『Anthem』のハクスラ要素はどうすれば改善できるのか。『Diablo III』 の元ゲームデザイナーが5つの項目にわけて改善案を提示

【UPDATE 2019/03/01 12:40】
『Anthem』にて2月28日に配信された最新アップデートにより、装備品に適切でないインスクリプション(刻印)が付与されないよう、仕様が変更された。

【原文 2019/02/27 17:00】
Electronic Arts/BioWareの最新作として注目を浴びたアクションRPG『Anthem』。同作は『Destiny』『Tom Clancy’s The Division』といったシリーズと同系列のハックアンドスラッシュ系ゲームおよびルートシューター(Loot Shooter)として、同ジャンルのファンから期待されていた一作である。だが軸となるはずのハクスラ要素に不満を感じる者は多く、ユーザーコミュニティや各種メディア、動画配信者などから無数の指摘があがっている。

そんな中、かつて『Diablo III』のシニア・ゲームデザイナーとして活躍したTravis Day氏が、redditにてスレッドを立ち上げ、5項目に分けてのハクスラ改善案を投稿した。Travis Day氏は主に『Diablo III』の新機能開発や各種クラスの改良、そして装備品の制作およびバランス調整(Itemization)に関わってきた実績を誇る。2018年にBlizzardを退社したあとは、『モンスターハンター』風のハンティングアクションゲーム『Dauntless』を開発中のPhoenix Labsに在籍している。

redditのスレッドでは、Day氏自身が実際に『Anthem』を遊んだ上で、より優れたゲームになってほしいとの思いから、プレイヤーおよびゲームデザイナー目線でゲームの報酬制度に関するいくつかの問題点と改善案を列挙している。問題点として挙げられているのは、(1) 意味のないインスクリプション (2)リスク対リワードのバランス (3)複数種のストロングホールドに挑戦する動機付けの不足 (4)プレイヤーの主体性を発揮できないエンドゲーム (5)緩急が極端な難易度設定である。

 

1)意味のないインスクリプション(刻印)

Check out the great inscriptions on this bad boy! from AnthemTheGame

※氷属性のスキルに、「物理ダメージ +200%」「物理ダメージ +25%」のボーナス効果が付与されるというケース。同様の現象が発生したとのコメントは多い

インスクリプション(刻印)は武器・ギア・MODにランダムで付与されるボーナス効果のことである。「シールド回復量 +〇%」「炎耐性 +〇%」などさまざまな項目から、装備品のレアリティに応じた個数のボーナス効果がランダムで選ばれる。刻印の中には、効果説明の横に人型のジャベリンマークもしくは歯車のようなギアマークが付いているものがある。気づきにくいが、ジャベリンマークが付いた刻印はジャベリン全体に影響を及ぼすこと、ギアマークが付いた刻印はその装備品にのみ影響を及ぼすことを意味している。

現在問題視されているのは、対象となる装備品に付いても全く効果を発揮しないギアマーク付きの刻印が付与されることである。たとえば炎属性ダメージを与える装備品に、物理ダメージや氷ダメージのボーナス効果が付いても、何の意味もない。ゆえに高レアリティの武器にこうした刻印が付いていたときの落胆は大きい。こうした無意味なボーナス効果が発生しないよう、Day氏が携わった『Diablo III』では、ボーナス効果の分類分けや、ボーナス抽選のルール決めがなされている。

Day氏は、装備品とあまり関係のないボーナス効果が付いてしまうことは、こうしたゲームにおいてはよくあることだと前置きしながらも、「効果が薄いボーナス効果」と「全く役に立たないボーナス効果」には明確な違いがあると、『Anthem』の刻印システムが抱える問題を指摘している。単に意味がないだけでなく、「ゲームの仕組みを学んでいる最中のプレイヤーは、ボーナス効果が付与されたのであれば、対象となる装備品で効果が出るものだと考える」のが自然であり、ゲームを理解する上で混乱を招いてしまうと指摘している。

このような仕様になっている理由についてDay氏は、装備品のバリエーションに幅を持たせようとしたのだろうと理解を示している。その上で、ランダム付与される刻印のリストを、実際に効果のあるものに絞りつつ、メイン刻印・サブ刻印といったようにボーナス効果の比重を調整することでも、バリエーションに幅を持たせることは十分に可能だと提案。また、実際に効果のある刻印に絞りつつ、付与される刻印の数に幅を持たせる別案も提示している。

本作では後述するように、アイテムのドロップ率が低すぎるとの指摘がコミュニティからあがっている。ドロップ率が低い中で、さらに意味のない刻印が付与される可能性があるという点が、プレイヤーのフラストレーションを増幅させる要因となっている。Day氏が提案するように有効な刻印だけが付与されるようになれば、ドロップ率が低いままでも、少なくとも使い物になる装備品を得られる可能性は高くなる。至極真っ当な考えだろう。

