしまう」そして「サルブラが売ってくれるもの」といえば、作中のアイテム「チャーム」のことだ。つまりXはディヴァインが食べてしまう数=3、Yはサルブラが売ってくれる数=5に置き換えることができる。

サルブラ


次の「言葉を見つけよ」の段落では、まず左側のアルファベットが気になるところだが、いったんこちらは置いておこう。実はここで鍵となるのは、左右の間にあるハイフンの数。右側のヒントが示す単語を読み解くことで、ハイフンの部分に入る単語がわかるのだ。たとえば最初の「ディヴァインの贈り物」の部分には、11個のハイフンがある。ディヴァインといえば先述のとおり、主人公のチャームを食べてしまうNPCだが、代わりにチャームを「壊れぬ(unbreakable)」ものに変えて返してくれる。よって、ここに入る単語は11文字の「unbreakable」だ。

ここまでチャームを中心として謎が構成されていることから、以下の単語もチャーム関連のキーワードとして類推してみよう。BBの単語はスイツキマームを倒すことで入手できる「スイツキの巣=flukenest」だ。CCでは「ジョニの祝福」というチャームの名前そのものが示されている。こちらは青い血ライフブラッドにまつわるチャームなので、ハイフンに入る単語は「lifeblood」だろう。DDは「紡ぐ者」という単語から、イトアミグモを召喚するチャーム「紡ぐ者の歌=weaversong」を指している。EEは文字数と「盾」のキーワードより、「夢の盾=dream shield」と推測しよう。最後、FFの「虚無を結合させるもの」は「虚無の心=void heart」となる。

ここまで「unbreakable」「flukenest」「lifeblood」「weaversong」「dream shield」「void heart」という6つの単語を手に入れた。次の問いかけに「言葉を並べてKNIGHTを見つけろ」とあることから、これらの語を書き出して並べてみよう。少しずつ位置をずらすと、以下のように縦書きで「KNIGHT」という言葉を見つけられるはずだ。



そして最後の段落、「言葉を移して答えを見つけよ」のパート。ハイフンが5つ並んでいることから、解答のワードは5文字であることがわかる。その下に並ぶ「DDFF +Y」という式は、「DDの言葉」と「FFの言葉」を「Y=5つ分右に移動する」という意味だ(マイナスの場合は左に移動する)。これらの指示に従うと、次のような図が完成する。ここで浮かび上がる5文字の言葉、「BLOOM」こそがzipファイルを解錠するキーワードだ。



待ち受けていた相手

長い道のりを経て開けられたファイルの中に何が秘められていたか。それは先月と同様、新たなキャラクターの姿だった。手にした盾が特徴的で、同封された動画からはブーメランのように盾を投げて攻撃する姿が見られる。添えられたpdfファイルにはこのムシの概要が記載されている。そこには「Seth」という名前が明らかにされており、Sethが長らくある秘密を守護していること、そしてその腕で幾多ものムシを討ち払ってきたことが述べられている。


これだけでも興味深い資料だが、さらに気になる記述が目に入る。それは一見、ゲームとは関係なさそうな文言だ。「SethのキャラクターはSeth Goldmanとともに作りあげられました。彼は本当にクールな若者で、出会って知り合えたことが幸運です。Sethと結び合わせてくれたMarty Lyons Foundationに感謝を。Seth自身には大いなる感謝を! そして、彼の危険なムシの戦士と戦うのをお楽しみに!」どうやら新キャラクターは原案者のSeth Goldmanという少年にあずかって名付けられたらしい。耳慣れないのはMarty Lyons Foundationという単語だろう。これはアメリカの慈善団体で、3歳から17歳の不治の病を患った子どもたちの願いを叶える活動をしている組織だ。

実は3か月前、海外掲示板Redditのホロウナイト板にこんな書き込みがされている。そのユーザーは一種のがんを患っており、生きているうちに彼が愛してやまないTeam Cherryに会うことを熱望していた。おそらくMarty Lyons Foundationがその願いを聞き届けたのだろう。彼はTeam Cherryの面々と話すことができたそうだ。さらに開発陣は、彼が作中のキャラクターを生み出すことを許してくれたのだという。キャラクターはボスとして実際のゲームに登場し、やがて多くのプレイヤーの前に立ちはだかることになる。そのキャラクターの名前はSeth。病を患うユーザー自身の名前を冠している。3か月前、スレッドには闘病を応援する声と、ボスのお目見えを楽しみにしているといったレスがつけられていた。しかし今から25日前には友人と思しき人物から報せが届けられている。Seth Goldman氏は、闘病の末亡くなったということだ。


探究好きなハロウネストの好事家を唸らせた、大掛かりな謎解きゲーム。最後に明かされたのは、今は亡きファンが遺した秘密の守護者の姿だった。Sethは誇り高い戦士としてプレイヤーたちの前に姿を現すだろう。詳しく彼のことを知りたい人はこちらからzipファイルをダウンロードして欲しい。『Hollow Knight: Silksong』はPC/Nintendo Switch向けに開発中で、発売時期は今のところ明かされていない。Discordサーバーには今後もこうした形でヒントが届くかもしれないので、気になる人はチェックしておくといいだろう。

【UPDATE 2020/07/08 17:14】
「第2の謎」の暗号を一部訂正。

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