 

2) リスク対リワードのバランス

Day氏はまず、ハクスラ要素のあるゲームにおいて、バランスの取れた報酬システムを構築することは難しく、さらにリスクやリワードのさじ加減には、どうしても主観が入ってしまうことから、議論が止むことはないと説明。その上で、現時点で実装されている3つのストロングホールドは、リスクとリワードのバランスが明らかに取れていないと指摘している。

ストロングホールドは本作のエンドコンテンツであり、難易度が高いかわりに、より多くの戦利品を得られる。現在はタイラントの坑道、スカーズの神殿、暴虐の渦という3つのストロングホールド・ミッションが用意されているが、Day氏いわく、報酬が同じであるにも関わらず、ボス戦の難易度や討伐に要する時間に大きな差が生じているという。難易度に差を持たせた意図についてDay氏は、ストロングホールドの種類が少ないため、ゲーム体験の幅を広げるために、それぞれ難易度の異なるコンテンツにしたかったのだろうと推測している。だが報酬に差がないため、比較的リスクの高いスカーズの神殿と暴虐の渦に挑むインセンティブが不足している。実際、コミュニティ内では、難易度が低いタイラントの坑道をひたすら周回することが、マスターワーク/レジェンダリー戦利品を掘る上で最も効率の良い手段として浸透している。

この問題に対してDay氏は、各ミッションの難易度を揃えるか、難易度によって報酬を変えることを改善案として提示している。先述した刻印の改善案と同じく、至極真っ当な意見だろう。その基本的なゲーム設計ができていないとも言える。

 

3) 複数種のストロングホールドに挑戦する動機付けの不足

4月には新しいストロングホールドの追加が予定されている

こちらはリスク対リワードの問題と関連した項目である。仮に開発陣が各ストロングホールドの難易度を揃えることを意図しているとすれば、現在の難易度差を見直すだけでなく、複数種のストロングホールドを遊ぶインセンティブを用意する必要があると、Day氏は指摘している。仮に難易度が揃えられても、複数種のストロングホールドに挑むインセンティブがなければ、プレイヤーはもっとも効率の良い攻略方法を見つけたストロングホールドだけを周回し続けるようになる。すると、ゲームに飽きるまでの時間も短くなってしまう。

Day氏自身、タイラントの坑道の攻略効率化を楽しんではいるが、エンドゲームを進める上で有効なコンテンツが少ないため飽きを感じ始めていると感想を述べている。この問題の解決方法としては、単純にランダム・ストロングホールドをマッチングの選択肢に追加することが挙げられている。その際、戦利品のドロップ率や高レアリティ品のドロップ率を上げるボーナスを付けてあげるわけだ。

 

4)プレイヤーの主体性を発揮できないエンドゲーム

Day氏いわく、本作のようなゲームにおいてプレイヤーは、「Xというアイテムが欲しい」「Yというビルドをつくりたい」といった目標を持ってエンドゲームコンテンツに取り組んでいる。その際にプレイヤーが、目標到達のために遊び方を変えることができなければ、ストレスを感じる。

『Anthem』のエンドゲームにおいては、ストロングホールドのクリア報酬としてマスターワークギアが、レジェンダリー依頼の報酬としてマスターワークMODが確定で手に入る。ゆえに、ある程度は欲しい装備品に応じてアクティビティを選択する余地が残されている。こうしたオプションが用意されていることから、開発陣としてもプレイヤーが自身の目標に応じてアクティビティを選択できることを意図していると思われるが、レジェンダリー依頼に関しては連続して受領できるミッションではなく、目標達成のために繰り返し遊ぶことができない。Day氏自身、MODを揃えるため、結局レジェンダリー依頼ではなくストロングホールドを周回することになったと語っている。

またストロングホールドでは確かにマスターワークギアが確定で手に入るが、ジャベリンの種類によってギアの重要性は変わってくる。ギアの火力により戦力が大幅に変わるストームであれば、優れたボーナス効果が付いたギアを集めるためにストロングホールドを最後までやるインセンティブが生まれる。一方で、ギアのスキルよりも武器の火力を重視するコロッサスとして遊んでいるのであれば、マスターワークギア確定というインセンティブは、必ずしもプレイヤーの目標に沿うものではない。

なおタイラントの坑道を4人パーティーで100回プレイしたredditユーザーのEpicQuote氏いわく、ボス討伐報酬は4人x100回ともマスターワークギア+エピック区分の戦利品だったという。ゆえにマスターワーク/レジェンダリー「武器」を求めている場合は、ボス戦前の2つ目の宝箱開封時点で終了して周回した方が効率が良いということになってしまう。こちらもエンドゲームの遊び方として浸透しつつある。

Day氏は、アクティビティによって異なる区分の装備品を確定で入手できるというアイデア自体に好感を示しつつも、その試みを中途半端に終わらせるのではなく、完遂すべきだと意見している。

 

5)緩急が極端な難易度設定

こうしたゲームにおいてプレイヤーは、より優れた装備品を見つけ、より難しいコンテンツに挑戦していくというゲームプレイループを期待している。だが『Anthem』においては、グランドマスター1とグランドマスター2の難易度差が激しすぎるとDay氏は指摘している。グランドマスター1を楽々と周回できるようになってからグランドマスター2に挑んでみると、敵は硬すぎるし、プレイヤー側は防御力が低いビルドなら敵の攻撃で一撃死する。「簡単すぎる」から「難しすぎて時間と労力の無駄」まで一気に跳躍するため、結局プレイヤーは二択のうち「簡単すぎる」方を選択することになる。現に本作のエンドゲームを楽しむ者の間では、グランドマスター2~3ではなく、グランドマスター1のまま周回することが、マスターワーク/レジェンダリー装備を集める上で最も効率の良い方法だと認識されている。

『Diablo III』では難易度が17段階に分かれている。Image Credit:『Diablo III』Game Guide

Day氏が携わった『Diablo III』では、難易度が10段階以上に細かく分かれており、より優れた装備品を見つけ、スキルやボーナス効果の組み合わせや敵のAIなどゲームに関する知識を身に着けつつ、より難しいコンテンツに挑戦するというゲームプレイループが成立している。『Anthem』においては、グランドマスター1でマスターワーク/レジェンダリー装備を整えていく中で、グランドマスター1を簡単に攻略できるようにはなるが、そこからグランドマスター2に移る壁があまりにも高すぎるというわけだ。リスク対リワードという観点からも、プレイヤーに「リスクに見合うだけのリワードが待っている」と誤認させる恐れがあることから好ましくないとし、グランドマスター2~3の難易度を再調整するか、難易度をさらに細かく分ける必要があるだろうと提案している。

 

コミュニティからはドロップ率上昇を求める声

本作のハクスラ要素に不満を覚えているプレイヤーは多く、特に戦利品のドロップ率については、現状のままでは低すぎるとして確率上昇を求めるスレッドがredditにて多数立ち上げられている。本作では2月22日にDay Oneパッチが配信されてから11時間ほど、不具合により、開発陣が意図した数値よりも高い割合で戦利品がドロップしていた。その後、開発陣が意図した設定に戻されたわけだが、現状の確率ではドロップ率が絞られすぎていることから、ルートシューター(Loot Shooter)として楽しめないとして、Day Oneパッチ適用後の状態に戻して欲しいと意見する者が出始めた(関連記事)。

戦利品のドロップ率やランダムロールの仕様変更を求める声があるのは、本作を遊び続けたいと、本作を楽しみたいと思っているプレイヤーがいるからだ。戦利品ドロップ率の低さに異議を唱えたredditユーザーのLawbringerX氏も、本作が好きだからこそ声をあげているのであって、ゲームには成功してほしいと願っていると述べている。BioWareを信じ、『Destiny』『Destiny 2』『Diablo III』といった先人たちの失敗から学び、改善していってほしいというのが、LawbringerX氏の願いである。「ルート(Loot)のドロップ率が絞られたルートシューターが、プレイヤーベースを維持することなんてできない」と戦利品ドロップ率の上昇を望む別のredditユーザーRehevkor氏も、同ジャンルの大型タイトル『The Division 2』の発売が迫っていることから、プレイヤーがそちらのゲームに移っていってしまうとの危機感を感じて、自身の想いを投稿している。

3月1日には『The Division 2』のオープンベータテストが開始される

『Anthem』に限らず、『Destiny』『The Division』といったルートシューター/ハクスラゲームには、何百~何千時間もの時間を投じる熱烈なファン層が必ず生まれてくる。どれだけハクスラ要素の仕様に不満を覚え、苦言を呈しながらも、遊び続けずにはいられない。批判されようとも、『Anthem』を愛し、改善を求め続けるプレイヤーは確実に存在するのだ。長期運営が想定されているライブサービスゲームとして、コンテンツの追加だけでなく、本稿で列挙したようなハクスラ要素にメスを入れることで、『Anthem』がルートシューターとして化ける日がくることを願いたい。

ニュース

Indie Pick

インタビュー

レビュー・インプレ

Devlog